ガロア群が可解である方程式の解き方・その6

Galois 群が可解である場合に解を実際にべき根で求める手順で、「その3」で述べた「上位の群 \(G\) から下位に向かって」\(V\) の最小多項式の因数分解を進めていく方針の場合、多少手間を軽減できることを説明する。

これまで述べてきた方法は、低位の群 \(H\) で不変な多項式 \(\psi(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\) の値を求める際に、それを \(\sigma \in G – H\) で次々に移していった \(\psi_{1}, \psi_{2}, \dots\) の表式を求め、上位の群 \(G\) で不変な多項式 \(\bigl\{\theta(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\bigr\}^{p}\) を構成して、さらにその表式に解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) を \(V\) で表した式を代入して値を求める…という手順だった。この際現れる表式は、解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) の多項式としては結構複雑なものになり、それに \(V\) で表した式を代入して整理する…という計算はそれ相応の手間がかかった。

さて、「その3」のやり方だと、求めたい \(\psi(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\) は \(H\) 上で \(V\) の最小多項式となるはずの \(h(x)\) の係数(あるいは、「その5」で述べたように \(h(x)\) そのもの)だった。ここで、\(h(x)\) は
\[ h(x) = (x-V_{a})(x-V_{b}) \dotsm (x-V_{c}) \]
(積は \(H\) に対応する \(V_{k}\) 全体にわたる)という形をしているから、\(\psi\) には解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) は \(V_{k}\) を通じた形でのみ含まれている、ということに着目しよう。例えば \(h(x)\) の定数項を \(\psi\) とした場合は、
\[ \psi(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}) = \pm V_{a} V_{b} \dotsm V_{c} \]
である。

ということは、それを \(\sigma\) でうつした \(\psi_{1}, \psi_{2}, \dots\) も、\(V_{k}\) の形を通じてのみ解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) を含んでいる。つまり、\(\sigma\) による \(V_{a}, V_{b}, \dots, V_{c}\) のうつり先が \(V_{\tilde{a}}, V_{\tilde{b}}, \dots, V_{\tilde{c}}\) だとすれば、\(\psi_{1}\) は
\[ \tilde{h}(x) = (x-V_{\tilde{a}})(x-V_{\tilde{b}}) \dotsm (x-V_{\tilde{c}}) \]
の係数(あるいは \(\tilde{h}(x)\) そのもの)である。上の例だったら、
\[ \psi_{1}(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}) = \pm V_{\tilde{a}} V_{\tilde{b}} \dotsm V_{\tilde{c}} \]
だ。もちろん \(\psi_{2}\) 以降も同様。

したがって、\(\theta(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n})\) やその \(p\) 乗も、やはり解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) はすべて \(V_{k}\) の形を通じてのみ含んでいる。ということは、それを \(V\) で表した表式に還元したいなら、結局各 \(V_{k}\) を \(V\) で表した表式を使うだけで十分で、わざわざ \(\psi\) や \(\theta^{p}\) を解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) で陽に表した形を求める手間をかける必要はない、ということになる。

これを利用した計算を、「その3」で具体例として取り上げた \(4\) 次方程式を使って実例としてやってみる。\(V = \alpha_{1}-\alpha_{2}+2\alpha_{3}+3\alpha_{4}\) とおけて、その最小多項式を \(g(x) = x^{4}-22x^{2}+25\) にとった場合
\begin{equation}
\begin{split}
\alpha_{1} &= \frac{V}{20}(-V^{2}+27) \\
\alpha_{2} &= \frac{V}{20}(V^{2}-27) \\
\alpha_{3} &= \frac{V}{10}(-V^{2}+17) \\
\alpha_{4} &= \frac{V}{10}(V^{2}-17)
\end{split}
\label{eq:53-1}
\end{equation}
であり、解の置換群としての Galois 群は
\[ W=\{e, (1, 2), (3, 4), (1, 2)(3, 4) \} \]
だった。\(W\) の各置換に対する \(V_{k}\) は
\begin{align*}
V_{1} &= \alpha_{1}-\alpha_{2}+2\alpha_{3} +3\alpha_{4} \\
V_{2} &= \alpha_{2}-\alpha_{1}+2\alpha_{3} +3\alpha_{4} \\
V_{3} &= \alpha_{1}-\alpha_{2}+2\alpha_{4} +3\alpha_{3} \\
V_{4} &= \alpha_{2}-\alpha_{1}+2\alpha_{4} +3\alpha_{3}
\end{align*}
で、\eqref{eq:53-1}を使って \(V\) のみで表せば
\begin{equation}
\begin{split}
V_{1} &= V \\
V_{2} &= \frac{V}{5}(V^{2}-22) \\
V_{3} &= \frac{V}{5}(-V^{2}+22) \\
V_{4} &= -V
\end{split}
\label{eq:53-2}
\end{equation}
となっている。

