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Legendre 多項式で表される確率・その2

\(\newcommand{\floor}[1]{\lfloor #1 \rfloor}
\newcommand{\Bfloor}[1]{\Bigl\lfloor #1 \Bigr\rfloor}
\newcommand{\kumiawase}[2]{{}_{#1}\text{C}_{#2}}\)
前回の話の、その後の展開である。周囲にまとめを配ったところ、いくらかの反応を頂くことができ、ちょっと考察が進んだ部分がある。

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Legendre 多項式で表される確率

\(\newcommand{\floor}[1]{\lfloor #1 \rfloor}
\newcommand{\Bfloor}[1]{\Bigl\lfloor #1 \Bigr\rfloor}\)
だいぶ以前の話だが、「サイコロを \(n\) 個振るときに、1 の目と 6 の目が同数だけ出る確率」について考えたとき、ちょっと面白い非自明な結果が導けたことがある。この確率を \(p_{n}\) とすると、実は Legendre 多項式 \(P_{n}(x)\) によって
\begin{equation}
\label{eq:legendre}
p_{n} = \frac{1}{\sqrt{3}^{n}} P_{n}
\biggl(\frac{2}{\sqrt{3}}\biggr)
\end{equation}
と表せるのだ。(Legendre 多項式は規格化の選び方で定数倍の違いがありうるが、ここでは
\[ P_{n}(x) = \frac{1}{2^{n}n!} \frac{d^{n}}{dx^{n}}
\bigl\{(x^{2}-1)^{n}\bigr\} \]
で定義され、\(P_{n}(1)=1\) で規格化されているものとする)

この式、導いたはいいが結果(と、それをちょっと拡張した式)しかメモっていなかったため、この度久々に過程を再現しようとしてかなり手こずってしまった。何となく、それほど高度な変形をしたわけではなかった感覚が残っているので、当時の私はおそらく「その気になれば再現は難しくないはず」と軽く考えて途中の計算を処分してしまったらしい。ところがいざ取り掛ってみると苦心惨憺。「拡張した式」を手がかりにして、多少は扱いやすい等価な関係式に帰着する所までは行けたのだが、そこから先がにっちもさっちも進まなくなり、最後に「泥臭いしこれまでの計算の感触からしてうまく行く見込みは乏しそうな手だけれども、もうこれくらいしか思いつく手段がない」という方針をダメ元で試してみたところ、思いがけずすんなり計算が進んでやっとこさ示すことに成功した、という有様だった。いやはや、結果だけでもメモっておいてよかった。さもなかったら、(私にとっては)永久に失われた式になってしまった所だった(笑)。

以下では、このような確率を考えようと思ったきっかけと、どのようにしてこのような表式に至ったのか、そしてこの結果からのちょっとした考察等、\eqref{eq:legendre}にまつわることを色々と書いていきたい。