第16話 さよなら、野球部

初めてこの回を見たとき、前回に続きそれほど内容のある回じゃないな、 と思って油断していたんですが…衝撃の見所は最後の3分に!!!

弱気なアナタは嫌いです

英彦の話があっと言う間に学校中に広まり、追い詰められる涼と野球部。 ついに保護者会の代表が学校に乗り込んで来ます。 前にも書きましたが、このときの理事長の 対応があまりに弱気すぎるのが大いに不満です。

多分、涼が一旦逃げ出し、心の傷を克服して復帰する、というストーリー を「黒い霧」事件と絡めて展開することが最初に決まっていて、それに合うよ う逆算していったせいでこんなことになってしまったんだと思いますが、そう だとしてももっとやりようはあったのではないでしょうか。他人の意見に一切 耳を傾けず、女子公式野球部設立・高校野球協会加盟というワガママを押し通 して来た桂子にしては、あまりに淡白な対応だと思います。

思い悩む涼

保護者会の代表が去った後、小さくなって部室を訪れる涼。わはは、寧々 が聖良の言いつけ通り塩の小瓶をふってら。しかもわざわざ塩の粉末が飛び散 る作画までしてある(笑)。

聖良の「八百長がなんだよ、さっきの親たちだってどうせろくでもないこ として設けてるに決まってるんだから」は慰めになってませんよね。涼を苦し めてるのは、尊敬と憧れの対象だった父親に対して抱いていた自分の英彦像が、 虚構だったかもしれない、ということなんだから、他人の親との相対的な関係 はこの際無関係なんです。むしろ、涼にとって認めたくない「八百長」を暗黙 の内にあっさり認めてしまっている点で、聖良のセリフは逆効果。

涼が英彦のスキャンダルのことを信じてたかどうか、なんですが。 15話

「これじゃ、テレビや新聞で言ってることを認めてるみたいじゃない…」
というセリフからは、「世間がどう言おうと、私はお父さんを信じる!」という信 念が感じられます。ところが、16話では
「お金をもらってわざと負けてたなんて…」
と、どうやら八百長を認めるようになってしまったみたいですね。やっぱり、 孤立無縁の状況で、まわりのみんなから後ろ指を指され続けると、信念を保つ のは難しいのかもしれません。可哀想な涼。

そして、遂に高杉に向かって「野球なんて大っ嫌い!!」と言い切ってし まいます。このセリフの直後の、驚いたような一瞬の表情が効いてますね。自 分でも思ってもみなかった、取り返しのつかない一言が口をついて出てしまっ たことに対する驚きと後悔がよく表れた名演出だと思います。

家出

寧々「だってマンガだとこういう場合傷心旅行の果てに…」
お前はこういう時までマンガをベースに発想するんかい!(笑)

英彦の故郷におりたち、あてもなくさまよう涼の足元に、草野球をやって た子たちのボールが転がってきます。最初「行くよー!」と左手で投げ返そう としますが、「投げる」ことが父との繋がり(=今は嫌な思い出)を思い起こ させ、その動きが止まってしまいます。で、結局右手で力なく下手投げで返球 することに。

ここも、涼の心の内をセリフに頼らず描いた名演出でした(この 当たり前のことが出来てない作品がいかに多いことか…)。

真の見所

相変わらず長沢直美さんはノッてますね。「毎度〜」や「頼んだで、高杉 は〜ん」なんて名調子を聞くと心が弾みます♪

で、涼が桜井を見送り「行ってらっしゃい」で一応このゴタゴタも一段落 つきそうで、やれやれここで「つづく」か、と思ったら……あれ、駆け込んで きたこの子は何?まだ話が続くの?

第16話真の見所。それはラスト3分に凝縮されていました。それまでの約 20分は、そのためのお膳立てに過ぎなかったのです。

13話ラストに引き続き、「傷だらけのエース」 がただならぬ事態の到来を告げます。ユキ「フィーフィーちゃんが言ってる。 悪いことが起きるって…」

BGM が痛切な旋律を奏でるタイミングに合わせ、高杉の「何なんだ、この 胸騒ぎは…」がかぶり、最後の最後は川岸に残された涼の靴と靴下が、雷光と 嵐に晒される衝撃のシーン!涼が一体どうなってしまうのか、急転直下の展開 で視聴者の関心を一気にわしづかみにした所で「つづく」。ぬおーっ、こんな、 こんな、こんないい所でぇーっ!!まさか、最後 の最後でこんな隠し球が用意してあったとは!!!と、最初16話を見た時はびっ くりするやら感激するやらで大変でした。

あと一歩で出会えるはずの高杉とのすれ違い、というのも受け手の心情を 盛り上げる常套手段ですが、非常にうまく効果を挙げていました。当時、次回 の放映がどれほど待ち遠しかったことか!全編通しても5本の指に入る名演出 です。

落ち穂拾い

ところで涼のことなんですが、10話の9回表に ヒカルのホームのカバー後に間髪入れずにショートへの送球を指示したシーン や、25話で落ち込みながらもきっちり1塁ベースカ バーに入った所を見ると、単に「速くてコントロールのいい球を放るだけ」の ピッチャーじゃなくて、総合的な野球センスに優れているプレイヤーであるこ とがうかがえます。

これは教えてもらわないとなかなか身に付くものではないと思うんですが、 そうすると、英彦が死んだ後に涼に野球を教えていた人物がいたはずだ、とい うことになります。

疑問その1
その人物は誰なんでしょう?また、どうして本編に全く登場しないので しょう?(本編開始前に、遠くに引っ越して行ってしまった…とかだろ うか)
疑問その2
16話の「野球は全部、お父さんに教えてもらったんだもん!」というセ リフはウソ臭い。5歳のときに死んでしまったんでは、具体的な野球技 術を伝授することなく終わってしまったはず。


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2000年4月22日