2016年開設された河下(桃栗)先 生の twitter アカウントは、当初は開設時の発言通り現連載の宣伝専用に 使われていたのですが、最近になってそれ以外の話題もチラホラ見られるように なってきました。そこで、本コーナー的に興味を惹かれる話題については、随時 てきとーに取り上げて行こうかと思います。
話は変わっていちご100%の裏話。
— 桃栗みかん/河下水希 (@m_momokuri) 2017年4月12日
東城のキャラデザは当時の担当さんが信じていた「男は黒髪セミロングで優しい女の子が好き!」という意見を元に作りました(いえ、私もそんな気しますが)
一方つかさは私が勝手に作ったイレギュラーなキャラなのですが、実は彼女にはモデルがいるのです…→
え、東城のキャラデザって、担当の意見も何もりりむそのまんまじゃ ないですか…(笑)。まあ、ここで河下先生が「キャラデザ」って言ってるのは、 話の内容からするとビジュアル面のことだけじゃなくて、性格も含めた「キャラ クター創り全体」のこと、ということなんでしょうかね。
そして西野についてですが、「モデル」というから実在の人物がいるのか!? と当初ややテンションが上がりましたが…
→私はその頃、拙著「あかねちゃんOVER DRIVE*」というマンガを気に入っていて、あかねちゃんの髪の毛を少し短くした姿がつかさのビジュアルになったのです!(ちなみに性格は全然違うけど)
— 桃栗みかん/河下水希 (@m_momokuri) 2017年4月12日
※20年前に描いたドタバタTSもの。全2巻だよ!(あれ、CM?)
というわけで納得。確かにあかねと西野のキャラデザに は明確なつながりが見てとれますね。
どこかで書いた気もしますが、ビジュアルはさておき、序盤の頃は担当さんのつかさに対する性格の要求が厳しくて(結構掴みにくい性格なので)苦労したなぁという記憶があります。
— 桃栗みかん/河下水希 (@m_momokuri) 2017年4月12日
私が生んだキャラに「違う」って何だよ!とヤケクソ気味にネームを描いていたのも今ではいい思い出…
ああなるほど!このコーナーでもちょくちょく言 及している、JC7巻のおまけページの「性格がつかみにくくて苦労している難産 キャラ」というのは、単に「自分の中の漠然とした感覚が『こんな性格じゃ ない』とダメ出ししてくる」というわけ(だけ)じゃなくて、「当時の担当編集 者が思い描いていた性格を」掴むのに苦労していた、ということだったのですね! なるほど、それならば西野が(特に再 登場後は)まったく何の中身のない出来損ないの木偶人形だったことにもよ り合点が行きます。西野というキャラの内面は最初っから河下先生の 中にはどこにもなくて、一から十まで「外付けの」ものだった のですね。それであんなに徹頭徹尾、まったく内面というものが感じ られない、紛い物のがらんどうキャラになってしまっていたというわけですか。 納得が深まりました。
結構驚きなことに、河下先生ご本人は速筆ではないという認識をお持ちでし た。
というわけで私が速筆という噂?について。
— 桃栗みかん/河下水希 (@m_momokuri) 2017年6月8日
正直全く速筆じゃありません!週刊連載の頃は速筆にならないと原稿が仕上がらなかったので頑張って速く描いていただけです。あの頃妥協していた部分を今は描き込んでしまうため、すっかり遅くなってしまいました(あと年齢的なものもあるし…)
謙遜ではなくて、本当にそう思ってらっしゃる節が感じられます。ただ、確 かにいちごの連載初期の頃はカラー原稿なんかにイマイチのものがちょくちょく 見られる感じでしたが、連載終盤に入っ てからは、やはり尋常じゃない分量の仕事を、連載原稿の質を落とさず並行して 仕上げていたと言えるのは間違いないと思います。一口に「速筆」と言って もその内実は色々ありうるとは思いますが、少なくとも今述べたような意味で河 下先生が「大量の仕事を、短期間に上げていた」という評価は客観的に見ても適 切なものだと確信できます。
でも女の子1人じゃラブコメ的に寂しい、そこで新たな女の子キャラを登場させる。主人公はその子にフラッと想いが揺らぐ(じゃないと第2ヒロインが魅力的に見えないから)。だけど主人公はその子と結ばれちゃダメ。なぜなら初期から登場してる第1ヒロインと結ばれなきゃ不誠実な主人公になっちゃうから。
