\(\newcommand{\field}[1]{\mathbb{#1}}
\newcommand{\Q}{\field{Q}}\)
一連の話の締めくくりとして、落ち穂拾いの話題を2点書いておく。1つは、これまで書いてきた「Galois 群が可解な方程式の解の求め方」は、実は気づきにくい穴があって実際には不完全かもしれない、という話。もう1つは、一連の話がどういう経緯を経て作られたのか、という(他人にはまったく興味がなさそうな)覚え書きである。
- 平方根が複雑に入ってくる式では、時折
\begin{align}
\label{eq:56-1}
\sqrt{3+2\sqrt{2}} &= \sqrt{2} + 1 \\
\label{eq:56-2}
\sqrt{5-2\sqrt{6}} &= \sqrt{3} – \sqrt{2}
\end{align}
のような、知らないとちょっと気づきにくい簡約化が起きることがある。俗に言う、2重根号が外せるケースだ。立方根でも類似の現象があり、立方根の枝を適切に選ぶと
\begin{equation}
\label{eq:56-3}
\sqrt[3]{2+11i} + \sqrt[3]{2-11i} = 4
\end{equation}
が成立したりする。こういった観察から、更に一般のべき根が入り込んで来るようになると、この手の現象がもっと大々的に起きるであろうことが伺える。すなわち、入りくんだべき根の式では、そう簡単には見抜けないような非自明な等式がひょっこり成立するということがありうる、ということである。これは、「見かけ上 \(0\) には見えなかった入りくんだべき根の式が、真の値は実は \(0\) だった」という事態を覚悟しなければならない、ということを意味する。例えば\eqref{eq:56-1},\eqref{eq:56-2}や\eqref{eq:56-3}から、
\begin{align}
\label{eq:56-4}
\sqrt{3+2\sqrt{2}} – \sqrt{2} – 1 &= 0 \\
\label{eq:56-5}
\sqrt{5-2\sqrt{6}} – \sqrt{3} + \sqrt{2} &= 0 \\
\notag
\sqrt[3]{2+11i} + \sqrt[3]{2-11i} – 4 &= 0
\end{align}
のように、「左辺は一見 \(0\) には見えないのに、その実際の値は \(0\)」という例が作れる。\eqref{eq:56-4}や\eqref{eq:56-5}くらいならさほど非自明な関係に思えない人も多いだろうが、それは2重根号の外し方はパターンが決まっていて機械的に実行可能な手順としてまとめ上げやすく、そのためその訓練を受けた経験がモノを言っているだけ、という側面が大きいはずだ。このことは「可解な Galois 群を持つ方程式の解を実際にべき根で求める」手続きの妨げになる可能性がある。なぜならば…
これまでの一連の記事で説明してきた「整数係数で重解がなく、Galois 群が可解な方程式の解の具体値をべき根で表す手順」というのは、この記事で触れた通り、正確には「解の候補を有限通りに絞る手順」であって、最終的にそれらをふるいに掛けて真の解を選び出す際に、元の方程式 \(f(x)=0\) に代入して左辺が \(0\) になるかどうかを確かめる、という原始的な手段に頼る必要があった。この際、\(0\) であるものはちゃんと \(0\) だと判定できなければ困る。代入結果がいくら複雑なべき根の式になっていても、真の値が \(0\) であるならば \(0\) であると「確実に」判定できないと、代入した値が真の解だった、ということを知ることができない(例えば \(7\) 次方程式の解の候補を \(f(x)\) に代入してみたら \(0\) になってくれたものが \(2\) 個しかなかった、という場合、代入結果の中に「見かけ上 \(0\) ではないが、実は真の値は \(0\) に等しい」という複雑なべき根の式が \(5\) つある、ということ。その \(5\) つがどれなのかが解らない限り、元の方程式の真の解が求まったことにならない)。
それから、「真に \(0\) であるものは \(0\) であると確実に知ることができなければ支障を来す」ような場面はもう1つある。可解な Galois 群を持つ方程式をべき根で解くときに、「上から」下りていく向きが可能だ、ということをこの記事で説明したが、その過程で「\(V\) の最小多項式 \(g(x)\) の、新たな \(p\) 乗根を使った因子 \(h(x)\)」を求める際に、「\(g(x)\) を \(h(x)\) の候補で実際に割ってみて、割り切れるものが正しい \(h(x)\) である」と判定する箇所があった。この時、「割り切れる」かどうかの判定に、やはり「真に \(0\) であるものは見かけに惑わされずに \(0\) であると解る」必要がある(割って出てきた余りの係数が \(0\) かどうかが正しく判定できないといけないので)。
