その他の話題

  1. ちょっとは褒める点も…
  2. 花をしょわせる
  3. 「妹キャラ」の攻防
  4. ○○エンド
  5. クサいモノローグ
  6. 北大路について
  7. 唯について
  8. 向井について
  9. 美鈴について
  10. 端本について
  11. 真中について
  12. キャスティング
  13. 河下先生に適した場
  14. 日付ネタいろいろ
  15. 入浴時の髪の描き方 [2015, 12/12]

ちょっとは褒める点も…

けなすばかりというのも何なので、褒めるべき点も挙げておきます。

連載終了が視野に入る頃になってから急にいろいろと関連商品が発売される ようになって、この辺りのちぐはぐさがどういうことなのかはよくわからないの ですが(担当編集の手際が悪かったり何かしたのか?)、その影響で数多くの書 き下ろしカラーイラストを始めとするかなりの「余計な仕事」が作者には降り掛 かったはずです。

にもかかわらず、休載を入れたりせず、絵の質も落とさず最後まで連載をや り遂げた、という所は素直に称賛したいと思います。しかも、毎回19ページきっ ちり仕上げるのみならず度々の増ページ要請にも応え、さらに季刊増刊にも毎回 2〜3ページのおまけマンガを書き下ろしてましたから、連載本編以外の作業量 はいろいろ積もって相当なものになっていたに違いありません。少なくとも作画 の面については、河下水希は非常に手が早いマンガ家なのでしょう(ひょっとし たら優秀なアシスタントに恵まれた、というような事情もあるのかもしれないけ ど、でも運も実力のうち)。ここはやっぱり彼女を褒めてもよいですね。

花をしょわせる

もうひとつ作画に関する話題として、少女マンガ出身らしく、登場人物に 「花をしょわせる」ようなことをしていたことにちょっと言及しておきます。こ れは(たぶん)手間がかかる割に効果が地味(特に、ジャンプのような少年マン ガ誌上では)な上、喜ぶのは専ら女の子の読者だけとあって、普通の少年マンガ 家はまず滅多にやりません。これに河下水希は手を染めていた。

さすがに「下ろしたてのパンツのようにきつい」週刊連載では頻繁にやるほ どの余裕はありませんでしたが、それでも一度だけに留まらずやっているのを見 て、「ああ、やっぱり少女マンガの人なんだなあ。あの表現に愛着があるんだな あ(多分、読者としても、作者としても)」と感心させられました。

「妹キャラ」の攻防

中盤には「唯→美鈴→端本→向井」と新キャラが投入されましたが、これら のキャラはいずれも小柄で、4名中3名は真中より年下、という共通点がありま す。これは、編集部からのテコ入れ要請として、「妹系のキャラ」を要求された のではないか、と推測しています(向井の 場合はそれとは別の狙いもあったはずですが)。で、それが4回に渡って繰 り返されたのは、編集部の期待するキャラ像と、実際に投入されたキャラが食い 違っていて、何度も「妹キャラ」の要求が行われたからではないでしょうか。こ の辺りの作者と編集の攻防は、以下のようなものだったのではないかと想像して います。

たぶん編集部としては最近はやりの「お兄ちゃん好き好き」と無条件で懐き、 どこまでも従順で男子読者の願望に限りなく奉仕してくれるキャラを期待してい たんでしょう。だけど、女性でもある作者はそんな記号的キャラを書くのはつま らん、ということで、のらりくらりと躱していたと考えるとわかりやすいです。

まず唯のときは、「真中の幼なじみで、それゆえ真中の前で無防備な所もあ る、幼めのキャラ」というような要求があったのでしょう。ところが、出てきた のは真中に対して時にはお姉さんぶった口をきき、わりとサバサバした所もある キャラでした。かわいいにはかわいいんだけど、編集としてはもっと「好き 好き光線全開」のキャラを期待していたので、アテが外れた形です。

そこで編集は再度、「いやそうじゃなくて。じゃあ今度は『本当の』妹で行 こう!適当なサブキャラの妹が入学してきて、映研の後輩になる、ということで ヨロシク!」と要求したのでしょうが、出てきたのはよりによって「辛口ポップ コーン女」美鈴でした。

そこでまたも「違う違う!何て言ったらいいかなあ。もっとこう、小悪魔的 な妹キャラが欲しいんだよ、小悪魔的な妹が。今度はそういう線の新キャラを追 加ね」という話になり、その結果登場したのが端本なのでしょう。これまた「小 悪魔的」とは言っても「カワイイ顔をして男を手玉にとる」性悪系の小悪魔だっ たので、編集の想定とは全然違うキャラです。

諦めない編集は「新キャラは、やっぱり真中を好きになるようにしないとだ めだよ。でもって、気が強いのは禁止。もっとこう、自分に自信のない男子読者 を安心させるような、気の弱〜いキャラを頼むよ」と要求し、その結果出てきた のが向井なのではないでしょうか。

この向井が編集のお気に召したのか、それとももういい加減諦めたのかは知 りませんが、とにかくこれで一連の新キャラ登場は打ち止めとなりました。その 背景にこういう事情があったのだろう、と想像するとなかなか楽しめます。いや、 ホントのことかどうかはさっぱりわかりませんが(笑)。

○○エンド

よく「○○エンド」(○○にはヒロインキャラ名が入る)という言葉が使わ れます。おそらくコンピュータゲーム方面から流入してきた用語・概念なのでしょ うが、どうも、キャラの人格を無視してモノ扱いしているような響きが感じられ るので、私はこの言葉は使いたくありません。

いや、このマンガは各女性キャラを「パンツ展 示用のマネキン人形」扱いしているような所があるので、まさしく「モノ扱 い」がふさわしいのかもしれませんが(笑)、ともかく一般的な感覚として、 「○○エンド」という言い方の裏に漂う侮蔑的な感性が嫌ですね。ですから、 このコーナーでは、「○○エンド」という言葉は 一切使っていません。 例外はこの節だけですごく一部でしか使っていません。

