第24話 Kiss・・・

囲碁名人戦で一週お休みになった次の回です。待ちに待ったプリ9の続き、 ようやく涼の懸念も晴れて、これでいよいよ次回は満を持しての高杉との対戦 かあ、と安心して見ていたら………うわあ、望月監督、これはキツいいーッ!! と驚愕させられた回でした。

連戦連勝

まずは、照りつける太陽の下、鬼気迫る迫力で投げ込みをする涼の姿から スタート。聖良の

聖良「目付きがまるで別人だぜ」
は、後から思えば衝撃の白目シーンを 予言してたんですね(笑)。

一方、木戸は涼の無茶に気付いて浮かぬ顔。でも、「気付くだけ」で何ら 手を打たないんじゃ意味ないです。シリーズ構成・脚本の丸山さん、しっかり して下さい…。

しかし、あのぐるぐる回るボールは凄いですな。実の所、イナズ マボールなんかよりもはるかに凄い魔球なんじゃないだろうか(笑)。

まず、2回戦の相手は倉橋高校です( 効果音担当の倉橋氏の名前より)。あ、今度はちゃ んと走って攻守交替してますね(笑)。

2回戦の翌日にすぐ3回戦があるという対戦スケジュールは大変ですね。 そのかわり1回戦と2回戦の間が大きく空いていたんでしょうが。これから先 は試合間隔もあまりないだろうし、休養があまり取れなさそうなのが気の毒で す。

3回戦の相手は丸山第3高校、名前の元になったのはシリーズ構成の丸山 比朗氏です。

志乃は、英彦の遺影を試合を中継するテレビに向けます。うーん、 こんなマンモス地区で、3回戦からテ レビ中継なんかしますかね?ローカルなケーブルテレビなどなら中継してもお かしくないかもしれませんが、早川家の経済状況は、ケーブルテレビに加入す るほどの余裕はなさそうな気がします(一応、ビデオデッキ( 第5話で確認)や携帯電話(第 9話や今回の後半部で確認)などはあるようですが)。

とすると、あれは「高校野球初の女子チーム!!」という話題性を当て込 んだ、どこかの民放の特別中継か何かでしょうか。

……それにしても、16話でさんざん野球部の陰 口を叩いていた一般生徒たちが、手の平を返したような態度で声援を送ってま すな。ちょーしがいいぞ、お前ら(笑)。まあ、いつまでも疑い続けられるの も困りますが。

高杉のことをふっ切ろうとなりふり構わぬ涼は、バッティングにも異様な 気迫と集中力が生まれたようで、2塁打を放ちます。この辺りが却って涼の追 い詰められた気持ちを感じさせてくれて、見ててちょっと切なくなりますね。

涼を除くナインのプレイする姿をスコアボードにオーバーラップさせつつ、 長谷川のび太 氏のナレーションのみで如月女子は勝ち進んで行きます。余談ですが、このシー ン、陽湖の声がよく聞こえないんですけど……というか、あるいは、入ってない ような気がしませんか?スライディングの効果音(らしきもの)と重なって聞き 取れなくなっちゃったのかもしれませんが。→[2002,5/6] 追記 DVD の 5.1ch 音声版で聞いてみると、一応陽湖の声は聞き取れました。

それと、結局、今回、陽湖ってここ以外に一言もセリフがなかったような 気がします。もし何かの手違いでさっきの陽湖のセリフに本当に音声が入って いなかったとすると、飯塚さんはガヤ以外に出番がなかったことになります。

そして今回はもう一人出番のなかった人が。理事長、画面にこそ写ってま したが、セリフはまったくありませんでしたね。エンディングには飯塚さんの 名前も榊原さんの名前もともにあったんですが、お二人は「何しにここに来た んだろ」と疑問を抱いていたかもしれません。

4回戦の相手の中村橋商業にも勝利を収め、順調にベスト8へ。「中村橋 商業」の名がどのスタッフから来ているのかはわかりませんでした。なぜか聖 良のガッツポーズで締めくくりです(なぜ聖良?)。

ボーッとする涼を心配そうに見つめるユキ、なんか目付きが変ですね。 前回のラストを引きずってるのでしょーか。聖良、 こういう相手にこそ「目付きがまるで別人だぜ」と言ってやるのだ(笑)。

ここで

高杉「準々決勝進出、おめでとう、絶好調だね」
と現れる超高校級スケコマシ、高杉宏樹。涼とあれだけ気まずい別れ方をした というのに、どーしてそんなに屈託なく話しかけてこれるですか?

