最終的に真中から選ばれたのは西野だったわけですが、この西野というキャ ラは真中との精神的なつながりに乏しいんですよ ね。西野はオウムのように「淳平くんが好き」と繰り返すばかり(それじゃ北大 路とおんなじだよ)で、かつて全然相性が合 わずに真中を振ったことの事情にこれと言った変化があったようには見えな い(それではまた同じことの繰り返しになるだけなのでは?その辺り、何の成算 もなく告白したのか?)ですし、真中の方はと言えば、再度つき合い始めてから も西野に対しては「お客さん状態」が抜けず、「西野は自分のどこがそんなに好 きなんだろう」と自問しつつ、自分より1歩も2歩も先を行っている西野に自信 なさげに引っ張られているだけ。これはもともと西野が東城の対抗馬として作ら れたキャラでしかないことが祟り続けていて、路線変更して西野とくっつけるこ とにした後もなお、作者がその頃の関係性を修正し損なっているわけです。
さて、だとするとこのマンガは最終的な狙いを「真中と西野の精神的結び付 きが達成されること」に定めて、そこに持って行くような展開にしなくちゃいけ なかったはずです。そのためにてっとり早いのは「東城をラスボス化する」こと で、つまり
未だ東城にも真中にも未練は残っていたけど、
『俺はこうこうこのように西野が好きで、だから東城ではなく西野を選んだ』
『あたしは淳平くんのことがこうこうこのように好きで、その部分が東城さんを 凌駕した』
という具体的なエピソードを経てラスボスを倒す
という展開にすればいいわけです。そうすれば、それは それなりにすっきりしたはずなのですが…
家庭教師のエピソードが盛り上がって、ついに東西最終決戦突入か!と期待 された回で、東城は自分からあっさり勝負を降りてしまいます。これはびっくり。
ラスボスを失ったこの世界では、勝利条件を達成するためにはもう、車田マ ンガばりに「俺たちの真の敵は東城なんかじゃない、『 あのお方未だに相手のことを深く理解しよ うとしない、臆病な自分の心』だったんだー!」という方向にでも持って行って 無理矢理まとめるしかないんですが、結局それはうやむやになっちゃってるんで すよね。
作者としてはたぶん、「あのカラオケボックスの『その後』で2人はついに 本音で喋り合えるようになりました。めでたしめでたし」ということにしてくれ、 と思っているんでしょうが、でもその具体的な描写からは逃げちゃってるので、 読む方の期待感はどうにもこうにも置き去りにされてしまっている。
別に西野とくっつけることにしたんならそれはそれでいいから、遠慮せずに ベタベタでラブラブな描写にすればよかった(と言うかしなきゃいけなかった) のに、グズグズ躊躇ってばかりなもんだから、どーにも読んでてすっきりしない んですよ。本命の東城を振ってまで西野を選んだ・選ばれたはずなのに、 真中と西野の思 いはすれ違うばかりで全然心が通じ合ってるように見えない。こっちはただ のパンツマンガを読んでるつもりなのに、一体全体どうしてまた、 「こいつら、つき合ってても全然幸せそうじゃないし、幸せになれそうもないじゃ ん?」なんて思わされる鬱な展開につき合わなきゃいけないんですか(笑)。
他に終盤の不満点と言うと、
などが挙げられます。これらはまた後述していきます。
この辺の終盤の行き届かなさを一言で言い表せば、 作者がストーリーマンガにしようと欲をかいたん だけど、やり損なっているということにつきます。もともと「彼女に振られ て家に帰ったら、ベッドに幼なじみが半裸で寝ていました」という気の狂った(笑) マンガなので、もう最後までずっとパンツパンツで押し 通せばよかったんですよ!(笑)なのに、何を考えたのか終盤のエピソー ドではパンツを封印してまでストーリーマンガにしようと不可解な努力を費し、 最後は強引に「爽やか青春もの」だったかのような雰囲気を漂わせようとまでし ています。
最終巻で、恋のすれ違いの不条理な部分を描くことを意識していたことをコ メントしていましたが、やっぱりそうだったのかー!(笑)そんなご 立派なお題目は、もっとちゃんとしたストーリーマンガに任せてお けー!!(笑)所詮は「ただのパンツマンガ」に過 ぎないこのマンガで、そんな「深み」を目指してどーする、と私は言いたい。もっ と安易で、安直極まりないベッタベタのオチこそがこのマン ガにはふさわしいし、それこそがパンツマンガとしての本分を全うする道だった (ヤな本分だ)のに、何だって河下水希はそんなあさっての方 向を目指しちゃったんでしょーか(笑)。
ジャンプ系感想サイトをちょっと覗いてみた感じでは「最後は無理矢理なエ ロもなく、意外に爽やかに終わりました。河下先生お疲れさま」みたいな 無難な感想が主流だったのですが、いやみんな騙されてるよそれ!? (笑)場合によっちゃ「成長物語として優れていた、挫折を乗り越えて 築かれた美しい絆と、貫き通した愛に感動」みたいな勢いで称賛する動きさえ見 られるのですが、どう見ても そんなご大層な賛辞がふさわしいマンガじゃないだろこれー!!(笑)
まあ、意外な高評価については、これまでさんざん志の低い パンツマンガ的展開に繰り返し付き合わされ ていたストレスから思いがけなく解放され、「もう、あの頃のことはあまり思い 返したくない」というような心理が働いてしまったのはわかります。マンガとし ての欠点はこれまでにいやと言うほどけなしてきたから、今さらほじくり返すの も大人気ない、それよりは最後だけはまあ気持ちよく読ませてくれた作者の意を 汲もう、という判断が働いたのもわかる。「問題点を指摘する」という、誰にで もできる締め方じゃありきたりだから、ちょうどうまい具合にそれを避けられる 展開になった以上、それに乗るのはある意味当然、という事情も理解できます。 ただ、だからと言ってあっさり「終わりよければすべてよし」で済ましちゃった らやっぱり作者の思う壷なんじゃないの?
…と疑問に思っていたのですが、
やっぱり同
じように感じていた人もいました。…いやいや、ダマされちゃ
駄目だ。っていうか、コレ、いちごの中身の話、全然してないよ!
よかった、
私ひとり感性がおかしかったわけじゃないんだ(笑)。いろいろ指摘されてる点
も的確な部分が多く、やはり、「誰がエンディングをかっさらって行ったか」と
いうある意味どうでもいい話とはまったく別に、「ストーリー
マンガとして何かが非常におかしかった」という話をしなけりゃウソ
ですよ!という思いを強くしました。
他には、2006年の1月になってから登録された この辺りの評 が、きちっと言うべきことを言っている、珍しくまともな評だと思います。その 後もときどき手が加えられているようですね。