気になるのは、その「エンドが誰か」ということだけに興味の大半 が集中しているかのような声が結構目につくことです。私だったら、あの本編で、 最終回だけ取ってつけたように東城を選んで終わったりしていても、 ほとんど嬉しくありません。それはもう、実質的に全然無意味ですから。やっぱ り、東城の想いが「存分に」報われることが希望であって、「エンド」という 「形」が欲しいわけではないのです。

西野ファン側には、「西野エンドだった『から』よかった」という具合に、 「そこに至るまでの過程なんかどうでもいい」と言わんばかりの感想が目立つよ うな気がするのですが、本当にそれでいいと感じられるのだろうか…?というの は不思議に感じる部分です。真中と西野の精神的 結び付きの具体的描写はやけに乏しいまま空港のシーンに突入しているので すが、西野ファンはこれまでの埋め合せがなくても「エンド」という「形」 さえあればそれで構わない、という人が多かったのでしょうか…?

クサいモノローグ

このマンガでは、真中のセリフを借りて、時折極めてクサいモノローグが流 されます。いちいち挙げるのも何なので引用はしませんが、そういう観点から読 み返してみると、該当する部分は容易に見つかるでしょう。

いや、これがものすごくクサいんですよ!(笑)何こんな にポエマーな感性こっそり発揮しちゃってんの河下先生!?と言いたくなるくら いに。

その余りのクサさに、ひとつ思ったことがあります。河下水希は真中を非常 に優柔不断なキャラとしてあちこちにフラフラする姿を描いているわけですが、 実はそれは彼のモノローグの余りのクサさをカモフラージュするため の作戦だったのではないかと!(笑)

つまり、あのように情けないキャラにしておけば、世間の目と非難は自ずと そこに集まり、クサいモノローグには目が届きにくくなります。それをいいこと に、クサいモノローグが書き放題、というのが彼女の真の目 的だったのではないでしょうか。恐るべし!河下水希!(笑)

これに気づいたとき、私は「クサいモノローグ好き放題書いてんじゃないぞ、 コンチクショーッ!!」とジャガーさん風に叫びたくなってしまいました(笑)。

北大路について

汚れ役をみんな押しつけられた上、勝てないと解っている戦いを、それでも めげずに孤独に戦い続けないといけなかった、悲劇のキャラ。

高3になってから後の話で、東城とは別の意味で最もワリを喰ったキャラで すね。始めの頃は「親友宣言」で「偉い!よく決意した!!」と感心させられた のですが、それだけに、合宿であっさり戦線復帰したのは非常にがっかりで (見開きまで使ったあの教会前での「いいシーン」を全部台無しにしちゃう のかー!やめろー!と思ったものです(笑))、これがケチのつき始め。 さらに、それだけの「犠牲」を払って復帰させたのにもかかわらず、結局それが 生かせたのは「ディープキス未遂」イベントくらいのもので、ロクに「真中争奪 戦」に絡めないままフェードアウトしてしまったのが涙を誘います。

「やっぱり、気軽にお色気アタックを仕掛けられるポジションのキャラがい ないとやりづらいな〜。よし、じゃあ北大路を再参戦させるか」程度の都合でお 手軽に復帰させた(に違いない!(笑))ものの、どう活用するかロクに見通し もなかった(に違いない!(笑))ため、作者の都合にいいように振り回されて 貧乏クジを引かされちゃった、という風にしか見えません。

天地と意気投合して真中奪回に意欲を燃やすも、具体的な描写は何も与えら れず、学園祭では真中といちゃいちゃして西野との仲を裂こうとかなり性悪な 性格描写までされていながら、結局ラグビー部に連れ去られて欠片も出番なし、 と、本人の意志が作者の都合によってことごとく無効化されているのがつらい。

一応、振られた東城を慰める場面でちょっと株を上げてるんだけど、それ以 外事実上フォローに手が回り切っていない、という有様で、作者の力量不足と評 してよい部分でしょう。

本来なら最後の見せ場であるはずの最終回での扱いまでもが非常に気の毒で す。北大路を始めとする映研の他のメンバーは、東城・真中の成長を外見・内面 両方にかけて描くためのダシに使われたため、基本的に成長がまったくないわけ ですが、これまでも描写がてきとーだった端本はいいとしても、北大路はねえ…。 東城がもう真中のことをすっかり「いい思い出」として割り切って「いい女」に なってるのと対比させるため、まあだ真中に未練たっぷり、という風にさせちゃっ たのは、ちょっと可哀想だよ河下センセ…。

自分の意志で「京都に行き、真中と距離を置く」決断をした割には、4年もの 間ウジウジと真中のことが忘れられず、挙げ句の果てには「金を貯めた真中が向 かった先は、本当は…」ともの凄く後ろ向きな妄想が思い留まれないというのは、 なんか性格が破綻していて、理解に苦しみます。正太郎の言葉を借りれば、「告 られるの待ってんの?彼女がいる男から?京都で会う約束をしたわけでもないの に?」

当てもなくそんな虚しい妄想に耽るような未練がましい未熟な人間、料亭の 切り盛りなんてできないと思うんだけど…(笑)。やっぱり最後、その辺りが作 者に蔑ろにされてしまっていて可哀想です。京都という新しい土地で、新しい恋 を見つけて、逞しく生きていく、という方が絶対彼女に似合ってますよ。そうし てこそ164話での「いつか絶対…」の決意も生きてきたはずだったのに。

それにしても天狗柄のパンツを真中に贈るそのセンスは、私にはまった く理解できませんよ!!(笑)

唯について

唯は一応「4大ヒロインのひとり」という名目だったわけですが…。終盤に なって、真中の部屋でブラを見つけたときに、真中に直球で「付き合ってる人い たり…する?」と尋ね、真中の方もその質問に「裏の意味(実は唯は自分のこと が好きで、探りを入れて来ているのでは?という可能性)」があるのかどうかを 全然勘ぐっていない所から、互いに相手に恋愛感情はないし、その可能性を疑い すらしない関係になっている、ということがわかりますね。登場時の「赤い糸」 や「やっぱり淳平だーいすきっ!!」の伏線はどこへ行ったのやら(笑)。