ここでも \(U=\{e, (1,2)\}\) とおいて、要素数比が素数となる組成列 \(W \supset U \supset \{e\}\) を作ろう。\(U\) に対応する \(V_{1}\), \(V_{2}\) を根に持つ多項式
\[ h(x) = (x-V_{1})(x-V_{2}) =x^{2} – (V_{1}+V_{2})x + V_{1}V_{2} \]
は \(g(x)\) の因子で、「その3」ではこの係数の \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{4}\) の多項式としての具体的な表式を求めていたが、ここでは \(V_{k}\) のみを使って計算を進める。

まずは \(h(x)\) の \(1\) 次の係数(の \(-1\) 倍)\(V_{1}+V_{2}\) を \(\psi\) としよう。\(\sigma = (3, 4)\) とすれば \(W/U = \{U, \sigma U\}\) であり、\eqref{eq:53-1}より \(\sigma\) で \(V_{k}\) がうつり合う様子は
\begin{align*}
V_{1} &\mapsto V_{3} \\
V_{2} &\mapsto V_{4} \\
V_{3} &\mapsto V_{1} \\
V_{4} &\mapsto V_{2}
\end{align*}
である。よって \(\psi_{0} = V_{1} + V_{2}\), \(\psi_{1} = V_{3} + V_{4}\) で
\begin{align*}
\theta_{1} &= \psi_{0} + (-1)\psi_{1} = V_{1}+V_{2}-V_{3}-V_{4} \\
\theta_{2} &= \psi_{0} + \psi_{1} = V_{1}+V_{2}+V_{3}+V_{4}
\end{align*}
となる。よって、\(W\) 対称となる \({\theta_{1}}^{2}\), \(\theta_{2}\) を \(V\) で表すと、\eqref{eq:53-2}を使って
\begin{align*}
{\theta_{1}}^{2} &= \biggl( V + \frac{V}{5}(V^{2}-22) – \frac{V}{5}(-V^{2}+22) – (-V) \biggr)^{2} \\
&= \biggl( \frac{2V}{5}(V^{2}-17) \biggr)^{2} = \frac{4V^{2}}{25}(V^{4}-34V^{2}+289) \\
&= \frac{4V^{2}}{25} (-12V^{2}+264) \quad (\because V^{4}=22V^{2}-25) \\
&= \frac{4}{25} \times 12(-V^{4}+22V^{2}) \\
&= \frac{4}{25} \times 12 \times 25 = 48 \\
\theta_{2} &= V + \frac{V}{5}(V^{2}-22) + \frac{V}{5}(-V^{2}+22) + (-V) \\
&= 0
\end{align*}
のようにちゃんと \(V\) が消えて定数として値が求まる。これらより
\[ \psi = \frac{\theta_{1} + \theta_{2}}{2} = \frac{\pm \sqrt{48} + 0}{2} = \pm 2\sqrt{3} \]
となる。これで \(h(x)\) の \(1\) 次の係数は \(-(V_{1}+V_{2})= \mp 2\sqrt{3}\) とわかった。これは確かに「その3」の結果と一致している。

\(h(x)\) の定数項 \(V_{1}V_{2}\) についてもまったく同様に計算でき、「その3」と同じく \(V_{1}V_{2} = -5\) という結果が出るが、過程は省略する。

このように、求めたい \(\psi\) が解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) を \(V_{k}\) の形を通じてのみ含む場合は、必要なのは

  • \(V\) の最小多項式
  • Galois 群の各置換に対応する \(V_{k}\) を \(V\) で表す表式
  • それら \(V_{k}\) が Galois 群の各置換でどのようにうつり合うか

だけだ。\(\psi\) の具体的な値を求める計算過程では、解 \(\alpha_{1}, \dots, \alpha_{n}\) を陽に含む形の表式はまったく扱う必要がないことがわかるだろう。


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