— 桃栗みかん/河下水希 (@m_momokuri) 2017年11月12日
その理屈通りだとすると、最終ヒロインを西野に変更してはいけなかったは
ずなのに、何でそんなことをしたのか?…というのは重大な問題ですが、それは
ひとまずおいておきます。一般論としてなら、第1ヒロインと結ば
れなきゃ不誠実な主人公になっちゃう
とは必ずしも言えなくて、それは固定
観念に縛られた考え方だと思います。やり方は色々あるでしょう。うまく実現で
きれば達成感もあるでしょうし、そういう困難な目標に挑戦することにやりがい
を覚える作家さんも少なくないと思います(河下先生がそういうタイプかどうか
は別として)。
ただ、この作品の場合はその変更の仕方が余りにひどかっ た。相手の不誠実さが原因で自分から振った 相手に、理由もなく無条件でぞっこん惚れ込むという支離滅裂な展開を延々と続 け、しかもその手当てをするでもなかったまま、真中のことを「あんなにも」 恋い焦がれる理由に満ちあふれていた東城から真中を無理矢理引き剥がして、 真中を「そんなにも」好きになる理由など皆 無な西野に着服させるような見るに耐えない惨劇を繰り広げた… という点は(たとえ週刊連載という過酷な舞台で先の見えない舵取りをしなけれ ばならなかったことの結果論であったとしても)弁解の余地なく非難されるべき ことだと思います。しかもその過 程で西野は何の努力もせず、ただご都合主義という名の神輿に担がれて東城を 「出し抜かせてもらった」だけという、目をそむけたくなるような悲惨で貧 弱な物語構成でした。それは、12年以上経った今でも弁護することはできません。
河下先生も、どうせツイッターで触れるなら、そういうもっと肝心な点 について背景などに触れて欲しいのですが…。
い●ごキャラも読んでるよ!よろしくお願いします pic.twitter.com/h48u8kLr7a
— 桃栗みかん/河下水希 (@m_momokuri) 2019年1月5日
東城が「実はマンガ家もちょこっと夢見たことがある」と言ってるのは驚き ました。本編では(East Side Story も含め)そんな話はまったく出てこなかったはずですから。 これは、「実は河下先生はそう考えていた」という裏設定なのでしょう(たぶん、 本人的には些細な話で、別に「裏設定かどうか」なんてことは考えてもいなかっ たんだと思います)。
そして、「群青にサイレン」の主人公って、東城が自分を重ねて見られるよ うなタイプのキャラなんですね…。そう知ると、読みたい気もちょっとだけ湧い てきます。
たしかに東城もバイオリン習ってそう…!(でも下手っぽそう…)
— 桃栗みかん≪群青にサイレン≫河下水希 (@m_momokuri) 2019年6月23日
これも「作者の内面に住んで いるキャラクター」像が垣間見えますね。河下先生にとっては、東城という のはそういう所のあるキャラなんですね〜。
ぼかし取って!というリプありがとうございます。よくこんなんレベルで仕事してたな自分ってくらい下手すぎてお見せできません。そしてボツった話なので面白いワケがない
— 桃栗みかん/河下水希 (@m_momokuri) 2020年11月16日
この後「軸が何もない」との意見を戴き「映画好きな少年と小説家を志す少女」という設定と眼鏡とおさげをプラスしましたとさ
最終巻後書きでちょこっと触れられていた初期構想ですね。この段階ではま だ東城の外見の特徴である眼鏡とおさげはなかった、ということが確認できたの は収穫です。この時点では顔以外にもりりむと通じる所があるキャラだったのか もしれません。
東城エンドを描いて欲しいというお声を今もたまにいただきます。以前はそういうの全く信じない人間でしたが、ここ1年で「あるだろ…パラレルワールドとか世界線の移動とか…」とすっかり不思議大好きっ子になりました
— 河下水希 (@m_momokuri) 2021年11月29日
と言っても描かないです。各々の心の中で思い描いていただければ幸いです♂
河下先生自身に「描かない」という意思があるということが明確に表明され たのは初めてではないかと思います。単に「(描いてもいいが)適当な媒体がな い」などの消極的な事情ではないわけですね。「信じる・信じない」の話になっ ているのはよくわかりませんが…(最終回の後、真中が「西野を選ばなかった世 界」に移る、というような話を想定している?)