このキャラは登場する度に言うことがころころ変わっていて、いったい東城 との仲を応援してるのか、自分も割り込みたいのか、それとも「総振られエンド」 を希望してるのか、どれなんだー!というのが(笑)。まあそこら辺が半分「ゲ スト」扱いで、思ってることがすぐ口に出ちゃう子供っぽさがかわいい、という 所にもつながるんでしょうけど。

最終的には、高3の合宿から帰ってきたときの話で、西野との仲を応援して いる、ということに落ち着いたのでしょうか。それ以前には西野に熱心に日暮を 勧めていたのは何だったの?というのはちょっと不思議ですが、あれもやっぱり、 その場の思いつきをすぐ口に出しちゃってただけで、それほど深く考えていたわ けじゃないんでしょうね。終盤で、真中と西野がつき合いを再開した、と知って から後の言動も、「西野じゃ真中につり合わない!」というようなことを言いた げには全然見えませんでしたし。

それにしても、ラスト近くで真中の浮気(という誤解)を責めるときに言っ てることって、大体みんな「よく言った!」と称賛しているみたいなんだけど、 私は何度見ても「何を 今さら!」としか思えないなあ(笑)。それに、振られた東城を無神 経にも家庭教師に起用するお前自身にだって責められるべき点はあるだろう(笑)。

向井について

向井は東城と似た所があって、彼女にとっても真中は「人生を変えてくれた 運命の人」ですね。「勘違い」が始めのきっかけだった西野や北大路と違って、 真中の行動に直接心を動かされて恋するようになっていった、という所も共通し ています。つまり向井は小東城と言うべきか。

でもやっぱり東城に比べるとずっと絆が弱いので、「悪いけど諦めて。真中 は君の思ってるような王子様じゃないですよ」と言うしかないなあ。

彼女は、かなり終盤までズルズルと真中のことが諦められない風な描写にさ れていたのはちょっとかわいそうです。学園祭のときの「真中さんのこと悪く言 わないでーっ!」と浦沢に当たるのは「いや、ちょっとは真中に幻滅しようよ(笑)」 と諭したくなってしまう部分です。あそこで「目が覚めれ」ばよかったのに。

せっかく18巻 p.68 で真中と距離を置く決心ができたかと思いきや、p.141 で何ごともなかったかのように普通に挨拶し、初詣の p.175 ではまだ真中に未 練タラタラ、という風に描かれてしまったばかりか、結局それを受ける描写はまっ たくないままなし崩し的にフェードアウトという扱いで、ヒドい。素直に右島と くっつけておけばよかったと思うんですが、「そんなのイヤだー」という読者の 声が強かったりして揺れたんですかねえ?

それにしても、最終巻の「向井の妄想をもっと描きたかった」という作者コ メントには驚きです。「あれ」をもっと描きたいんですか、河下先生!? (笑)そのセンスにはちょっとついていけない…(笑)。

(追記)Gマルえでぃしょんを見て、河下先生の描きたかっ たことのイメージがちょっと掴めた気がします。なるほど、確かに向井の妄想を メインに据えて描いたらこんなマンガになりそうですね…!いや、イメージが掴 めたからと言って「そのセンスについていけない」という感じ方に変化があった わけでは全然ないのですが!!(笑)あと、後から思い返すと「秋色妄想日和」 も確かにそんな感じのマンガではありました…(笑)。

美鈴について

新入部員として泉坂高に入学してきたときに割とはっきり提示されていた、 「女優としての活躍」の目が結局完全にナシのつぶてってのがちょっと残念。金 返せ、コンチクショー!(笑)

………ってのはまあ、冗談としてもです。美鈴について は、いつの間にか真中を認めるようになってしまっていった所が、ポジションと して一貫していないな、と感じる部分です。

入部時にいきなり高1のときの真中の映画をけちょんけちょんにけなし、そ の後も複数の女の子にフラフラする所をズバズバ批判して、「映像作家としても、 一人の男性としても落第・失格レベル」という扱いですよね。

でまあ、本来なら

という部分があるのですが、そこを理屈通り描こうとす ると話がまったく進まなくなる(美鈴が主人公になってしまう)ので、そこがなぁ なぁになってるのにはとりあえず目をつぶります。

問題は高3の合宿のときで、風呂場での態度を見るに、美鈴の真中に対する 人物評は全然改善しておらず、相変わらず「最低」レベルです(「映像作家とし ての実力」は…多少は見直したんですかねえ、高2の映画は出来がよかったよう なので(学園祭での観客の反応や3位という結果に加えて、端本も向井も、初見 で一発で心を鷲掴みにされていた)。それならそれで、「ちょっとは見直した」 という描写も入れておいて欲しいんですが)。で、東城とふたりきりになったと きも、「あんな男の一体どこがそんなにいいのか(自分にはさっぱり解らない)」 「同じ大学に行くなんて、東城の才能がもったいなさすぎる」と問い詰めている わけですが…そこでなぜか「同じ大学に行きたいなら、ちゃんと好きだと言っ てから行くべき」というセリフが出てくるんですね。

私は、ここで「え?」とかなり引っかかってしまいました。このときの美鈴の 行動原理は、「尊敬する東城が真中なんて最低男のために人生を棒に振ってしま うなんてとんでもない、何とか思いとどまらせたい」というものですから、好き だと言う・言わないは関係してこないはずなんですよ。

このときの美鈴のセリフを詳しく見てみます。

  1. それでも!!東城先輩は自分の道を進むべきです!
  2. 真中先輩だって東城先輩の才能買ってるじゃないですか!それなのに 東城先 輩の才能を押さえこんでまで自分と同じ大学行ってほしいって考えると思いま すか?もし同じ大学に行きたいのなら ちゃんと好きだって告白してから行くべ きだと思うわ!!

