原案小説雑感

第5巻

この巻の見所は、高田とつき合いながらも徐々に宏樹に魅かれていく涼、 そして涼と泉の対決ですね。

部員勧誘大作戦

まずは、涼と仲直りを試みる宏樹ですが、あっさりと無視されてます。こ お、アニメ版の絵と声を思い浮かべて読んでみてるんですが、「ふんっ」とい う感じでそっぽを向く涼と、思惑を外されて戸惑ってる宏樹の姿が、絵に描い たように想像できて楽しい(笑)。

さっそく練習をサボって作戦を開始する早乙女と斉藤ですが、涼をエサに したこの2人に、コロッとひっかかってますね、宏樹は(笑)。相当涼のこと が気になっているようです。原案小説の段階から既に、女にはだらしなかった のか(笑)。

原案小説だと、宏樹はバッターだけでなくピッチャーとしても超高校級だっ たんですね(しかも左投げ)。これが5巻以前に明らかになっていたかどうか はちょっと覚えていないんですが、ちょっと意外でした。

アニメ版では、涼と宏樹のライバル性を高めるために、宏樹は打者に専念 させることにしたのでしょう。原案小説中でも、宏樹の投手としての資質が生 かされるシーンというのは、7巻まで では存在しなかったように見えますし。

それに、個人的には、涼クラスのピッチャーはごく少数に限っておかない とちょっと興ざめな所があります。ピッチングは涼と同程度、バッティングは 涼を遥かに凌駕する、なんてキャラがいたら、主人公の存在感が小さくなって しまう、ということからも、アニメ版での設定変更は正解だったと思います。

さて、ここで、涼と金城、早乙女、斉藤、泉は同じ1−Bの生徒だという ことがわかります。しかしですよ。

涼の口から出た山本宏樹という名前の事が気になっていた。昨日、入学したば かりで、何故宏樹のことを知っているのだろう、と。
そりゃあ、泉さん、甲子園で準決勝まで行けば世間的には有名になってるで しょうし、名前くらい知っていても全然おかしくないのでは(笑)。

木戸と理事長の怒りも収まってめでたしめでたし。予定をキャンセルして まで合同練習を見に行こうという理事長の入れ込みぶりは凄いですね。やはり、 アニメ版のあの理事長のもとになっただけのことはあります。

オリエンテーリングで斉藤はいきなり歌い出してます。アニメ版では陽湖 はわりとおミソ扱いだったけれど、原案小説ではこのように機転も効くし度胸 もある、という具合に、かなりいい扱いを受けてますね。アニメ版での設定変 更で最もワリを喰ったのは、陽湖かもしれません。

それにしても「明応女子のヒロインは私一人で充分よ」とは、しょってま すな、泉さん。

涼 v.s. 宏樹

いよいよ涼対塾高野球部の対決!一般部員をキリキリ舞いさせる涼はやっ ぱりかっこいいですねー。主人公はこうでなくっちゃ!球速も、145 キロとは 大したものです。ついに涼の本気の投球を目の当たりにした宏樹も、対決に燃 えています。

初戦は、涼の球をヒット性の当たりに持っていった宏樹と、橋本のファイ ンプレイのおかげで打ち取った涼との痛み分け、という所でしょうか。伊達氏 の頭の内に思い描かれているであろう、これから先長きにわたる涼と宏樹の戦 いの幕開けにふさわしい、力の入った展開だったと思います。

それにしても、ダイビングキャッチ+3回転で宏樹の打球をもぎとった橋 本(=ユキ)の身の軽さは、原案小説の頃から既に表れていたんですね。

そして握手する握手する涼と宏樹。涼は宏樹に異性の魅力を感じてドキド キしてますね。くそう、顔のいい奴は何をしても許されるとでもゆーのか、涼(笑)。 2人が仲よさそうに触れ合うのが気に入らない泉が2人をくさし、涼と泉は1 週間後に対決と相なります。この辺りが、アニ メ版8話の展開の元なんですね。ただ、泉が涼に喰ってかかる動機が違っ ている訳ですな。

お嬢様の特訓

宏樹に打撃コーチを依頼する泉が、宏樹とキスするのを「偶然にも」目撃 してショックを受ける涼。同時進行で、高田ともイチャイチャしてるくせに、 この浮気ムスメめ(笑)。

まあ、自分でもそれを自覚はしていて、翌日の登校時に宏樹を避けたりし てますから、ここは許してあげましょう、うん。

それにしても、この「偶然」ってのがまたいつも通りの黄金パターンで、 こんな定番の展開を、いけシャアシャアとしてやってのけるプリ9という作品 は、やはり「凄い」の一言です!(誉めてるんですってば!!)