こう考えてくると、これまで「整数係数の重解がない方程式が可解な Galois 群を持てば、その解をべき根で具体的に表した式を求めることができる」と主張してきたが、ギリギリの所で解が求め切れない方程式もあるのかもしれない…という可能性を最後に指摘しておく。
【 追記 】書き上がってから改めて考えて気づきましたが、前々回の話を使うとどうやらうまく回避できて、最初から不適な値が紛れ込まないように計算を進めることができそうです。次回の記事を参照。
- 最後に、「整数係数の重解がない方程式の、置換群としての Galois 群は具体的に求められる」「その Galois 群が可解だったら解をべき根で具体的に表した式(の候補?)も求められる」ということに気づいた時の考察の流れを、記憶が確かなうちに記しておく。数年したら忘れてしまうかもしれないので。いや、忘れてしまったところで(私も含め)誰も困らないだろうが(笑)、例によって私が書きたいので覚え書きとして書いておく。記憶が薄れた頃に読み返して、「ああ、そう言えばこういう流れでこれを思いついたんだったなあ」とニヤニヤする準備はバッチリだ!(笑)
- 最初は、http://math.artet.net/?eid=1422097 に書いてあった“
2次方程式、3次方程式と同様に、4次方程式についても具体的に解の置換の集合が縮小されていく様子をみてみたいのに、それを実感できずに困っています
”“思えば、解の公式が導けるのは4次までなのだから、具体的な体の拡大&群の縮小をみることができるのは、2次・3次・4次方程式の3パターンだけです。ところが2次はシンプルすぎてかえってわかりにくい。3次はちょうどいいといえばいいけれど、体の拡大&群の縮小の段階が2段階だから、やっぱりさびしい。それに、複数確かめられるから具体的なのであって、そうなると4次方程式の場合がどうなるのかみてみないと、やっぱりしっくりこないのです
”という文を見かけて、「それももっともな話だから、自分自身の知識の整理のためにも、ひとつできないかやってみるか」と思い立ったのがきっかけだった。「数学ガール」ガロア理論編や「ガロア論文の古典的証明」(のうち、私が理解できた部分)を参考にあれこれ考えた結果、「ガロア群が可解である方程式の解き方・その1」で述べた「最上位の群が \(S_{4}\) である場合」の手順にまとめ上げることができた。 - この過程で、「この手順、最上位の群が \(S_{n}\) じゃなくて、(置換群としての)Galois 群になる場合も使えるよね?」ということに気づくとともに、移転前の blog で書いた“
\(r^{p}\) が \(K\) の数になる、ということが示しているのは、その有理式を実際に \(p\) 乗して展開し、うまく式変形を進めていけば、結果からは \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) という文字は消えて、具体的な \(K\) の数(と \(\zeta\))だけが残ってくれるということまで含まれていた
”というのが誤りだったことにも気づいた。作れるのはあくまで「未知数 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) の文字式」だ。それが \(S_{n}\) 対称な場合は \(n\) 変数対称式なので、その値を基本対称式の値から「具体的に」求める手順を頭に思い描くことができる。ところが \(S_{n}\) が Galois 群に置き換わった場合、「Galois 群対称な式の実際の値を具体的に求めるにはどうすればいいか?」が実は全然わからない、ということがわかってきた。それはやはり角の3等分方程式 \(x^{3}-3x-1=0\) で、「Galois 群対称な式
\begin{equation}
\label{eq:56-9}
\alpha^{2}\beta + \beta^{2}\gamma + \gamma^{2}\alpha
\end{equation}
の具体的な値を求めるにはどうしたらいいんだろう?」ということを考え直してみてやっとはっきり見えてきたことだった。この式は、Galois 群対称だとは言っても、こうやって書き下しただけでは別に未知数が打ち消しあって値が求まったりはしない。理論上「有理数である」ということがわかっているだけであり、そのままではさっぱり値がわからないものなのだ。以前この値を求めたときに採った手順は、結局
\[ \alpha\beta^{2} + \beta\gamma^{2} + \gamma\alpha^{2} \]
との和と積をとって…というもので、Galois 群がたまたま交代群 \(A_{3}\) という「対称群 \(S_{3}\) の直下にある」群だった、という特殊事情が大きく効いていただけで、その他の Galois 群に一般化できるような手順ではなかった。 - しかし逆に、次のこともはっきりした。「Galois 群対称な解の文字式の具体的な値を求める手段さえあれば、Galois 群が可解であるような方程式の解をべき根で求められる」ということだ。そんな手順がうまく作れないだろうか?
