原案小説雑感

第3巻

金城と早乙女

まずは、選手確保に乗り出す木戸。ほほう、彼は旅館の板前をやっていた んですか。そして何と、傷害事件で服役していたとは!さすが原案小説、いろ いろと刺激的な設定でつっ走りますねえ。しかも、原案小説では木戸は結構男 前のようです。自分でももてる方だと思っているんですか。ああそうですか、 これは参りました(笑)。

野球部戦力として泉に目を付けるのはアニメ版と同じですが、「理事長に 任せておけば何とかなるだろう」って、そんな無責任な………ほらやっぱり断 られてる(笑)。

そしてついに、涼と泉以外のナインが顔を見せ始めましたね!トップを切っ て登場するのは、早乙女 京香と金城 理恵の2人。それぞれ、聖良と真央に対 応するキャラです。

早乙女についてはまた後で触れますが、小学校の時に首位打者取った、と いう強打者ぶりは、アニメ版では小春に引き継がれたのかもしれませんね。つ まり、早乙女は聖良と小春の2人の原型だったのかも。

アニメ版では話の展開を早くするために、真央は柔道部特待生ということ になっていましたが、原案小説だと金城は特待生でも何でもありませんね。確 かに、アニメ版見た時に「そうやたらと特待生がいてたまるか(笑)」と感じ ました。

女子柔道部といったら、女子野球部ほどではなくとも珍しい存在のはずで す。そんなマイナーな部にまで特待生がいるとなると、如月女子にはスポーツ 特待生がわんさか溢れ返っている、ということになりそうなものですよね。学 校の規模から考えて一学年の人数はそれほど多くないはずですから、下手をす ると、特待生の方が一般生徒より多い、ってなことにすらなりかねません(笑)。 という訳で、特待生待遇を安売りしない原案小説には一安心しました。

お熱いカップル

何と、涼と高田がいきなりキス!(笑)結構ふたりとも積極的ですね。そ こに至るまでの過程が自然だったので、好感の持てるいいキスシーンと言える のではないでしょうか。

これに比べると、アニメ版の涼はずいぶん奥手…という印象もありますが、 実は意外とそんなことはありません。確かに、高杉の側から行動を起こした時 は受身の行動が目立ちましたし、誠四郎の心中にも全く気 付いていないお鈍ちゃんでしたが、それほど親しくもないうちからクッキーを 焼いて持って行ったり、「明日が高杉の誕生日」と聞いて思い立ったその日に ハンカチの刺繍を縫い上げたり、と、なかなか積極的な行動に出る娘なんです。

一方、もう片方のカップル、宏樹と泉もキスしていますね。小学校の頃の 話ですが(笑)。しかしまあ、ずいぶんと味気ないキスです。おまけに「ガム の味」とはこりゃヒドイ(笑)。

でもって、宏樹の方が涼や泉より一つ年上だということがわかりました。 なるほど、これなら超高校級スラッガーの評が定着していたのもわかります。 すでに一度、実績を残していた訳ですね。アニメ版では、まだ一度も高校野球 界でプレーしたことがないにも関わらず、最初からそういう扱いを受けていて すこーしだけながら不自然な気がしていましたが、これなら納得です。

一方、アニメ版で高杉と涼を同年齢にしたのにもメリットはあって、こち らは2人の対決の期間が3年間取れる、という点が嬉しい所です。原案小説版 では、涼が3年になった時宏樹は卒業していて、その1年間は公の場での対決 はありえないんですよね。

個人的なつき合いでは恋人同士の2人が、試合では火花を散らす敵同士!っ てのは大変燃える好シチュエーションなので、これをアニメ版続編ではうまく 盛り上げて欲しい所です。

謎の経歴

さて、早乙女京香の経歴にはよくわからない点があります。文中で描かれ ていることを時間順にそのままならべてみると、

母親の自殺→リトルリーグの監督(父親)を殴る→リーグをやめる
ということになります。

さて、作中ではあまり詳しく語られていないので、なぜ母親は自殺したの か、とか、なぜ急に「野球なんかやる人、バカばっかりだから」と野球を憎む ようになり、父親を殴ったのか、という肝心な点がよく解りません。最も平凡 な解釈は、「野球にばかり熱中し、家庭を省みない父親に絶望した母親が自殺 してしまい、それで野球と父親と憎むようになった」というものですが、いく ら家庭を省みなかろうと、リトルリーグの監督業に熱中していたくらいで、自 殺までするものでしょうか?どうも、母親の自殺の原因は他にあるような気が します。

また、高見クリニックでの木戸と院長のシーンを思い出してみましょう。 ここは、相変わらず詳細な事情は読者に伏せられていますが、木戸と院長のや りとり、行動が、異様に緊迫しているように感じられます。医師としての守秘 義務がある院長が、初対面の相手に患者のプライバシーを漏らすというのは尋 常ではありませんし、

という記述も、やけに大げさで思わせ振りです。

そして、CD Vol.1 の伊達氏の文章にある、「とてもテレビアニメでは描けな いような際どい設定」という言葉。もちろん、「会ってまだ2度目の木戸をホ テルに誘う」というような、奔放な行動を指してのことかもしれませんが、そ れにしても表現がやや過激なような感じがします。

ここから先は私の想像になりますが………。実は、早乙女はレイプされて いたのではないでしょうか?それも、自分の実の父親に。そのことが母親の知 る所となり、母親は自殺。早乙女も、事件直後には思い留まったものの、母親 が自殺するに至り、「自分はまだしも、母を死に追いやったことは許さない」 と、父親を殴ってリーグを退団…というシナリオなら、ここまでの疑問点に色々 と頷ける所が出てくるのですが。→[2000,2/8 追記] 第6巻付属の原案小説で、この予想が裏付けられました。

その他

桂が英彦ならぬ達也の写真を入れたのは、ペンダントではなく手帳だとい うことになっていますね。アニメ版では、いずみが持っていたその写真を、偶 然涼に見られる、という展開にする必要があったために、ペンダントに変更に なったのでしょう。

疑問その1: ラスト近くの、桂が池内達也の消息を調べさせたときの記述 だと、彼は12年前に死んだことになっている。ということは、そのとき涼は3 歳。しかし、1巻では、涼が3歳の時に達也はグローブを買い与え、その2年 後に胃癌で死亡、ということになっている。うーむ?

疑問その2: 木戸は池内の結婚式の写真で孝子を見たことになっている。 しかし、どうして木戸はそんな写真を見る機会があったのか?ただでさえ木戸 は高校卒業後池内と疎遠になっており、その上、事件後に、池内は関係者とも 連絡を断ち、ひっそりと暮らしていたはずである。


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2004年7月 8日