涼の方はいたたまれずに、顔をそらしてユキとそそくさとその場を去りま す。うう、かわいそうな涼。

いずみの「勝ち目は?」との問に、

高杉「言うに、及ばないさ」
と、ビッグマウスぶりは相変わらずです。それにこいつは、涼とのことが野球 の方には全然響かないみたいですねぇ。

5試合目の準々決勝の相手は天野学園。当然、名前の由来は 作曲の天野氏ですね。前年に決勝進 出を果たしたという強敵を完封で下し、何と如月女子は1回戦の堀高義塾戦か らここまで、すべて完封で勝ち上がって来るという、とん でもない快挙を成し遂げました。45イニング連続無失点の涼は、ここまでは文 句なしに地区大会 No.1 投手でしょう。いくら高杉のことでヤケクソになって いたとはいえ、やはり本当に大したものです。

涼の変調を見抜いた木戸がしたことと言えば、涼に休養を命じただけ。準 決勝前日になってそんな手を打っても焼け石に水ですがな。ここで木戸の言葉 にうなずく涼の作画上の芝居が軽すぎますねえ〜。もっとタメを効かさないと。

インターバル

土佐の父親から小春に電話が。風呂上がりで髪型が違っていて、ちょっと 普段と印象の違う小春が見られます。何気ないこのシーンが、実は次回への伏 線だったんですね。うかつにも、初めに見た時は予告編を見てもそのことに気 付いてませんでした(←ニブい)。

チリーンと鳴る風鈴は、26話でも小道具として 効果的に使われていましたね。

舞台は「志乃」へと写ります。何だか、初めに写った重のカット、重の瞳 の色が薄くて変ですね。早くも一同が甲子園での涼の活躍を期待し始めた所で、 今回の影の主役、誠四郎の登場です。

今回は、シリーズ通してほとんど唯一の誠四郎の見せ場で、今までのヒド い扱いも、これでちょびっとは報われましたね。おめでとう、誠四郎。あとは、 ヒカルとうまくやってくれ(笑)。

誠四郎

明かりすら点けずに、真っ暗な部屋で放心状態の涼の所に現れる誠四郎。 彼は幼馴染みとしての特殊能力(違う)を発揮して、涼の変調に気付いたので した。精いっぱいの誠意を持って、誠四郎は涼の悩みに応えようとします。こ こは、岩永さん、長沢さんともに見事な芝居でした!タイミングや喋る早さに 制限のあるアニメのアフレコで、これだけのものを聞かせてくれるのは大した ものです!

「ねえ、気にかかってることがあるんなら、僕に言っちゃいなよ」
「ほら、僕って運動神経もないし、腕っぷしも弱いし、喧嘩になっても、早川 のこと守ってあげられないだろ。だからせめて、愚痴の相手くらいさせてよ。 長いつき合いなんだからさ」
うん、これは名セリフだ。

誠四郎の誠実な呼び掛けに気が緩み、とうとう張り詰めていた気持ちの糸 が切れてへたりこむ涼。泣きじゃくる姿がかわいそうです。この辺りの絵コン テの冴えは素晴らしいですが、ここで涼に余計なセリフを喋らせたりせずに、 すぐ次のシーンに移るテンポの良さがまたグー!

誠四郎対高杉

準決勝は雨天順延となり、空を見上げる高杉にタイマンを申し込む涼を励ます役目をさせよう とする誠四郎。ここは、誠四郎の一世一代の見せ場第2弾です。

高杉の「合宿での話、聞いたんだろ」に「ああ」と答えた、ということは、 涼は、誠四郎をダシにして高杉に「嫌い」と言ったことまで誠四郎に話したよ うですね。涼に思いやりがないのか(笑)、それともそこまで話を聞き出した 誠四郎の聞き方がうまかったのか。

どちらにせよ、それは、涼のことが好きな誠四郎にとっては身を切られる ように辛いことだったろうに、それでもなお涼のためにこうして力を尽くすと は、誠四郎はほんとにいい奴です。涼、こんなに親身になってくれる幼なじみ を振ったんだから、誠四郎を悲しませるよーなことをしたらあかんぞ。

