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ガロア理論 数学

続・方程式のガロア群の求め方

方程式のガロア群を解の置換群として求める方法を書いた2年前のこの記事を元に、数式処理ソフトで具体的にガロア群を計算する手順を組み立てて下さった方がいました。こちらの記事で公開されています。
-数学- ガロア群の計算、初めに Maxima で綴る数学の旅

コメント欄では、数値計算を利用して(正面から立ち向かう計算では数式処理ソフトでも手に余るような)5 次方程式に対しても現実的な時間内で \(F(x)\) の既約分解を求める手順も紹介されて、大変ありがたいです。

(ちょっと意外でしたが、一度 \(120\) 次式 \(F(x)\) が整数係数の多項式として求まってしまえば、それを既約分解することは正面から立ち向かっても数式処理ソフトなら手に負える範囲の計算なのですね。真に大変なのはその手前の、\(120\) 次の対称式として得られる \(F(x)\) の係数を基本対称式に帰着してその具体的な値を求める、という計算の部分のようです。それらに難易度的な差があるかどうかということは考えもしていなかったので「おお、そうなのか!」という驚きがありました)

ここから、以前の別記事の手順に従って、可解なガロア群を持つ \(5\) 次方程式の解を実際に求める、ということに、時間のあるときにじっくり取り組んでみようと思います。

以下、補足的な事柄についていくつか触れてみます。

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数学

MathPower 2017 参加してきました

今年は仕事の休みが取れて、MathPower を楽しんで参りました。食事などで会場を離れていたこともあったため、演目の全部は見ていなかったのですが、大変楽しかったです。加藤さんの ABC 予想の公演は非常にエキサイティングでした。観られなかった部分は、ニコニコ生放送のタイムシフトでいずれじっくり観ようと思っています。

演目のひとつ「数学の決闘」の予選問題に、この blog で以前触れた問題を採用していただいたのですが、解答の公開が滞っているようなので、こちらで公開しようかと思います。

また、決勝の問題1は(私にとっては)大変手強い問題で、解くのに 1 週間以上もかかってしまいました。模範解答はどんな風なのか割と楽しみにしているのですが、中々公開されないので、参考までに私の解答も掲出しておきます。

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数学

「解法の探求・確率」の誤り

\(\newcommand{\kumiawase}[2]{{}_{#1}\text{C}_{#2}}\)
東京出版の「解法の探求・確率」に、割と大き目の間違いを見つけたので編集部に手紙でお知らせしたのですが、半年以上経っても未だに正誤表にも「大学への数学」本誌にも訂正が出る様子がなく、返答も特にない(確かに、「知らせる」ことだけが目的だったため返信用の切手や封筒は敢えて省きましたので、返答がないことそれ自体は差し支えないのですが)ので、ここで公開することにします。ですので、この記事は「解法の探求・確率」をお持ちでない方にはよくわからない話になってしまいます。ご了承ください。

「解法の探求・確率」は最初に刊行されてから結構大きな改訂を経ているようですが、当該の記事は私の手元にある旧版と内容はまったく変わっていないようです(書店でざっと見てみた限り。もし新版をお持ちの方が、本記事の記述が不適である部分に気づいたらお知らせ頂けると幸いです)。ですので、この誤りは最初の刊行以来10年以上にわたってずーっと見逃されていたもので、これだけはっきりした誤りがそんなにも長く気づかれないまま放置され続けていたというのはちょっと驚きました。

誤りがあったのは発展編の4「くじ引きの公平さ」(※ 旧版では発展編の3)の問題2です。と言っても、「問題2の解」には誤りはありません。しくじっているのは「解」の後に続く解説部分になります。そこでは

何番目の人についても、\(1\) 番目の人と同じ確率である…☆

と結論づけられていますが、これが誤っています。実際には、「途中の何番目かまでの人は \(1\) 番目の人と同じ確率になるが、それ以降は確率が下がっていく」ということになります。

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数学

正多角形上のランダムウォーク

\(\newcommand{\pura}{(+)}
\newcommand{\mai}{(-)}
\newcommand{\Ai}{\mathrm{A_{1}}}
\newcommand{\Aj}{\mathrm{A_{3}}}
\newcommand{\Ak}{\mathrm{A_{5}}}
\renewcommand{\kumiawase}[2]{{}_{#1}\text{C}_{#2}}
\newcommand{\diag}{\operatorname{diag}}\)
以下は、勤め先でけっこう以前に高校生の模試に出題された問題だ。(題意を変えない範囲で補足・修正した)

正六角形の各頂点を順に \(\mathrm{A}_{1}\), \(\mathrm{A}_{2}\), \(\mathrm{A}_{3}\), \(\mathrm{A}_{4}\), \(\mathrm{A}_{5}\), \(\mathrm{A}_{6}\) とする。動点 P は最初 \(\mathrm{A}_{1}\) にいて、\(1\) 秒ごとに隣の頂点に同じ確率で移動する。