よく見ると、AとBで急に話が変わっていることがわかります。Aでは「真中な んか放っとけ」と言ってるのに、Bでは「このまま同じ大学に行ったら、真中の 方がかえって負担に感じてしまうはず(だから、そんな負担を感じさせないよう、 好きなら好きと言ってからにせよ)」と言っていて、なぜかここで急に美鈴が 「真中を」思いやるようになっちゃってるんですよね(「東城を」思 いやるセリフではない。前述のように、好きだと言おうが言うまいが、同じ大学 に行ったら東城の才能が無駄になってしまう(と、少なくとも美鈴は思っている) ことに変わりはないわけだから)。

この、直前までの行動原理にまったく反した言動がわけわからなくてねえ。私 にとってはかなり「ポカーン」な場面です。

その影響もあるのか、私は合宿最終日の風呂場で涙する美鈴に全然心が動か ないですね。ここは他の人には結構評判のいい場面みたいなんですけど、私は冷 たい人間なのだろーか(笑)。

逆に言うと、この発言が出てくる以上美鈴は真中を人間的に認めている、と いうことで、確かにそれは学園祭直前や当日の「尊敬する東城」と真中の恋を実 らせようとする行動や、番外編での真中をそれなりに認めている思考とは一貫し ているのですが、だとしたら合宿の前半と後半でそういう風に美鈴の認識を180° 引っくり返すような杜撰なマネはしないでくださいよ、河下センセイ…(笑)。

多少穿った見方をすれば、この時点で「美鈴を、東城の恋を応援する立場の キャラにする」という方針が決まっていて、そのポジションに就かせるために多 少強引にセリフを当てはめていったら、こういう不自然なことになっちゃったの かな、という気もします(だとしたら、2学期に なってからのその「応援」の行動がメチャクチャおかしいことも合わせて、 作者にえらく貧乏くじを引かされたキャラですね)。

それにしても結局、美鈴の映画へのこだわりはどうなっちゃったんでしょう? 番外編は、最初は「美鈴・内場それぞれが自分の夢を持っている」所から始まっ ているのに、後半いつの間にか夢を追うのが内場だけになってしまって、美鈴の 夢はうやむやにされちゃってるんですよね(美鈴の恋愛成就がテーマである以上、 他の要素はむしろ積極的に削っていかないと話がボケるし尺も足らない、という のはわかるのですが…)。オトコができたから将来はどうでもよくなっちゃった、 というのは美鈴らしくないんで勘弁して欲しいんですが、本編最終回でも、真中 の賞の獲得を黒川先生に聞いて初めて知ってる所からして、業界方面の情報に気 を配っている節が感じられないのがねえ…。せめて、映画とは違う方面に将来の 道を定めた、ということであって欲しいんですが。

追記・美鈴のセリフ改善案

上述の通り、最後の合宿時の、美鈴の東城へのセリフは問題が山積している のですが、これはちょっとした手直しでかなり改善できると私は思っています。

まずはじめに、「あんな男の一体どこがそんなにいいのか」と追求させるの は避けなければいけません。美鈴が「真中の人間性は東城に全然釣り合わない、 真中と同じ大学に行ったら東城の才能が無駄になってしまう」と思ったままでは、 どうやっても「同じ大学に行きたいなら、ちゃんと好きだと言ってから行くべき」 というセリフには繋がらないですから。

前後の状況から、このセリフこそがこの場面で作者が美鈴に言わせたかった キーとなるセリフのはずです。そして、このセリフは「真中とちゃんと向か い合おうとしない、逃げの姿勢で真中にくっついて行こうなんて、人として情け ないし、真中に対しても失礼だ」ということを非難しているのですから、 大前提として、ここでは美鈴は「真中には、東城が同じ大学を目指すだけの人間 的価値がある」と(条件つきでもいいから)思っている必要があります。

したがって、ここは「同じ大学に行くなんて、東城の才能がもったいなさす ぎる」なんてことを言わせる代わりに、「今の関係を壊したくないから 真中に好意は伝えなくていい」という東城の臆病さを責めるセリフにするべき です。そうすれば、「ちゃんと好きだと言ってから行くべき」という、 真中よりもむしろ東城の資質をこそ問うているセリフと自然に繋がるようになり ます。また、そうして初めて、「真中の負担になるから」という美鈴の論法や、 「言ってもらえて、自分勝手だってことにやっと気づいた」という東城のセリフ にも一本筋が通るようになりますね。

変更はその部分、僅か2ページ程度の美鈴のセリフだけで十分です。 それだけで、その後の東城の「同じ大学を 目指すのをやめるかも」という(意外な)申し出と、翌日の擬似告白にも自 然な流れが生み出せます。前者は、自分の本心を隠したまま「真中と同じ大学に 行きたい」などと言うのは、自分の人生を定見もなく相手に委ね、責任を覆いか ぶせようという卑怯な行いだ、ということが解ったからで、後者は「そうやって 貸し借りを解消した上で、改めて真中に向かい合おうとしたことの現れ」という 背景が、特に何も付け加えなくても浮かび上がってきますね(まあ、たとえそう したとしても、その少し前の風呂場での真中評との乖離は残ってしまう訳ですけ れども、それくらいなら「美鈴は、風呂場ではその場の話の流れ・勢いで少し真 中をけなしすぎてしまったけれど、実際はそこまでひどいとは思っていなかった」 と説明をつけることもできなくもありません)。

そもそも、この ときの東城の一番の問題点というのはその消極さであるということは誰の目 にも明らかでしたから、作者の頭の中の構想段階ではそういう話にしようと考え ていたはずだ、というのは、自然に思えることでもあるんですよね。また、その 後の東城の行動も、上述の通りその方がよっぽど自然に解釈できます。だから 「何かチグハグだなー、どうして美鈴のセリフをそういう風に組み立てなかった んだろう?」というのは、当時から疑問に思っていたことではありました。

