複葉の馭者(バーンストーマー)

朝日ソノラマが店じまいしてしまい、母体の朝日新聞社から「ソノラマノベ ルズ」ブランドで加筆・修正されて改題の上再刊行された1冊です。

旧作の発行が1991 年というのは、私の印象に比べて新しく、意外でした。何 となく「もっと以前、ARIEL スタートといくらも変わ らない時期にどさくさ紛れに出した1冊」という印象を(勝手に)持っていたの ですが、全然そんなことなかったんですね。実際には ARIEL 6巻と7巻の間に出 てたのか…。その頃ならばもう十分笹本作品の魅力に取り付かれていた頃だった はずなのですが、当時は私、朝日ソノラマ方面の情報収集をあんまり熱心にやっ てなかったんですね、きっと。知らないうちに刊行されていた…という所なんで しょう。

そう言えば以前は ARIEL の新刊発行も、「当日の新聞広告」でやっと初めて 知る、なんてことが度々だった記憶がありますが、当時はまだそんなもんだった かもしれません。

内容は、笹本先生らしい小気味のいい展開が続き、いつも通りの「地の文の 疾走感」も申し分ありません。欲を言うと、相棒のレミイの出番が第2話では非 常に少ないのがもったいないですね。ジョニーとレミイの掛け合いは、もっと見 たいです。

レミイの話ばかりで申し訳ありませんが(笑)、彼女とジョニーが知り合っ てから商売を始めるまでの話も読んでみたいですね。断片的に語られる事情から すると、作者の頭の中にはかなり具体的なエピソードが存在していると思うので すが。愛読者カードが挟まれていないのは残念です。

しかし、ゲシュペンテスト号の乗組員は、異様に失神しやすいですね(笑)。 いや、まあ、そうしなくっちゃ話にならないのは解っているんですが、あんなに 簡単に殴打でバタバタ失神するなんて!とニヤリとしてしまいました(笑)。

※ ジェーンがジャックに「特殊相対性理論がモデルにし た空間は?」と尋ねてるのは、たぶん笹本先生の勇み足ですね。Minkowsiki 空 間のことを想定してるんでしょうけど、特殊相対性理論は、もともとは Minkowski 時空をモデルに建設された理論ではありません。Einstein が最初に 特殊相対論を提唱したときは Minkowski 空間のことなどまったく登場もせず、 後になって Minkowski が「特殊相対性理論とは、このような性質を持った 4 次 元空間上の、幾何学的理論として解釈できる」ということを見出したのです。

「ジェーンは、そういう細かいことは知らず知ったかぶりをするような娘」 という演出として意図的に選んだセリフ、という可能性もなくはないですが、や はり笹本先生自身がご存じなかったんだと思います。これって旧版でもあったセ リフなんでしょうか?


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井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2007年10月14日