誠四郎を涼の想い人と誤解したまま、「俺は、笑い者にはなりたくない」 とその場を去ろうとする高杉を引きとどめ、誠四郎は芝居がかった告白を始め ます。

誠四郎「悔しいよ!僕に力さえあれば、君を殴ってでも、早川の所に引きずっ て行くのに…!君は誤解している。僕は早川の恋人じゃない。早川がほんとう に好きなのは、高杉君、君だ!(ビシィ)」
今どき、「君だ!」と言うのにいちいち相手を指さしたりするオーバーアクショ ンな高校生はいないと思いますが(笑)、これ、やるんだったらもう少し動き のタイミングに気を使って頂きたかったです。

「高杉君」と「君だ!」の間のタメが不十分だし、指さしてる時間も短い ので、言ってる内容の重みに比べて、画面から受ける印象が軽く感じられます。 そのあとのセリフを続ける所も、セリフの内容自体はいいこと言ってるのに、 言葉を継ぎ始めるタイミングがやっぱり早い。

こーいう、演技者の芝居が特に大切になるシーンだけでも、アフレコでは なくプレスコにできないものでしょうか。映像メディアとしてのアニメの大き な弱点は、感情の機微を外見の微妙な変化で表す力に、どうしても実写や演劇 に大幅に劣る、という点です。どんなに優秀なアニメーターが時間と情熱をか けて描いたカットでも、一人の役者のごく些細な動き・表情の変化が織りなす 無限の表現力には遠く及びません。それは、所詮は平板なセルの上に描かれた、 記号化された「キャラ」でしかないからです。

ならば、その欠点を少しでもカバーするために、まずは役者さんにせめて 自分のタイミングで存分に演技してもらってから、それに後から絵を会わせて いく、という制作法の方が、より登場人物の感情を豊かに表現できるはずです。

時間と予算に制限のあるテレビシリーズでは、毎回毎回すべてをプレスコ にすることは不可能でしょうし、プレスコには「実際、そこでどういう情景が 進行中なのか、演技している最中にはわからない」という欠点もありますから、 全てをプレスコにすべきだと言うつもりはありません。しかし、シリーズの要 となる重要なシーンで、登場人物の感情表現が特に重要になる場面では、そう いう選択肢は十分に検討に値するのではないでしょうか。

色々と野心的な試みに挑む山木プロデューサーには、ぜひそういう点にも チャレンジして欲しいと思います。

話が逸れました。元に戻しましょう。「でも、俺のことを嫌いだと言った…」 ととまどう高杉に向かって言った

誠四郎「早川は昔から、……不器用なんだ!それくらい解ってやれよ!」
ですが、これには、「不器用」の一言で「嫌い」と言ってしまったことを片付 けようとするむちゃくちゃさに大笑いしてしまいました(笑)。すみません。

最後に、

誠四郎「いいか。僕の大事な早川を傷つけたら、絶対許さないからな」
とこれまたカッコいい啖呵を切って、誠四郎は高杉の前を去ります。お見事で した。

少女の勇気

「志乃」の開店準備を進める涼の前に、「ふぉふぉふぉふぉふぉ…」とい う怪しい笑いが響き渡ります。宏之助の登場です。孫の恋路に助け船を出そう とは、なんと過保護なじい様だ(笑)。

24話は、この辺りから作画がよくなってきてますね。特に、背景の夕焼け 空の表現はお見事!!昼から夜へと移り変わる幻妙な色彩の綾を堪能させても らいました。さすがスタジオ美峰さん。

背景だけじゃなくて、セル画部分の作画も安定してますね。顔のアップが たくさん出て来ますが、デッサンが狂ったカットはほとんどありませんでした。

宏之助の去った後、

涼「あたしって、つまらない意地を張って、高杉君の気持ちを踏みにじっちゃっ たのかな。謝らなくちゃ。そして、今度こそ、本当の気持ちを伝えよう」
と気持ちを切り替えた涼。思い切って高杉に電話し、「言いたいことがある」 と伝えると、
高杉「実は、俺もあるんだ。今すぐ、会えるか。よかったら、あの草野球場に 来てくれないかな」
と思いがけない返事です。靴をしっかり履くのももどかしく、店を飛び出して 行く涼。