後輩からそんなことをズバリ説教されてしまうというのは、かなり情けない キャラになってはしまうわけですが(笑)、でもそれくらいの扱いがむしろ似合っ てるという気もするんですよね、東城って(笑)。そうやって、不器用で奥手な キャラが、回りの人に手を引いてもらったり、時には厳しく叱責を受けたりしな がら、最後には恵まれて幸せな笑顔が輝く、という話が見たかった。本当に、 心の底から見たかったです。

端本について

「半分の女」―――と言っても何のことかわからないと思いますが、登場期 間のことです。全167話ですから第84話が丁度折り返し地点に当たりますが、端 本の初登場は第82話なので、この作品全体のほぼ半分の期間に渡って登場してい ることになるんですね。

彼女に対してはあまり言うことはないのですが(笑)、ひとつ気になるのは 「いつの間に映研に復帰したんだ!?」ということです。学園祭のときに書き置 きだけ残して退部した、という話だったはずなのに、卒業式のときはちゃっかり 「映研在校生メンバー」として顔を見せているんですよね。あんな「手酷い裏切 り」をしておきながら、今さらどの面下げておめおめと戻ってきたのか!?学園 祭での「これからは私一人になっちゃうんですね…」という美鈴の涙は何だった のか!?映研の面子も、なぜ平然と受け入れているのか!?(笑)

最終話冒頭の、映像コンクール第3位の記念写真に端本が写っているので、 実は端本はかなり早い段階で映研に復帰していたことがわかります(164話で美 鈴と普通に友達づきあいしてたのも、アイドル部とはかけもちだったということ ですね)が、作者が「ものすごくいいコなところもある」と思っている、と述べ ている所からすると、端本の謝罪と和解の過程を描く構想もあった(けど、尺の 都合などでカットせざるを得なかった)のかもしれませんね。

あ、あと一つ、彼女の名字は「端本」なのか「端元」なのかいつもわからな くなります(笑)。(「東城」が「東條」や「東条」とごっちゃになってしまう ことは絶対ないのですが、そこはやっぱり向かう関心の量が(当然ながら)段違 いですね(笑))

真中について

よく非難の的になる彼ですが、私はわりと真中に対しては甘いです。ハーレ ム要素搭載のラブコメマンガの主人公である以上、複数の女の子に対していい顔 をし、態度をはっきりさせないのは原則としてやむを得なくて、そこに文句を言っ てもしかたないですから。

また、注目されることはほとんどないのですが、「女の子がひどい目に遭わ されそうになったときは、理屈抜きで体が動いて、自分を犠牲にしてでも守ろう とする」という所だけは文句なく美点として認めていい部分ですね。 ここは作中ではちっとも褒められないところなのですが、彼の名誉のために列挙 すると

という具合で、大体、女の子を守るためなら考える前に 体が動いている所は立派と言えるでしょう。小さい頃に唯を猛犬から守ったエピ ソードを考えると、これは真中に自然に身についている美点なのでしょうね。こ この所は、作者なりの「ジャンプ主要読者層の年齢の男子に目指して欲しいと思っ ている、ひとつの理想」が反映しているのかも(なぜか、向井が絡むときだけは 「痴漢に遭ってる向井に気づいたときは、痴漢には手を出さず、向井をかばうだ け」「変質者(と誤解した北大路)に追われているときは、変質者には手を出さ ず、向井をひたすら守るだけ」と、後先考えない積極性が薄れているのはちょっ と不思議)。

ちなみに、真中の美点に関して 作者が一生懸命「優柔不断だけど、気は優しくいい人」に描こう としているという評があるのですが、これはちょっと首を捻る評です。 真中の「優しさ」がクローズアップされている場面はあまりありませんし、最も 肝心なこととして、東城も西野も北大路も、真中が「優しい」から好きになった、 という描写にはなっていません(北大路は美鈴に「でも(真中は)やさしいよ」 と言っていることがあるのですが、あれは口先だけにしか見えません。北大路に 真中が好きである理由を言わせようとしたけど、適当な美点を作者がとっさに思 いつけなかったので、苦し紛れにそういう口実をでっち上げただけでしょう)。 真中の「優しさ」に惹かれたのは向井だけ(潜在的には唯も?)ですね。

さて、私が真中に対して甘いのは、いくつか理由があります。

まず1つは、あの終盤によって真中が本来より「得」をすることになったわけ じゃないんですよね。相手が東城だろうが西野だろうが、(あるいは北大路だろ うが向井だろうが)一途に自分を好いてくれるとびきりのかわいこちゃん(死語) と相思相愛の仲になれて、映画監督としての将来の夢への道も開けている、とい うポジションを手にする(しかも、おそらく大した努力もなしに・そして、それ までずっといろんな娘にフラフラし続けたことの報いをきっちり受けたり、最終 相手にちゃんと知られることなくウヤムヤにされたまま)ことは変わらなかった わけで、そういう点を以て真中を責める気には全然ならないです。

そしてもう1つは、私がこのマンガでは東城以外の要素ははっきり言って どうでもいいという人間なので(笑)、東城があんなにも 大好きだった真中のことをあんまりけなす気にはなれない、という事情 が大きいです。東城のあの想いが無意味なものだった、とは思いたくないので。 ですから、終盤の真中の 最低最悪な 言動の数々 も、基本的には「無理矢理路線変更したとばっちりで、 本来なら いくら彼でもとらなかったはずの言動を仕方なくとら『されて』いる」とい う見方をしていて、真中個人を非難する気はあまり起きません。

また、「忘れっぽさ」や「誠実さの乏しさ」というような点については、終 盤に入ってもそれまでと大して変わったわけではない………というか、それ までの方がむしろひどい(笑)ですからね。真中のそういう所 が真中と西野2 人の「カップルとしての価値」を著しく貶める要素であることは間違いない のですが、別にそれを材料にして真中を「個人的に」責める気はしていません。 そこを責めるなら、そもそもこの作品全体を責めなきゃ意味がなくて、終盤の展 開を持ち出すまでもなく、「こんな奴が出てくるこんなマンガはそもそも最低じゃ ん」で終わってしまうだけの話です。 例えばこんな風に。んで、それだとこのマンガの「終盤の」どこがひどいの か、という話としては、ポイントがずれているのですね。