  1. \(6\) 回の移動で初めて P が \(\mathrm{A}_{1}\) に戻る確率 \(p_{6}\) を求めよ。
  2. 正の整数 \(k\) に対して、\(2k\) 回の移動で初めて P が \(\mathrm{A}_{1}\) に戻る確率 \(p_{2k}\) を求めよ。
  3. \(n\) 回以内の移動で、初めて P が \(\mathrm{A}_{1}\) に戻るまでの回数の平均値を \(E_{n}\) とする。(\(n\) 回以内に \(\mathrm{A}_{1}\) に戻らない場合は \(0\) 回と見なす)\(E = \displaystyle\lim_{k \to \infty} E_{2k}\) を求めよ。

この問題は別に難しくはない。

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数式の表示形式の変更

MathJax の CDN サーバーが近々停止するとの知らせを受けて、ちょっと前に MathJax の設定を変えたのですが、その際ついでに数式の標準表示形式を HTML-CSS から CommonHTML に変更しました(現在ではそちらが推奨されているので)。その影響で、数式中の日本語文字がこれまでより大きいサイズで表示されるようになっています。このため、日本語を含む長めの数式だと画面に横幅が収まりきらず、右の方が画面の外に出てしまって見えないことがあるようです。

お手数ですが、そういう場合は、数式を右クリックして「数式の設定」→「すべての数式の倍率を変更」で 80% かそこらの倍率で縮小表示して、数式全体が見えるようにしてください。(あるいは、「数式の設定」→「数式レンダラー」で「HTML-CSS」を選択すれば、以前と同じ表示形式が選択されて、以前通りの数式の見え方に戻ると思います)

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数学

階乗が 5 で割り切れる個数

\(\newcommand{\Bfloor}[1]{\Bigl\lfloor #1 \Bigr\rfloor}\)
東京出版「大学への数学」2月号の記事で「\(n!\) が素数 \(p\) で何回割り切れるか」が \(n\) の \(p\) 進法表記を使うと思いがけず割ときれいな表し方ができる、ということが紹介されていましたが、これに触発されて色々考えているうち、その記事よりショートカットした説明ができることに気づきました。改めて調べてみると、(その記事内でもちょっと触れられている通り)実はこの式は結構知られているらしい(例えば http://shochandas.xsrv.jp/gauss/gausssymbol.htm)こともわかりましたが、自分のものは説明の仕方としてはなかなかすっきりしているのではないかと自画自賛しているので、やはり自己満足のためにここに公開しておきます。

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ガロア理論 数学

2017早稲田理工5番

http://nyushi.nikkei.co.jp/honshi/17/w09-21p.pdf ああ、ほぼモロに https://ikumi.que.jp/blog/archives/301 の問題じゃないですか。主題が同じわけではないけれど、こういうのを見るとガロア理論齧っててよかった、という気がしますね。

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数学 相対性理論

エネルギー運動量テンソルはなぜ対称なのか

\(\newcommand{\V}[1]{\boldsymbol{#1}}
\newcommand{\order}[1]{\mathcal{O}(#1)}\)
エネルギー運動量テンソル \(T^{ab}\) の空間成分、あるいは応力テンソル \(\sigma^{ab}\) は、添字(の入れ替え)について対称になる。このことの物理的な理由は普通「トルクの釣り合い」によって説明されるようだ。が、この説明は実はちゃんとした説明になっていないんではないか…ということに、前回の話の考察をきっかけとして気がついた。

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数学 相対性理論

相対論のパラドックス2題

\(\newcommand{\V}[1]{\boldsymbol{#1}}\)

押した棒を離すパラドックス

だいぶ以前だが、相対性理論について面白いパラドックスを見かけたことがある。
極端大仏率Returns!“相対性理論はやはり間違っていた!”
これは非常に面白かった。「静止系では棒の加速はないはずなのに、運動系では加速が生じるはず。そして『加速のあるなしは慣性系の取り方によらない』のでこれは矛盾している」あるいは、「静止系では棒の速度は \(0\) のまま変わらないので、運動系でも速度は一定で変わらない。ということは運動量の変化もないはず。ところが運動系では \(0\) でない正味の力積を受け取っているので、前後での全運動量は変化しなければならない。これは矛盾している」というのは確かにパラドキシカルで、最初にこれを読んだ時にはかなり混乱して、なかなか解決に至らなかった。

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数学

正方形になる展開図

しばらく前に http://www.geocities.jp/yoimondai/1/essei.html というコーナーを見つけ、「これは面白い」と隙間時間にちょびっとずつ読み進めています。非常に鋭い着眼・解法が次々と繰り出されて、結構な難問も小学生に(!)理解可能な解答がこさえられているのには舌を巻きました。この方だったら、http://6504.teacup.com/aozoram/bbs/3816 で紹介されている「定理」のような問題でも、小学生向けの解答を鮮やかに編み出してしまえるかもしれません(私は高校生向けの解法しか作れないや…)。→そうか、これは1年くらい前の「高校への数学」に \(n=3,5,7\) の場合が載っていて、\(n\) が一般の奇数でも成立するとも書いてありますね。なるほど、トレミーの定理を使えばいいのですね…。→【2017, 6/1 追記】さらに、「大学への数学」の2006年12月号に \(n=3,5\) の場合に「切り貼り」だけで示す巧妙な証明が紹介されてますね…。円周角の定理とその周辺が使ってあるので小学生向けとまでは行きませんが、中学生なら十分理解できます。確かめてはいませんが、そこでの話の進み方からして、一般の奇数 \(n\) に対しても同じ手法で示せそうです。