- [以下、一人称形式で…]元々、\(L\) が \(K\) の Galois 拡大のとき、「\(L\) の数が Galois 群対称だったら \(K\) の数になる」ことはどうやって証明したかというと… \(L=K(\lambda)\) となる原始元 \(\lambda\) とその共役 \(\lambda_{1}, \lambda_{2}, \dots, \lambda_{m}\) を使うと、Galois 群対称な数 \(\Phi(\lambda)\) は
\begin{equation}
\label{eq:56-6}
\Phi(\lambda) = \Phi(\lambda_{1}) = \Phi(\lambda_{2}) = \dots = \Phi(\lambda_{m})
\end{equation}
となることから
\begin{equation}
\label{eq:56-10}
\Phi(\lambda) = \frac{\Phi(\lambda_{1}) + \dots + \Phi(\lambda_{m})}{m}
\end{equation}
と \(\lambda_{1}, \dots, \lambda_{m}\) の対称式で表せることからだったか。ということは、その値を具体的に計算するためには、\(\lambda_{1}, \dots, \lambda_{m}\) の基本対称式の値、すなわち \(\lambda\) の \(K\) 上の最小多項式が必要だな。一方 \(\lambda_{1}, \dots, \lambda_{m}\) の個別の値までは必要ない。 - それから、よく考えてみると、「置換群としての Galois 群」が具体的にわかってないとこれそもそも話としてなりたたないな。そもそも、値を求めたいと思っている「\(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) の式」の形が具体的に手許にあるという想定の話なんだから、それが置換群としての Galois 群で不変な形をしている、と識別できるためには、Galois 群を置換群として具体的に知っていなくちゃいけない。おまけに、さらに遡って、置換群の組成列
\begin{gather*}
\text{Galois 群} = G_{0} \supset G_{1} \supset \dots \supset G_{r} =
\{e\} \\
G_{i} \rhd G_{i+1}, \quad \lvert G_{i} / G_{i+1} \rvert \text{ は素数}
\end{gather*}
を下から這い上がって一番上の Galois 群まで到達する過程は、そのメンバー \(G_{0}, \dots, G_{r}\) の要素がすべて既知でないと実行できないじゃん。ってことは、「置換群としての Galois 群はどうやって求めたらいいのか」ということも考える必要があるな…。(つまり、最初に考えたときの順番は「Galois 群が可解だった場合の解の求め方」が先で「Galois 群の求め方」が後だった。これは記事にした順番とは逆) - 置換群としての Galois 群を一般の方程式に対して求めるのは望み薄ということだったから、ここではそれは(何らかの理由で)あらかじめわかっている(与えられている)として考えを進めてみよう。
- 最小多項式については、Galois リゾルベント
\[ V = A \alpha_{1} + B \alpha_{2} + \dots + C\alpha_{n} \]
が \(n!\) 通りの全置換に対して異なる値をとるような整数係数 \(A, B, \dots, C\) が見つかっていれば、元の方程式が整数係数の場合は問題ない。全 \(V_{k}\) を根に持つ多項式 \(F(x)\) が\(\Q\) 係数の多項式として具体的に求められるから、それを通分した分子の整数係数多項式を、整数係数の範囲内での既約分解の手順を用いて分解してやればいい。\(n!\) 通りの \(V_{k}\) が互いに対等だから、既約因子の任意の1つを \(V\) の最小多項式としても一般性は失わないしね(←実はこの「既約因子は任意の1つを選べばよい」ということに気づくのも結構手間取った)。問題は、この既約分解を実行するには \(A, \dots, C\) は不定元ではなく具体的な整数値でないとダメなのに(←この時点では、不定元のままで既約分解できるということを知らなかった)、具体値を決めてしまうと「全置換に対して異なる値をとる」ようになっているかどうか、\(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) が未知の段階ではわからないことだ…。 - …と思ったら、角の3等分方程式で試しに \(A=1\), \(B=2\), \(C=3\) として \(F(x)\) とその既約分解を求めてみたら