河下先生が、「あれは読者に対する、特に東城に肩入れして読んでいる読者 に対する重大な裏切りだった。西野派に対し安易に迎合しただけの大失敗だった」 という認識を持ってらっしゃらないことはやっぱり極めて残念ですね。多少なり とも東城派読者に対する負い目を感じて、「償いをしなければならない」という 考えを持っていただければと思うのですが…。少なくとも、そういう願望を持つ 権利くらいは我々にはあると思います。
[2023, 5/21] それに、各々の
心の中で思い描いて
じゃやっぱりダメなんですよ。河下先生が描いたも
のだけが「本物」なんですから。理想の結末を各々の心の中
で思い描いて
いるだけでは意味がないからこそ西野派はあんなにも狂乱的に西
野を最終ヒロインにするよう要望していたんだし、河下先生もそれがわかってい
たからこそ遂にはその意向に応えて結末の変更に応じてあげたわけでしょう?だっ
て各々の心の中で思い描いていただければ幸いです
で済むん
であれば、あくまで元々の予定通り東城の想いが成就する締めくくり方で西野派
の熾烈な意向をサラっと無視しても何の問題もなかったはずなんですから。
だから、「東城版分岐ストーリー」を描いていただきたいんですよ、先生。 お願いします。繰り返しになりますが、仮に東城メインになるとしても「続編」 はいりません。途中からの「やり直し」以外に価値はないです。すでに16年が経 過しましたが、河下先生の気がまた変わることを望みながら、更なる16年を待ち たいと思います。
このツイートには、「東城版ストーリー」に対して、西野派と思しき人から の反対意見( その1・ その2)が付いてますね。いや、「続編」でそうなることに反対するならわ かるけど、途中からの「分岐ストーリー」だったら文句付ける筋合いはないでしょ う…。
河下先生が「描かない」と言う理由には、西野派に対する配慮があるのかも しれません。しかしそんなのはもう気にする必要はない、と私は思っています。 最終ヒロイン変更は、西野人気の余りの高さによって作者の意図に反して無理矢 理決められたもの、という推測のもとで以下は書きますが、彼らに迎合して結局 それに見合うだけの「見返り」がありましたか?
