裏山の宇宙船/星のダンスを見においで

いずれも、私の評価は低い作品です。しばらく前に新装版が出ましたが、そ のラインナップがこの2作だったのにはガックリでした(ファンの方ごめんなさ い…)。「こんな失敗作を復刊するくらいなら、 スターダスト・シティを何とかしてくれ!」というのが、私の偽らざる気持 ちです。

裏山の宇宙船

「嵐の明けたある日、裏山からぽっかり顔を覗かせていたのは…」という滑 り出しは魅力的だったんですが、上巻と下巻で主人公が完全に切り替わってしまっ たのが大きなマイナス点。

上巻では文がストーリーの中心にいて、余りやる気のない昇助その他をグイ グイ引っ張っていた(そして、そこが魅力的だった)のですが、下巻に入るとそ の役割は昇助がとって替わり、無茶なことには何事も昇助が挑み、他の面子はそ れにつき従うだけ、という話になってしまいました。

ARIEL の所でも書いた通り、笹本作品の特徴とし て、「猛烈に頭が切れ、口が減らずに大胆な行動力で困難な状況を困難とも思わ ず切り開く」タイプのキャラの存在があり、それが大きな魅力のひとつでもあり ますが、逆に、そういうタイプのキャラにべらべら喋ってグイグイ行動してもら わないとうまく話を進められない、というのがおそらく笹本先生の限界でもある のでしょう。下巻を書くためにそういうキャラに頼る必要があった所、文では備 えている科学知識の量が不足でその役には不適で、必然的に昇助にその役が回る こととなったため、主役が文から昇助に移ってしまった、ということなのではな いでしょうか。下巻では文が単に昇助に引っ張り回されるだけのキャラになって しまったのは非常に残念でした。

終盤の展開もモロに「E.T.」とかぶってしまって新味に乏しく、私にとって は「せっかくのいい素材を生かせず、無駄にしてしまった」残念な作品でした。 上巻で期待していただけに、余計落胆も大きかったです。

星のダンスを見においで

これまた、上巻では大いに期待させられながら、下巻で裏切られた作品です。 「笑う大海賊の秘宝」というネーミングや、そこに込められた謎のイメージは非 常に魅力的で、登場人物も生き生きと動いていた(特に、ジャックや海賊相手に 一歩も引かず張り合っていた唯佳はよかった)のですが、肝心かなめの「秘宝」 の正体があんなショボいものだったとは…。

蛮勇を承知で言えば、「生まれて初めて『えすえふ』というものを読んで、 すっかりかぶれてしまったどっかの中学生が、一時的にはしかみたいな創作熱に 取りつかれて思いつきと勢いだけで書き上げた小説モドキに投入した、自分だけ は傑作と思ってるアイディア」みたいなもんじゃありませんでしたか、あれって? (アニメ版「OUTLAW STAR」の「銀河の龍脈」の正体もトホホでしたが、あれと 丙丁つけがたい…)

あと、個人的に非常に不満だったのが、イラストが全然こなれていないこと で、アングルや、登場人物の顔にものすごくぎこちないものが多々あったのは大 いに興醒めでした。北久保弘之氏は、アニメに関してはいい腕をお持ちであると しても(そして、BS アニメ夜話 で見せる朴訥な喋りは和みますけれども(笑))、この小説でのイラストレーター としての仕事は遺憾ながら「これで金取っちゃいかんだろう…」と申し上げざる を得ない水準だったと思います。


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2007年10月8日