上のリンクのような「作品全体を」否定する、というスタンスは、それはそれ で尤もなので、別にケチをつける気にはなりません(「真中がひどい奴」という ことはずっと以前からわかり切ってることなので、そんなマンガのこと を誰にも頼まれたわけでもないのに自分から読んでわざわざ 自分から好き好んで不愉快になりに行くという精神的不毛さは莫迦らし く思いますが)。ですが、もしこの作品に何か見るべき要素・価値を見出して何 か言おう、というスタンスならば、その「真中の人間性」については、一旦脇に 置いた上で話をしないと、そもそも一貫性というものがありません。

逆に言うと、そういう留保なしに「真中本人が本当に最低な野郎だ」と私が 思うとしたら、そのときは私は「そんな最低野郎と東城がくっつかなかったんだ から、(その過程はどうあれ)逆によかったよ」と、このマンガの終わり方を抵 抗なく受け入れられるようになるでしょう。なので、このマンガに対する不満や 執着がなくなるか、あるいは東城以外の要素(ストーリーマンガとしての完成度) が諦め切れないくらい大切で惜しく思える日が来ない限り、私が真中個人を本気 で嫌ったり、憎んだりすることはないはずです。

さて、よく「全然成長していない」と非難される彼ですが、そんなことはあ りません!第1話では、「懸垂告白がすごくイカしてる」と思い込んでいて センスに甚だしい問題があることを露呈している(大笑いする西野に「リ アクションが違うだろぉ!?ここは感動で涙を流すシーンのはずなのに!!」と 大真面目で抗議している)のですが、高2の西野誕生日では「今だから訊くけど、 西野なんであんな告白でオッケーくれたんだ…?」と、「あの懸垂告白はひどす ぎる」という真っ当なセンスがちゃんと身についています。これを精 神的成長と言わずして、何と呼ぶのですか!(笑)マッタク、「真中ニ成長ガナ イ」ナドト非難スル人ハドコニ目ヲツケテイルンデショウネ。コンナ立派ナ成長 ニモ気ヅカナイママデカイ口ヲ叩クナンテ、十年早イデスヨ。(←棒読み、虚ろ な目で)

冗談はさておき(笑)、さすがの私も、真中を弁護できない点はいくつかあ ります。まず、ノーブラ騒動のときの「いつだってそばにいてくれたはずの東城 が…/一緒の高校に来て一緒に映画も作って/それなのにそんなにその男のこと が好きなのか!?」はホントひどいですね。 https://minami-n.cocolog-nifty.com/diary/2005/04/100_0dd0.html http://dayann-d.pekori.to/diary/?date=20050209#p01 でもケチョンケチョ ンにけなされてますが(笑)、ちょっと前まで西野からの告白にニヤついて「ラ ブ・サンクチュアリ」には西野を誘おうと考えていたくせに、手の平を返したよ うに「東城は俺のもの」扱いかあ!?そりゃいくら何でもおこがましすぎだろ(笑)。 (それにしてもあの後、あれよあれよという間に西野への再交際要求とキスとい う取り返しのつかない深刻な展開に雪崩込んじゃうギャップの大きさは許せない ですね。いくら何でもそれはないだろうー!?)

それから、最終巻での加筆ページでの真中モノローグ、さりげなく紛れ込ん でますがこれはどうしようもなくひどいですね。「もう少し 高校生でいたいなんて/俺ってやっぱ甘いのかな…」何言ってんだお前!お前本 気で映画の道に進む決心したんだろ!?それが甘えを断ち切る決意をした人間の 考えることかー!(怒)それじゃあのカラオケボックスでのやりとり、全部 嘘だったことになるじゃないかー!!(怒)(怒)結局お前は西 野とその程度の想いでしか向き合ってなかったのかー!!!(怒)(怒) (怒)その程度の想いのために、お前は 東城を裏切って失意と絶望のどん底に叩き落としたのかー!!!!(怒) (怒)(怒)(怒)

これは、終盤の他のセリフと違って、「話の都合上」無理矢理言わされてる わけじゃないので、もう真中に対して直接怒りがわく部分ですね。どうしてこん ないい加減なモノローグ加筆したんですか、河下センセイ…(激涙)。

(それにしてもこの加筆モノローグは、西野に対しても とんでもない裏切り・不誠実の極みにほかならないはずなの ですが、何で西野派からは怒りの声が挙がらないんでしょう…。こういう所も、 「エンド」さえあればそれでいいかのよ うに見えてしまう所の一環です。)

キャスティング

ドラマ CD から始まったキャスティングなのですが、私は「能登麻美子の声 は東城に全然合ってない」と感じています(他の3人はともかく)。能登さんの 声自身は綺麗で素敵だな、と十分思えますが、彼女の声は「浮世離れしている」 んですよね(だから「妄想代理人」や 「地獄少女」でははまり役だと 思います)。一方東城は「現実離れした」キャラではあるけれど、作中の役どこ ろは「浮世離れしたキャラ」では全然ありません。ですから、CD ドラマにしろ、 ゲームにしろ、聞いてみたいという気がこれっぽっちも起きないですね。

ひとつはっきりしているのは、「能登さんに歌を歌わせちゃいけない!! 」ということですね。あれを「歌」と呼ぶのは日本語に対する冒涜 ですよ!(笑)いや、東城のキャラソンなんざひとかけらも聞いちゃいま せんが、他作品での惨状からイヤというほど底が割れています。あれは、適切な 表現を用いるなら「棒読みのお経に音楽が重なったもの」と でも呼ぶべきものですね。そんな、「歌がダメ」という所だけ東城と共通でも…(笑)。

