ガロア群の要素と複素共役の類似性

\(\DeclareMathOperator{\Gal}{Gal}
\newcommand{\field}[1]{\mathbb{#1}}
\newcommand{\Q}{\field{Q}}
\newcommand{\R}{\field{R}}
\newcommand{\C}{\field{C}}
\)
方程式論で現れるガロア群の変換というのは、複素共役とよく似ているのだが、このことに触れている解説というのは思ったより少ないようだ。(※ 例によって、ガロア理論の解説に網羅的に目を通しているわけではないので、あんまりちゃんとした根拠のある発言ではない。ただ、私が見た範囲内ではほとんど触れられていなかったので、「厚くて詳しく書いてあるような書籍でないと言及してないのかなー」という印象はある)もちろん、類似性は重々意識しつつ、全体の分量とのバランスを考えて盛り込むのは見送った、という筆者の方も多いだろうが、ここでは「書く分量に制約を受けない」という web の利点を生かして、私なりに「複素共役との類似性」について書いてみようと思う。

まず、複素共役の持つ性質をいくつか挙げてみる。
(1) 実数を固定する。 \(z \in \R \implies \overline{z} = z\)
(2) 逆に、固定される値は実数。 \(\overline{z} = z \implies z \in \R\)
(3) 四則演算に対し透過的。
\begin{align*}
\overline{z \pm w} &= \overline{z} \pm \overline{w} \\
\overline{z \times w} &= \overline{z} \times \overline{w} \\
\overline{z \div w} &= \overline{z} \div \overline{w}
\end{align*}
(4) 実数係数の代数方程式では、どの解と共役な数も解。 \(f(X) \in \R[X] , f(\alpha)=0 \implies f(\overline{\alpha})=0\)
これらの性質は、ガロア群の変換にもほぼそのままの形で受け継がれている。そういう意味で、ガロア群の変換は「ガロア共役演算」とか、短く「ガロア共役」と呼んでもいいくらいだ。

(1)〜(4)に対応する、ガロア共役演算の性質は以下のようになる。ここでは、ガロア群の定義や個々の性質の証明は述べないので、なぜこんな性質がなりたっているのかの詳細について、検索等で直接このページに来て知りたい方はガロア理論入門ノート と本 blog の他の記事を参照願いたい。

\(\sigma\) がガロア群 \(\Gal(L/K)\) の元であるとき、
(1′) 体 \(K\) の数を固定する。 \(x \in K \implies \sigma(x)=x\)
(2′) \(\sigma\) のすべてで固定される数は \(K\) の数。 \(\forall \sigma[\sigma(x)=x] \implies x \in K\)
(3′) 四則演算に対し透過的。
\begin{align*}
\sigma(x \pm y) &= \sigma(x) \pm \sigma(y) \\
\sigma(x \times y) &= \sigma(x) \times \sigma(y) \\
\sigma(x \div y) &= \sigma(x) \div \sigma(y)
\end{align*}
(4′) \(K\) 係数の代数方程式では、どの解とガロア共役な数も解。 \(f(X) \in K[X], f(\alpha)=0 \implies f(\sigma(\alpha))=0\)
といったことがなりたつ。複素共役と違って、ガロア共役演算 \(\sigma\) は一般に複数あるので、(2′) は単独の \(\sigma\) ではなく、すべての \(\sigma\) に対する不変性が要求されるようになっている。

また、ガロア群には、次のような性質もある。
(5′) ガロア共役な数は、\(K\) 上共役な数。 \(\sigma(\alpha)=\beta \implies \text{$\beta$ は $\alpha$ と $K$ 上共役}\)
(6′) \(K\) 上共役な数どうしを結ぶガロア共役演算が必ず存在する。\(\text{$\alpha$, $\beta$ が $K$ 上共役} \implies \exists \sigma[\beta = \sigma(\alpha)]\)
これらは、複素共役の場合は自明だったことが、ガロア群の定義の仕方のために、「ガロア共役」と「\(K\) 上共役」が概念上分離されたために別途述べる意味が出てきたことになっている。

