原案小説雑感

第4巻

新たなメンバー

さてさて、早乙女と金城に引き続き、新たなメンバーが登場してきました ね。大谷ゆかり、橋本真実、斎藤エミリーの3人です。橋本はユキの、斎藤は 陽湖の原型であることは間違いなさそうですが、大谷はアニメ版に対応するキャ ラがいるのかどうかよくわかりません。野球に関し、かなりの実力を持ってい る所は加奈子を思わせもしますが、加奈子に比べるとだいぶ勝気な性格で、初 登場時に涼とロクに会話もできず走り去ってしまう内気な加奈子とはかけ離れ ています。

ここで、アニメ版と原案小説でのナインの対比表を作ってみましょう。※ [2000, 6/5追記]打順については、この番号は 守備位置を表すものである可能性が高い。 第7巻雑感参照。

アニメ版・原案小説版 ナイン対比表
アニメ版小説
ピッチャー1番
いずみサード?番
ヒカル(対応キャラなし)
ユキ橋本ショート6番
聖良早乙女ファースト3番
小春(対応キャラなし)
陽湖斎藤レフト9番
真央金城キャッチャー2番
加奈子(大谷?)(セカンド)4番
寧々吉川
対応キャラなし → 白井、古河
(最後の吉川、白井、古河は原案小説第5巻に登場)

第5巻での展開も合わせて考えると、 どうやら原案小説では9人全員にスポットを当てることはせずに、うち7人に 関してのみ描くことになるようですね。

ポジションや打順の違いも面白いですね。まず、涼がいきなり1番という のが目を引きます。アニメ版では当たり前のように9番に回されていた涼でし たが、原案では打棒も評価されているようです。代わりに9番に回ったのは、 レフトの斎藤です。ソフト経験者なのに9番…というのはちょっとひっかかり ますが、どういうことなのでしょう?

また、金城のキャッチャーで2番、というのもちょっと異色ですね。アニ メ版と違って、最初っからキャッチャーがいるため、涼はキャッチャーの心配 をしなくて済んでいます。となると、「木戸が『団体戦に強い』という真央の 資質を見抜いた」という点はアニメ版オリジナルなんですね。これはなかなか よかったと思います。

それから、4番の地位が泉のために空けられているのかと思っていたら、 そうではないようです。今後地位交替があるのかもしれませんが、少なくとも 当初は「大谷4番体勢」で木戸は行くつもりだったようですね。

ところで、大谷・橋本・斎藤が、原案小説第1巻で予告された、残り3人 の野球特待生なのでしょうか。作中で示された、特待生の勧誘時期を見てみる と、大谷と斎藤は、どうもそうらしいことがわかります。しかし、橋本が特待 生なのかどうか、どうもよくわかりません。

大谷・斎藤と違って、橋本は、計画が動き出してから木戸が昔のチームメ イト・陣内に連絡を取って捜し出した人材です。となると、橋本は、涼たちよ りも遅れてから勧誘をうけたはずで、涼が面接を受けた時点ではまだ特待生に 決まってはいなかったと思われる所です。

ところが、この4巻では橋本は「2月上旬」に明応進学の打診を受けたこ とになっているんですよねえ。涼とほぼ同時期です。おそらくこれは、原案小 説執筆時の設定が未整理だったのでしょう(笑)。

では、この3人について個別に見てみましょうか。大谷は、CD Vol.1 で触 れられていた、ヤクルト野村監督をモデルとした人物の娘ですね。作中でも、 父親は「ヤクルト監督」になっていました。

また、橋本は孤児だということになっていましたね。これが紆余曲折を経 て「フィーフィーちゃんを唯一の心の支えとする孤独な電波少女」になったの でしょう。同じく CD Vol.1 によると橋本には「遠大な構想」があるようなの ですが、それは一体何なのでしょうか…?原案小説6巻までの時点では、それ らしいモノに思い当たりません。[2000, 4/23] 追記 結局、7巻集録分まで読んでも解りませんでした。