さて、最初のドラマ CD の話を聞いたときにまず思ったことは、「そんなも ん、売れるわけがない!」でした。能登声が東城に合ってない(笑)のはおいて おくとしても、一番の売りである「絵」がないのに、そんなもん喜ぶ奴がいるの か!?と。特に、よくも悪くもパンツがなけりゃ この作品たり得ない以上、どうやってもパンツの表現のしようがない「CD ドラマ」というメディアでこんな企画を立ててどうすんの!?と思っていたんで すが…次々と続編が決まっていくのを見て、「そんなに順調に売れてるのか!? まさか買ってる連中は、買い続けてればアニメ化されるなんていうドリームを抱 いてでもいるのか!?テレビ画面でいちごパンツが見られることを期待し て!?!?ありえん!!!!」と否定し続けていたんですが、結局ま さかのアニメ化。この展開にはもの凄い敗北感を覚えました(笑)。

ゲーム版も廉価版として再発売されるそうで。「今更売れるあてなんかある のか?」とは思うものの、これだけ自分の予想が外れてしまうともうその見解に もさっぱり自信が持てません。

追記

ひみつけっしゃdaiseigo.comさん よりコメントを頂きました。 あ、でもあたしははまり役だったと思うけど、能登さんは。→舞- HiME(サンライズ)。アニメの話ばっかりでアレですけど、この中に出てくる雪 之(能登)が、幼なじみに呼びかける「はるかちゃん!(ていう人がいるんです よ)」っていうのが、「いちご」の東城(同)が主人公に呼びかける「まなかく ん!」っていうのと超同じいや、その雪之は私も見て(聞いて)ました が、「はるかちゃん!」とおんなじ調子でやってるだろうことが聞くからありありとわかってしまうからこそ、合わないと感じてるんですって ば!(笑)東城はあんな掴み所のない、フワフワした声じゃなくて、もっと明確 に像を結ぶ、優しくもキリッとした声であるはずだ〜(笑)。

この記事、原作についてはありがたくもほとんど同じ感想 と言ってくださってますが、詳しくはどの辺りが同じだったのかは気になるとこ ろです。無理矢理路線変更したことに見合うだけのス トーリーになってないところなら思惑通りですが、引き合いに出されている 元「ジャンプ」編集長へのインタビューの内容から考えると、 担当編集の力不足を推測している部分かな。

[2006, 4/12 再追記] 記事を書かれた方より、「終盤が 『東城の扱いが下げられる』話でしかなく、『西野が上がる』のではない所に違 和感を覚えた(大意)」と補足して頂きました。私の期待にむしろ近い感じ方で、 ほっと一息です。ありがとうございました。

河下先生に適した場

3年半の連載を終え、今頃河下先生は「夢の印税生活」(笑)を心おきなく 味わっているところでしょうが、読者として気になるのは「その次」でしょう。 何しろストーリーマンガとしてのプロット構築力 には甚しく疑問符がつく人なので(笑)、この人は「ジャンプ」にはあまり 向いていない可能性が高いです。そこで、折に触れ「河下先生の次回連載作には どんな場がふさわしいだろう?」ということをつらつら考えたりしていたのです が、先日、天啓が下りてきました。麻雀マンガです。→ と思ったら、まさかのジャンプでの新連載決定

麻雀マンガというのは、どんな話題であってもすべて麻 雀で決着をつける展開に持ち込まなければならない、という極めて特殊な世界で、 連載を継続するには、ストーリーにこれほどまでに極端な制約が課さ れても手を変え品を変え同じことを繰り返さなければならないという、普通のマ ンガとはちょっと違う方面の才能を要求されます。………あれれ、これ、どっか で聞いたような話じゃないですか?そう!3年半もの間、手を変え品を変え 延々とパンツと裸を繰り返して連載を継続したどこかのマンガと、非常に 構造がよく似ていますよコレ!(笑)

河下先生の「パンツが丸出しになっちゃったり、身体がムギュムギュ密着し ちゃうシチュエーションを不可抗力として手早くパパッと構築する手 際のよさ」は一貫して惚れ惚れするくらい鮮やかでしたが、この「無茶すぎるシ チューションをまったく悪びれず平然と構築する」才能と度胸は麻雀 マンガにはまさしくうってつけです。

しかも!しかもです!麻雀マンガなら、河下先生が大好きお色気描写が手加減抜きで描き放題ですよ!(笑)もう「少 年誌だから」とか「少女マンガだから」という理由で、セーブする必要はありま せん。あり余る力を、思う存分原稿用紙に叩きつければよいのです。今や「寸止 め」の必要もない!河下先生は檻から放たれた野獣と化す!(笑)

もし河下先生が麻雀マンガに進出すれば、必要以上に過剰に盛り込 まれたお色気と、「あれよあれよと言う間に不可抗力的に麻雀で決着 を付けることになってしまう」説得力満点のストーリーという2点において、 芸術的な技巧が凝らされたエピソードが連発され、大きな成果を収め ることは疑いありません。おまけに、麻雀マンガ誌は月刊や月2回刊ですから、 多少は話を考える時間に余裕ができ、ジャンプでさんざん馬脚を顕してしまっ た行き当たりばったりさも緩和できると期待されます。麻雀マンガを 描くために生まれてきた女、河下水希!という称賛を得るのも時間の問題 でしょう。

唯一の問題点は、先生の隠れた武器であるクサ いモノローグを生かすことができなくなってしまう(笑)ことですが、まあ そこは目をつぶってもらいましょう。

河下先生が連載持ってくれるなら、もう私 近代麻雀毎号買ってもい いですよ!(笑)「デスパイ」を描いた 島本和彦や、「トリツキくん」 を描いた高田裕三のように、週刊少年誌をホームグラウンドとしていたマンガ家 が麻雀マンガを連載した前例はありますし、その逆のパターンに近い能條純一や 福本伸行という例もあるわけですから、河下先生が他誌に描いたとしても何の問 題もありません。

おまけに、麻雀なら必然的に東南西北が出てきて、このマンガとの親和性も いいですしね!(笑)そればかりか、近代麻雀にはかつて「 勝手にジャンキィロー ド※注)」という「きまぐれオレンジ☆ロード」の パロディーが載っていたんですから、「オレンジ☆ロード」好きの河下先生にとっ ては運命とも言える縁だってあるのです!(笑)