最初に見た時は、「これで、ふたりの気持ちも通じあって、いよいよ次回 は心おきなく勝負する涼と高杉の姿が見られるんだな。いやあ、楽しみ楽しみ。 きっとこのあと、サブタイトル通り涼と高杉のキス、でまとめるんだろう」と 思っていたんですが………。

自転車を飛ばす高杉の視界に、グオォーッと効果音付きでいずみが姿を現 します。まさか、この後にあんな波乱が用意してあるとは、当時は夢にも思っ ていませんでした。もちろん、「当然、いずみが黙っちゃいないはずだよな。 前回の予告編のカットから察して、きっと高杉を奪われまいといずみがあがく シーンがあるはずだ」と思っていたので、いずみの登場自体は想像の範囲内で したし、「よし、出たな、『怖い人』。ここでせいぜい往生際の悪い所を見せ てくれ」とは思っていたのですが…。

高杉にあったら、ああも言おう、こうも言おうと色々と思いを巡らす涼が セキばらいをするカットがはさまります。

いずみは「宏樹、行かないで…!」とすがったりすることなく、あっさり 涼のハンカチを差し出し、「自分でも、卑劣なことをしたと思ってる」とやけ に殊勝です。こういうセリフを言わせる前に、少し前の段階で、いずみが一人 で思い悩むシーンを入れてくれれば、いずみの唐突な変心に戸惑う程度も少な くて済んだろうに、という点はちょっと残念です。

膝を抱え、ベンチの上で身体を揺らせる涼。遅くなる高杉に、段々不安が 募ってくる様子がよく表れています。

さんざんいずみに気を持たせた八方美人ヤローの高杉も、ようやく

高杉「ごめんな、いずみ。今の俺の心には、ひとりだけしかいないんだ。涼、 だけしか」
と自分の気持ちをはっきり伝えます。「最後通告」が遅すぎましたが、でも涼 のいないとこでもはっきりきっぱり誠実に涼への好意を表した所は誉めてやり ましょう。

しかしそこへ、しびれを切らして様子を見にきた涼がやって来ます。「や めろおぉ〜〜〜っ!来るなあぁ〜〜〜っ!あと少しだけ待て えぇ〜〜〜っ!」という視聴者の心の叫びも空しく、ふたりに気付 いてしまう涼。折しも、最悪のタイミングでいずみはキスをねだります。

衝撃のシーンを目の当たりにして、生理的嫌悪感から口を抑える涼。

しかしおふたりさん、何もそんなマウストゥーマウスでキスしなくても(笑)。 それに、も書いた通り、ふたりとも高校スポーツ 界の有名人なんですから、もっとマスコミに気を付けて下さいよ(笑)。 現に、素人の涼に見付かってるのにぜんっぜん気付いてないじゃないですか。 あの場に、「隠れよう」という意志を持った記者がいでもしたら、絶対特ダネ すっぱ抜かれてましたぜ(笑)。

ここで、一同爆笑の迷シーン、白目 の登場です。いやあ、笑える!まさに「ガラスの仮面」そのものですな。 確かに、ショック受けたのはわかるけど何もそこまでしなくても(笑)。長沢 美樹さんも集録現場で大笑いしてたんじゃないでしょうか。

で、やっぱりネがお子様な涼は自分の見たものを受け入れることが出来ず、 「いや…」と力なくつぶやいて足早にその場を去ってしまいます。

涼「もう解らない…何も…。もう信じられない…誰も…」
とエコー付きで繰り返すのもむべなるかな。高杉に甘い言葉をかけてもらえる かも知れない、という期待に胸躍らせて赴いた現場でまたも大きな裏切りを受 け、ズタズタに心を引き裂かれた涼に、果たして再起の機会はあるのか!?視 聴者の胸にもろもろの不安を宙ぶらりんのまま残しつつ、以下次回!!という ヒキに、放映当時「やられたーっ!!」と思うことしきりでした。実際「あと たったの2回で涼と高杉の誤解を解き、しかも如月女子対如月の決着をきっち り描くことが出来るのか!?」という点は、当時大きな不安材料でした。

重箱の隅・出張版

25話の予告編、ユキの腰にフィーフィーちゃん が付いてるのにびっくりしましたが、翌週の放映でこれがちゃんと姿を消して いたのには2度びっくり!


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2005年7月31日