一方、複素共役の性質のうち「2度行うと元に戻る。\(\overline{\overline{z}} = z\)」は、ガロア共役には受け継がれていない。それと関連がある性質は、「ガロア共役演算の全体は群をなす(合成について閉じている)」である。群である以上単位元が含まれているから、ガロア共役演算は必ず恒等写像 \(\text{id}\) を含んでいるが、この文脈で言うと、今挙げた複素共役の性質というのは「恒等写像とペアにした \(\{\overline{\phantom{\alpha}}, \text{id}\}\) が群になっている」と言い換えられる。先ほど述べた通り、ガロア共役は多数(3つ以上)の要素からなることがしばしばなので、単純に「2度行うと元に戻る」とはならずに、代わりに「合成について閉じている」という性質に拡張されている、と見ればよいだろう。

例えば、3次方程式 \(X^{3}=2\) の場合は、ガロア群は恒等写像を含め \(6\) つの変換からなっていて、それらを解 \(x_{1}=\sqrt[3]{2}\), \(x_{2}=\sqrt[3]{2}\omega\), \(x_{3}=\sqrt[3]{2}\omega^{2}\) に作用させると \(6\) 通りの置換すべてが現れるようになっている。\(6\) つの変換は \(\Q\) の数はすべて固定し、逆にその \(6\) 通りのすべての置換に対し有理数係数の有理式 \(F(X_{1}, X_{2}, X_{3})\) の値が不変だったら、その値は有理数と言える。また、\(6\) 通りすべてが四則演算に対し透過的で、その結果として、\(\alpha \in \Q(x_{1}, x_{2}, x_{3})\) が有理数係数方程式の解だったら、\(6\) つの共役値 \(\sigma(\alpha)\) がすべてその方程式の解となる、と言えるようになっている。さらに、\(\alpha\) と \(K\) 上共役なすべての数 \(\beta\) に対し、\(\beta=\sigma(\alpha)\) となる \(\sigma\) が必ず存在する。

なお、ガロア共役演算は、具体的には原始要素を \(K\) 上の共役元にうつす変換として実現されているので、その観点からは (1′)〜(4′) は当たり前の性質だ。しかし、複素共役との類似性をこのように明示しておくことは一応意義のあること(明示しておかないと見過ごしてしまいそうなこと)だと思うので、こうやって書いてみた次第だ。

で、「こんなことを考えて何の役に立つのか」だが、例えば、こんな話はどうだろう。大学で線形代数を学ぶとき、大抵は行列の成分を実数 \(\R\) や複素数 \(\C\) の数として理論が展開されるだろうが、一般には体 \(K\) の数を成分とする行列を考えることができる。行列の演算は、成分で見れば四則演算だけで表されているから、四則演算に対して閉じている集合の要素なら何でも行列の成分とすることができるからだ。さて、\(K\) 成分の正方行列を考えるとき、当然その逆行列というものを考えることができる。もちろん、成分が \(\R\) や \(\C\) でなくなっても逆行列の成分を表す表式に変化があるわけではなく、行列式を用いた表式がそのまま使える。ということは、\(K\) 成分の正方行列が逆行列を持つなら、その成分もすべて \(K\) の数という性質がなりたっている。

さて、今この性質は「行列式による逆行列の成分の表式」という、割と示すのに手間のかかる高度な(と言うほどのものではないが、まあ「初歩的」ではないと言ってよかろう)知識の帰結として導いたわけだが、実はそういう知識を使わなくても、もっと簡単に示すことができる。それを示すのに「共役」が利用できるわけだ。

モデルケースになるのはやはり複素共役である。「成分がすべて実数の正方行列 \(A\) が逆行列 \(A^{-1}\) を持つなら、\(A^{-1}\) の成分もすべて実数である」という事実は、次の2つから容易に確認できる(ここでは、全体集合を複素数成分の正方行列全体にとっている)。

複素共役について \(\overline{AB} = \overline{A} \overline{B}\) がなりたつ
逆行列の一意性: \(AX=XA=E\) をみたす \(X\) は、\(A\) に対して(存在するなら)一意に定まる