あるいは、続編のプロットの中にその遠大な構想は含まれているのかもし れませんね。橋本からユキになって設定がだいぶ変わったので、続編が作られ たとしてもその遠大な構想が生きる余地が残っているのかどうかはわかりませ んが、それを確かめる上でもやはり続編を見てみたいものです。

陽湖は、バタ臭い顔立ちではあるものの日本人ではあったみたいでしたが、 斎藤はずばりハーフでした。(陽湖も、「実はクォーター」なんて裏設定があ るのかもしれませんけれども)「男作って逃げ出した母親」みたいな設定を、 NHK 向けにマイルドにする調整が行われた結果かと思います。

あと、タレント志望でありながらもソフトボール経験があり、野球特待生 としてスカウトされた上に、他のメンバーに伍する基礎体力はちゃんと備わっ ている、という辺りは陽湖と全然違いますね(笑)。この辺は、陽湖のキャラ を立てるためにアニメ版では設定の改造が施されたのでしょう。野球に対して あまり熱心でない、という所は陽湖にも名残が残っています。

新学期

アニメ版では春休みのうちから既に練習が始まりましたが、原案小説では 入学式の日が練習初日になっています。この点に関しては、アニメ版の方が熱 心に野球に取り組んでますね(笑)。更にアニメ版では、新学期までに聖良と 小春をスカウトし、寧々の入部を得ましたが、原案ではとくにそういう事件は なく入学式を迎えます。1巻にちょっと出て来た思わせぶりな警備員が、つい に「竹内」と名乗りましたが、結局これといった意味はなかったようですね。

そして、原案小説でもやっぱりウマが合わない涼と泉の初対決です。これ は、アニメ版3話のシーンの原型ですね。アニメ版では性格的な面からいずみ に対して何かと精神的に劣勢に立つことの多かった涼ですが、原案では結構余 裕しゃくしゃくな所も見せてくれて安心です。アニメ版ではいずみにイジめら れる・られそうになる度に、ハラハラして気を揉んでいましたから(笑)。

木戸とナインの初顔合せは、アニメ版とは逆に、威厳ある鬼監督として登 場しましたね。ただのヨッパライと勘違いされてヒカルに追い出されそうにな るアニメ版とは大違いです(笑)。

また、木戸が実戦で名采配をふるうことができるかどうかは原案小説上で 注目していたポイントの一つでしたが、どうやら原案小説は実戦はほとんど行 うことなく幕を閉じてしまう模様です。ちょっと残念。できたら、アニメ版ス タッフには、木戸をしっかりと切れ者に描いて欲しかった所ではあります。そ の方が、石井さんもよりやりがいがあったことでしょう。

理事長

今回の会議シーンは理事長の見せ場です。白紙のハッタリで校長の造反を シャットアウトするとはよくやった、お見事!アニメ版の中盤以降でも、これ くらいの威厳と存在感を示して欲しかった、という所は残念です(もっとも、 理事長ばかりが目立って主役がその掌の上から出られないようではまた困るこ とも確かなんですけれども)。

諍い

木戸のスパルタぶりに反発した大谷が、ナインを煽って反抗を企てますが、 意外や意外、早乙女は「命令されるのは嫌い」とは言いつつも、木戸に反旗を 翻すつもりはないみたいですね。やはり、聖良と同じく、口では反抗的なこと を言いながらも、実は木戸を信頼して惚れている、ということなのかもしれま せん。3巻のいきさつを考えるとなおさらそう思えます。

また、フラフラしている(笑)陽湖と違って、エミリーは割と主体的に動 く、頼りになるキャラでもあるようです。これはなかなか興味深いですね。

痴漢騒ぎ

宏樹が痴漢に間違われて、涼にとっ捕まってますね。アニメ版とはまた違っ た形での、「少女マンガの王道」をつっ走ってます。こういう展開を臆面もな しに堂々とやれる所はさすが。

後になってみれば、これも涼と宏樹が接近するきっかけの一つになってい る訳ですが、しかし、高田とつき合っていたはずなのに、5巻以降では宏樹に も結構簡単に魅かれて行ってて、こんなに気が多い娘だとは意外でした(笑)。


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2004年7月 6日