\[ F(x) = (x^{3}-9x-9)(x^{3}-9x+9) \]
となったんで気づいたけど、この既約分解には重因子がないから \(F(x)\) って重根を持たないとわかるじゃん。なんだ、一般の場合でもこれで係数が適切かどうか判定できるじゃないか!なら \(A\), \(B\), \(C\) を色々変化させて試行錯誤すれば大丈夫だ!(←この時点では、前回書いたような細かい点までは考察が及んでいなかった)そうなると方程式は整数係数に限定されちゃうけど、それくらいの制限は十分許容範囲だ。あと試行錯誤の際、毎度既約分解までやると結構手間がかかっちゃうけど、重根の有無だけなら \(F(x)\) と \(F'(x)\) の間で互除法を実行するだけでもわかっちゃうじゃん。いいぞいいぞ。 - …と思ったけど、今まで薄々気づいてはいたけど先送りにしていた問題、やっぱりちゃんと考えなくちゃダメだな。今考えているやり方だと、低位の群で対称な式から高位の群で対称な式を作る時に \(1\) の原始 \(p\) 乗根 \(\zeta\) を使う。それを何度も繰り返してるから、出てくる式の係数は有理数ではなくて、いろいろな \(p\) に対する \(\zeta\) がたくさん入ってしまっている。そうなるともう、Galois 群は元々考えていた \(\Q\) 上の Galois 群とは違う群になってしまって、\eqref{eq:56-6}はなりたってくれないんじゃないか?となると、\eqref{eq:56-6}を当てにしないで Galois 群対称な \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) の式の値を求める工夫ができないか考えないといけない…
- \eqref{eq:56-6}を使わないとなると、「ガロア論文の古典的証明」に載ってた手法で整数係数方程式の有理数解として直接求められるか?………これも、いろんな \(\zeta\) が入ってるということを考えると、値が有理数になる保証がないから使えないよなあ。それに、仮にそのことを考えないとしても、出てくる整数係数方程式の有理数解がただ1つならいいんだけど、複数の有理数解を持っていた場合にどれが正しいかわからないからまだ不十分だよなー(←この時点では、「たとえ複数あっても、それらすべての組み合わせを使えば、最終的には \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) の候補を有限通りに絞れるから、あとは元の方程式に代入して真の解を選び出せば済む」ということに気づいていなかった)。
- …そうか、Lagrange の定理を使えばうまく行くか。
Lagrange の定理
\(x_{1}, \dots, x_{n}\) は不定元とする。有理式 \(\xi(x_{1}, \dots, x_{n})\) を不変に保つすべての置換によって有理式 \(\eta(x_{1}, \dots, x_{n})\) が不変なら、\(\eta\) は \(\xi\) と \(c_{1}, \dots, c_{n}\) の有理関数。ただし、\(c_{1}, \dots, c_{n}\) は \(x_{1}, \dots, x_{n}\) の基本対称式で
\begin{align*}
c_{1} &= x_{1} + \dots + x_{n} \\
c_{2} &= x_{1}x_{2} + \dots + x_{n-1}x_{n} \\
\vdots \\
c_{n} &= x_{1} \dotsm x_{n}
\end{align*}「代数方程式論入門」で証明を見てみると、\(\xi\), \(\eta\) の表式が具体的にわかっていれば、\(\eta\) を \(\xi\), \(c_{1}, \dots, c_{n}\) から四則演算で表す表式も具体的に求められる。よって、「\(\xi\) を不変に保つ置換全体がちょうど Galois 群(の置換群表現)に一致する」ような \(\xi\) がひとつ手許にあれば、Galois 群対称などんな \(\eta\) に対しても、\(\eta(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\) の値が \(\xi(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\) から四則演算で求められる。この過程は、係数が有理数だろうと \(\zeta\) を含んでいようと変わりなく実行できるから大丈夫そうだね…。
- そのような \(\xi\) の求め方も、再度「代数方程式論入門」の証明を参考に構成できる。そこに書いてある構成法は、私が読む限りは \(\xi\) の中に不定元 \(\rho\) が消えずに残ってしまうが、そこは次のようにすれば克服できる。
Galois リゾルベント
\[ V = A \alpha_{1} + B \alpha_{2} + \dots + C\alpha_{n} \]