宏樹の手ほどきを受けて特訓を始める泉ですが、やっぱり最初はテニスウェ ア姿なんですね(笑)。またも「明応のヒロインは私一人で充分」などと心の 中でほざいてます(笑)。あーそーですかそーですか。

しかし、天に二物を与えられた泉は、手を血マメだらけにしながら、4日 で140キロの球が打てるようになります。これは凄い。アニメ版では、宏樹の コーチで、僅か一晩でバッティングをマスターしたことになっていて、リアリ ティーは全然ありませんでしたが(※それが悪いと言ってる訳ではない)、 「4日」という数字には、なんとなく説得力が感じられます。いや、何か根拠 がある訳じゃなくて、単に「運動神経抜群の人なら、そういうこともあるんじゃ ないか」というただの「感じ」に過ぎませんが。

涙の対決

桂が涼に、泉に勝つように言ってますね。原案小説でもアニメ版でも、桂 =桂子は誇り高い人物として描かれています。

挨拶する宏樹にそっけなく振る舞いつつも、ベンチの宏樹の視線が気にな る涼。遠くから見つめる高田に気付きほっとする、と、乙女心は複雑ですね。

そしていよいよ涼と泉の対決!何と涼はフォークまで投げられるとは!! これにはさすがにたまげました。カーブやシュートならともかく、この歳で フォークなんて高度な変化球まで投げるには誰か指導者が必要だと思うんです が、これは東海電気の長瀬から教わったんでしょうかね。

しかし、泉はまたもテニスウェアで打ってますね。お嬢様、やっ ぱりあなたちょっとヘンです(笑)。

さて、ここで涼は泉の流血に気付き、その背後にあったのであろう猛練習 を思いを馳せて、わざと甘い球を投げます。これを読んで、アニメ版でずっと 気になっていたことがやっと「ああ、そういうことだったのね」と合点が行き ました。

別ページでも書いたことですが、ア ニメ版で涼がいずみにわざと負けた理由は、極めて説得力に乏しい、いい加減 なものだったと思います。なぜあんないい加減な展開になってしまっていたの か、残念に思うと同時にその理由が不可解だったのですが、要するに、原案小 説での展開を「形だけ」なぞったからあんなことになっちゃったんですね。

原案小説の展開も、涼の変心が唐突すぎるきらいはあるのですが、それで もこれなら涼がいずみに勝ちを譲る理由は十分解ります。自分一人がみっとも なさをひっかぶって我慢すれば、他人には深刻な影響は波及せずに済むことで すしね。

また、アニメ版では木戸が涼の手抜きに気付いたのかどうかが描いてなかっ たのですが、原案小説ではちゃんと気付いてて、ここもほっとした点です。気 付いてたとすれば何も涼に事情を聞かないのは変だし、気付かなかったとすれ ば、木戸の野球の実力に大きな疑問符がつく所ですから、どちらにせよアニメ 版には大切な描写が欠けています。

やはり、原案小説に比して、この部分がアニメ版で完全に換骨奪胎されて しまったことには、声を大にしてアニメ版の制作者に不満を申し上げたい。涼 といずみの間に、抜き差しがたい因縁を持たせたかったことは理解できますが、 それを実現する手段を、もっとよく検討して頂きたかったです。

お嬢様の決意

宏樹に真相を告げられ、桂に諭される泉。テニス道具を燃やし、涼と本当 の意味での勝負をする決意を新たにします。この部分も、アニメ版の原型になっ てますね。

という所で5巻はおしまい。ああ、新入部員の白井、古河、吉川の3人に ついて全く触れられなかった(笑)。とりあえず、マネージャーの吉川が寧々 の原型になったのでしょうが、だとするとアニメ版でずいぶんと「出世」を遂 げたものです(笑)。あんなにも登場頻度の多いキャラになるとは。

※どうでもいいこと:

4巻では「レフトの斎藤」だったは ずのエミリーが、5巻では「センターの斉藤」になってましたね。ポジション と名字が共に変わってしまったのは………やはり、伊達氏が細かい設定を詰め 切っていなかったということなのでしょう(笑)。


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2001年2月 9日