さらにさらに、うまく行けば西原理 恵子みたいに、ちょっとした文化人のポジションに移れる可能性 さえありますよ!わぁいなんて夢があるんだ近代麻雀の女流マンガ家って!!(笑)

というわけで、竹書房の編集 者さんにおかれましては、是非とも河下先生にコンタクトを取って頂 いて、先生の次回連載作を自社で大々的に展開していく算段を立てて頂きたいと、 切に所望したい次第であります。

(以下、完全に余談: あ、そーだ島本先生、私「奈々 ちゃんスクランブル」の続きがすっごく読みたい(笑)んですけど、どこ かで続きを描いてくれませんか?読み切りじゃもったいないですよあれ!(笑))

「俺の流れ」だ、 というだけの理由で四暗刻が自摸れてしまうだなんて、 そんなバカな話があってたまるか!(笑)

[2007, 9/25] と思ったら、 再びジャンプでの新連載が決まっちゃいましたよ!竹書房での活躍は幻と終わり ましたか…惜しい人をなくしたものです死んでません )。

[2015, 8/10] え?誰ですか、「このマンガにそんなに腹 が立ったのなら、ムカフーン打法で昇華すればいいのでは」なんて言 うのは。いや、私の怒りの大きさからして、ムカフーン打法では処理しきれずに キャパシティーをオーバーしてしまうのは確実ですね(笑)。ムカフーンで何と かなる水準と言うと、高3合宿後からこっち、何の工夫もないまま超ド安直な展 開で東城と真中が順当に結ばれて終わっていた場合の西野派の怒りくらいまでじゃ ないですかね。その程度の小さな怒りと一緒にしてもらっては困ります(笑)。

日付ネタいろいろ

作中で描かれた時期が、連載時期と一致して 2002〜2005年だった、というこ とはすでに決定的 証拠が挙がっていますが、それ以外にも作中時期をほぼ絞り込める材料は存 在します。上記決定的証拠がある以上今さら大した意味はありませんが、参考ま でにご紹介しておきましょう。それは、日付と曜日の関係です。

まず、12巻 p.21 最終コマに、3月のカレンダーというでっかい手がかりが あります。これによると 3/1 は火曜日なのですが、さて、この条件に適する年 というと!!………………あれ?2005年じゃん(笑)。河下センセ、1年先のカ レンダーを作画資料にしてたんじゃないですか、このとき!?(笑)(いや、ア シスタントの落ち度という可能性も高いですけど)ちなみに、この前後で 3/1 が火曜の年と言うと、1994年まで遡るか、2011年まで下らないと見つからないで す(笑)。

それはちょっとおいておいて、次に 9巻 p.132 2コマ目です。コマの左端を よく見ると、9/14 が左端(週の始まり)になっていることがわかります。日曜始 まりのカレンダーだとすると、これは 2003年のものとちゃんと一致します(一方、 月曜始まりのカレンダーだとすると、2002年とも2004年とも合いません)。

そしてまた、p.138 の西野のセリフ「だって16日って今年平日なんだもん」 というのは、前年の 9/16 は休日だったことを強く示唆します。実際、4巻34話 では、「連休だからっていつまでも寝てないで起きなさい」と起こされ、学校に 行かず昼からトモコと買い物に行ってますから、休日だったことは間違いないで しょう。さらに、4巻 p.151 の携帯電話画面では 9/16 が月曜ですが、2002年だ と 9/15 が敬老の日の日曜で、9/16 が振替祝日だったことから、連休というこ とにも、曜日の観点からもドンピシャリです。2001年や2003年だとこうは行きま せん。

もう1点挙げると、9巻 p.167 にも携帯画面があって、そこだと 9/16 が火 曜日ですね。これも2003年にバッチリ合っています。

以上を考えると、やはり

高1 2002〜2003
高2 2003〜2004
高3 2004〜2005

と考えるのが最も妥当で、カレンダーの考察だけからこ こまで言えるわけです。

ただし、19巻 p.16 のカレンダーはまたちょっと変ですね。そこでの真中の セリフからするとこのカレンダーは2005年2月のもののはずですが、それだとこ れは土曜始まりというちょっとありえないようなものになってしまい ます。これは2006年2月の日曜始まりのカレンダーと合致していますから、やは りここも1年先のカレンダーをうっかり作画資料にしてしまったので はないでしょうか…。

ちなみに、年齢ネタでおかしいのは4巻27話の「なにをーっ!!あたしだって 15歳なりの魅力や色気が…っ」ですね。アンタもう16でしょーが(笑)。 東城は15だけど。この時点ではまだ北大路の誕生日を設定してなかったせいで、 こんな愉快な齟齬が発生しちゃったんですね(笑)。

あと、以前西野派の人の blog で気づかされたんですが、高1のときは、真 中が合宿から帰った日が西野誕生日 9/16 で、翌日の 9/17 は泉坂高は創立記念 日で休みになってたんですが、高3のときは 9/17 は休みでも何でもなかったで すね(気づかなかった…)。創立記念日はどうなったんですか、河下先生………!(笑)

入浴時の髪の描き方

togetter まとめ「ロングヘアの 女の子のお風呂シーン絵で男性作家か女性作家か分かるらしい【お風呂に入る女 性キャラが髪の毛をまとめてない問題】」を見て「おーなるほど」と思って 入浴シーンをざっと見返してみました。確かに河下先生は女性作家で、東城はい つも髪を上げてまとめてました。北大路はまとめてる時もあればまとめてない時 もある、というまちまちな描き方になっていましたが、これは彼女の「大ざっぱ さ」の描写になっていると思います。河下先生がこの違いを意図的に描いていた かどうかは不明ですが、無意識のうちにやったことだとしても、作者の心の中に 住んでいる北大路というキャラの表出として的確な演出になっているのではない でしょうか。

東城と北大路以外ははっきりとロングと言えるヒロインはおらず、他には髪 をまとめている描写はなかったと思います(ざっと見返しただけなので見落とし はあるかもしれません)。


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2024年04月24日