と同じ整数係数 \(A, B, \dots, C\) を使って、不定元 \(x_{1}, \dots, x_{n}\) の1次結合
\[ U = A x_{1} + B x_{2} + \dots + C x_{n} \]
を作る。この \(U\) に対して、Galois 群に対応する置換を作用させた各々の \(U_{k}\) にわたる積
\[ \Gamma(\rho) = \prod_{\text{Galois}} (\rho – U_{k}) \]
を作ると、これは \(\rho\) の値によらず Galois 群対称になっている。\(\Gamma(\rho)\) に \(\rho=0,1,2,\dots\) と整数を順に代入していけば、いずれは「Galois 群に属さないどんな置換でも違う式になってしまう」ような式が得られる(今の「いずれは…」の部分は、「ガロア群が可解である方程式の解き方・その5」の最初の説明の後半部分と概ね同様に示せる。実はその部分は、この時点で出来上がっていた証明を流用しただけ)。その時の \(\rho\) を \(s\) として、\(\Gamma(s)\) を \(\xi\) とおけば
\[ \xi(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}) = F(s) \]
となるから、\(\xi(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\) の値も具体的にわかって、これから \(\eta(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\) の値が計算できる。【追記】これはまだちょっと考察が不十分で、この条件だけだと解 \(\alpha_1, \dots, \alpha_n\) を代入した時に、計算式の分母が \(0\) になってしまう可能性があった。追加すべき条件も含めて、補足を書きました。 - 今までは Galois 群が置換群として与えられてる、という前提で考えていた。これ何とかならないかな…。これまでの考えで手がかりになりそうなことは結構出ていたから、一般の場合は無理だとしても、整数係数の方程式に限定すれば、Galois 群を求める手順が作れないだろうか?
- Galois 群がわかってなくても、ひとまず、\(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) のそれぞれを \(V\) で表す式は作れるな。志賀本の証明にあったように Lagrange 補間を使ってやってもいいし、「ガロア論文の古典的証明」の別の所に載ってた手順を使ってもいい。角の3等分方程式の場合にちょっと試してみよう。…OK できた。作ってみて思いついたけど、これを使うと \(V_{k}\) の各々を \(V\) だけで表す式も作れる。やってみよう。…これもできた。んで、またも作ってみて思いついたけど、これを使って Galois 群が \(A_{3}\) であることを確かめられるんじゃないか?\(A_{3}\) に対応する \(V_{k}\) は \(V_{1}\), \(V_{2}\), \(V_{3}\) の3つだから、
\begin{equation}
\label{eq:56-7}
(x-V_{1})(x-V_{2})(x-V_{3})
\end{equation}
を展開した式が \(g(x)\) と一致すれば、Galois 群が \(A_{3}\) だと示せたことになる。\(V_{1}\), \(V_{2}\), \(V_{3}\) を \(V\) で表した式を使って、\eqref{eq:56-7}を展開した係数を \(V\) で表してみると…。うん、\(V\) が
\[ V^{6}-18V^{4}+81V^{2}+81 = (V^{3}-9V-9)(V^{3}-9V+9)=0 \]
をみたすことを使って整理すれば、確かに
\begin{align*}
\eqref{eq:56-7} &= x^{3}-9x-9 \quad (V^{3}-9V-9=0 \text{ のとき}) \\
\eqref{eq:56-7} &= x^{3}-9x+9 \quad (V^{3}-9V+9=0 \text{ のとき})
\end{align*}
となってる。 - そうか!今の計算と同様なことを行えば、「与えられた一つの置換群 \(G\) に対して、\(G\) に対応する \(V_{k}\) にわたる積
\begin{equation}
\label{eq:56-8}
\prod_{G} (x-V_{k})
\end{equation}