河…桃栗先生が本心から描きたい(描き続けたい)と願っていた「群青にサ イレン」の存続が思わしくなかった時に、こんなツイートがありました。
私が描く男の子キャラには興味ない方が多いと思いますが、一所懸命描いてるので読んで欲しいよ群青にサイレンhttp://you.shueisha.co.jp/reading/mobile/js_gunjyou.html
— 河下水希 (@m_momokuri) 2017年12月15日
このツイートにも反応は鈍く、結局連載は打ち切りとな りました。ツイッターで桃栗先生をフォローしている分だけでも、西野派全員が 購入していれば、おそらく連載継続に十分な人数に達していたでしょうに。
結局、彼ら西野派(まあ、「ツイッターで桃栗先生をフォローしている分」 に限定しておきましょうか。一応)が反応するのは河下先生が西野の絵を投下す る時(https://twitter.com/m_momokuri/status/893919077269356544 とか https://twitter.com/m_momokuri/status/1012371948406370304 とか https://twitter.com/m_momokuri/status/1151141426157146112 とか)だけ で、彼らの大勢にとって価値があるのは西野であって河下先生ご本人では ない。そういう機会に池の鯉が餌に群がるかのごとくワーッと寄ってきて食い漁 り、その場限りの感謝の言葉を残してそれで終わりなんです。河下先生にはあく まで「西野の供給源」としての有用性しか認めておらず、それ以外の関心などな いも同然なんですよ。
自らの意向に反して本来の結末を覆すという禁じ手まで犯して連中の希望に 応えたというのに、それと引き換えに得られて然るべき支持は一番肝心な時に返っ てこない。これっぽっちの得にもなっていないばかりか、「西野供給機」扱いを 受けている。だったらもう、そんな連中に配慮してやる必要なんかどこにも ないんじゃありませんか?当時、担当編集者に「西野派読者に対する裏切 りになるから、あの結末が揺らぐようなことは、匂わせるだけでも決してするな」 と固く念を押されたのかもしれませんが、もう西野派には十分義理は果たしたで しょう。別に、一度描かれた結末をなかったことにする必要はなくて、あれはあ れで残しておいてももちろん構いませんが、それを「唯一にして欲しい」などと いう西野派になぞまったく気兼ねせず、「東城版分岐ストーリー」を作ってくだ さったって、なーんにも問題なんかありゃしませんよ、河下先生。そんなことを 裏切りかどうか気にする必要はないですし、そもそも「裏切り」と言うほどのこ とでもありません。
20年前の作品なのに知っててもらえて、そしてコスプレまでしてもらえて嬉しいです!どうもありがとうございます
— 河下水希 (@m_momokuri) 2022年6月8日
そしていちご100%、もっとコスプレ向きなデザインの制服にすればよかったなあ〜っていつも反省してしまいます
河下先生は、自作のコスプレイヤーに、配慮してあげればよかった、と思う くらいには積極的肯定感を持っていたんですね。そういう関心は非常に乏しいの かと(勝手に)思ってました。
それはさておき、
過去作品を一切振り返らない性格
とのことだったので、
「反省」というものはしないようにされているのかと思っていたのですが、そう
いうわけでもないのですね。河下先生、この作品への「反省」に抵抗がないので
あれば、もっと肝心な「内容」についても当然ながら反省なさってくださいませ
んか?読者の多数派と編集の要望に安易に迎合した結果、作品の芯となる部分を
完全にぶち壊しにしてしまったことは、決して打ち消すことのできない大失敗で
した。反省するんであれば、まずその読者に対する余りに大きすぎる裏切りをこ
そ反省していただきたいです(まだ表明してないだけで、内心はもう反省されて
いるのかもしれませんが)。
そしてその反省に立った上ですべきことと言ったら、必然的に導き出される のは「読者への償い」です。それ以外にありえません。「群 青にサイレン」も終わった今こそ、東城に本来与えられるべきだった祝福された 結末を、今度こそ描いてはいただけないでしょうか。
※ああ、でも、リンク先を改めて見返してみると、当時から「反省」する作 品はあったのですね。ならばなおさらいちごについても、表面的な反省に留まら ない、抜本的な反省(とそれに基づく行動の実践)をお願いしたいです、河下先 生………。
ああ…この感覚が……なるほど… https://twitter.com/aeolic_guardian/status/1649152587650977792
— 河下水希 (@m_momokuri) 2023年4月20日
うん、その感覚は割と近いと思いますよ。河下先生。これをきっかけに、東 城派への救済に傾いてくださると嬉しいのですが。この気づきをもたらした元ツ イートは GJ です。
一方、
こっちは共感できませんが、まあ人それぞれ。じゃあ、東城が真中と結ばれて欲しいかってーとなんかそれはそれで違うんだよなあと。難しい。
— えどわう (@aeolic_guardian) 2023年4月20日