の係数が有理数になるかどうか」は計算できるんじゃないか?実際の計算では \(V\) の最小多項式として \(F(x)\) の既約因子を1つ決めておくことができるから、\eqref{eq:56-8}の係数が有理数になるかどうかは確実に判定できる。そしたら、有限群 \(S_{n}\) のすべての部分群(有限個)に対して、ひとつひとつその手順を実行することができるから、「\eqref{eq:56-8}の係数がすべて有理数となるような部分群」がすべてわかる。それらのうち、最小のものが Galois 群だよ!!だって\eqref{eq:56-8}ってのは必ず \(F(x)\) の因数で、\(V\) が原始元であることを考えれば、Galois 群ってのは「\(F(x)\) の因子\eqref{eq:56-8}が \(\Q\) 係数になるような置換群 \(G\) の中で最小のもの」なんだから!!よしこれで、整数係数の方程式なら Galois 群(の置換群表現)を具体的に求められる手順が作れた!!!あ、もちろん重解がないことは前提だけど、それは別に本質的な制約じゃないから問題ない。 - そうだ、実際の計算では、\(S_{n}\) の部分群全部について計算する必要はないな。\(F(x)\) の既約因子 \(g(x)\) の次数が Galois 群の要素数なんだから、\(G\) のうち要素数が \(g(x)\) の次数と一致するものだけ調べれば十分だ。
- あれ?待てよ、「\(V\) の最小多項式を使って\eqref{eq:56-7}の係数が有理数になるかどうか判定する」ってことをしたけど、同様のことをすれば \(g(x)\) の \(V_{1}\) 以外の根がどの \(V_{k}\) かも直接判定できちゃうんじゃない?\(g(V_{k})\) を \(V\) のみで表して次数下げすれば、\(0\) になるかどうかチェックできちゃうんだから!ってことは、置換群としての Galois 群はもうそれだけで求まっちゃうじゃん!!何て遠回りなことを考えていたんだ私は!
- そして、上で Langrange の定理を使ってえらい大変な計算をしてた所も、この「\(V\) のみの式で表して次数下げ」の計算法を使えばあっさり求まっちゃうんじゃない?試しに\eqref{eq:56-9}に、\(\alpha\), \(\beta\), \(\gamma\) を \(V\) で表した式を代入してみたら…ほら見たことか!ちゃんと定数になったよ!考えてみたら正当化も容易だ、事前に「Galois 群対称だから有理数になる」とわかっているんだから、\(aV^{2}+bV+c \quad (a,b,c \in \Q)\) の形で表す表し方の一意性から \(a=b=0\) となるしかなくて、それはつまり次数下げの結果定数 \(c\) しか残らないってことだよ!つまり\eqref{eq:56-10}みたいに対称化を行って \(V_{1}, \dots, V_{m}\) の対称式の値を基本対称式の値から計算する…なんて回りくどいことをする必要は最初からなくて、\(V\) で表した式を整理した時点でもう既に値は求まってしまってる、というオチだった。そんなこととも知らず\eqref{eq:56-10}に頼る気でいたとは何とマヌケな…。
- あ、でも「Galois 群対称だから有理数になる」ってのは、やっぱり \(\zeta\) が入ってるせいでアテにはできなくなってるな…。うーん、でもここまで来たらなんかうまい手がありそうな匂いがプンプンする。何とか「\(V\) のみの式で表して次数下げすれば \(V\) が打ち消しあって定数になる」という部分をうまく活かせないものか。再度角の3等分方程式を具体例として考えてみよう。えーと、「\(V\) のみの式で表して次数下げする」ってのは、計算としては多項式の割り算で \(g(x)\) で割った余りを求めることと同一だよな。で、この割り算の等式と「\(A_{3}\) の置換で値が不変」ということを結びつけるにはどうしたらいいんだ?………ああそうか、\(x\) の式としては変化させないまま、\(x\) に代入する値を \(V\) から \(V_{2}\), \(V_{3}\) に取り替えることが \(A_{3}\) による解の置換と同じことになるのか。んで、割ってる式が \(V_{1}\), \(V_{2}\), \(V_{3}\) の共通の最小多項式だから、\(A_{3}\) の置換で値が不変ということは、割り算の余りの式に \(V_{1}\), \(V_{2}\), \(V_{3}\) のどれを代入しても値が同じ、ということで………あーそうか、\(2\) 次以下の式に異なる \(3\) つの値を代入した結果が同じ値になるということは定数ということか!!よし、これですべて解決した!!!
………というような経緯を経て、当初の「http://math.artet.net/?eid=1422097 に対するアンサーエントリを書いてみようかな」という考えとはかなりずれた内容の記事が登場することとなったのでした。
- 最初は、http://math.artet.net/?eid=1422097 に書いてあった“
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