実際、\(A\) が実成分のとき \(\overline{A} = A\) だから、\(AA^{-1}=A^{-1}A=E\) の両辺の複素共役をとると
\begin{align*}
\overline{A}\overline{A^{-1}} &= \overline{A^{-1}}\overline{A} =
\overline{E} \\
\therefore A \overline{A^{-1}} &= \overline{A^{-1}} A = E
\end{align*}
となる。これより \(\overline{A^{-1}} = A^{-1}\) が言え、よって \(A^{-1}\) は実成分の行列である。

まったく同様の議論が、複素数の任意の部分体を成分とする正方行列の場合も、ガロア共役に関してそのまま成立するのは直ちに見て取れるだろう。つまり、\(K\) が \(\C\) の部分体とすると、\(K\) 成分の正方行列の逆行列は、存在するなら \(K\) 成分、と言える。

複素共役とガロア共役の類似性はまだある。どちらも、「ベースとなる体にとって『見分けがつかない』数どうしを入れ替える変換」になっているという点だ。

(ここで「見分けがつかない」というのは誤解を招く表現かもしれない。これは別に「さっきまで \(a\) だった数が \(b\) と区別がつかなくなって、ごちゃ混ぜに処理・変形等をせざるを得なくなる」といったような否定的な意味ではない。そういう意味ではずっと首尾一貫して「区別」をつけ続けることは何の問題もなく可能である。もう少し紛らわしくない書き方を選ぶなら、「ベースとなる体にとって『対等』な数どうしを入れ替える変換」と言えばいいだろうか)

まず、複素共役の根幹にある虚数単位 \(i\) とは一体何だったか、大元に立ち返って確認してみよう。元々、
\begin{equation}
\label{eq:23-1}
x^{2}=-1
\end{equation}
に解があると考えて、\(\sqrt{-1}\) を \(i\) と置いたのが「虚数」の始まりだった。しかしこの \(i\) の定義には、ちょっと曖昧な点がある。

方程式\eqref{eq:23-1}は、その形から解は2つあり、\(\pm a\) の形になる。今何の気なしに「\(\sqrt{-1}\)」と書いているが、果たして2つの解のうちどちらが \(\sqrt{-1}\) なのだろうか?

これが、もし根号の中身が正だった場合は、2つある平方根のうちどちらを \(\sqrt{A}\) と書くのかの約束がちゃんとあって、曖昧さはなかった。

\(A>0\) の場合、\(A\) の平方根のうち正の方を \(\sqrt{A}\) と書く

というのがその約束だった。

ところが \(\sqrt{-1}\) のように、根号の中身が負になってしまうとそうは行かない。その場合は平方根が実数でなくなり、「大きさ」(数直線上での左右)の概念がなくなってしまうため、「正の方」「負の方」のように一方を一意に特定することができなくなってしまう。つまり、2つの平方根のうち、どちらが \(\sqrt{-1}\) なのか?を、正負などの大小関係に基づいて決めることはできない。

「正負や大小以外の、何か別の尺度に着目することによって、この場合もどっちがどっちかきちんと区別できるのではないか?」と期待する方もいるかもしれないが、それはできない。少なくとも、現在の数学の標準的な取扱いでは、そこに区別がつくような尺度を導入するということはしていない。つまり、どちらか適当な方を \(\sqrt{-1}\) すなわち \(i\) と置き、もう一方を \(-i\) と置く、という立場をとる。

「そんなことをしたら、人によって \(i\) と呼ぶものが変わってしまう恐れがあって困るじゃないか。私が \(i\) と呼んでいるものが、君の \(-i\) だったりしたらメチャクチャになって話が完全に破綻しちゃうだろう?」と心配する人もいるだろう。その懸念は、半分は正しい。まさしく、誰かが \(i\) と呼んでいるものが、他の誰かが \(-i\) と呼んでいるものかもしれない、という状況になっている。しかし、それで何も矛盾は起きないし、誰も困ったりはしないのだ。

こう考えて欲しい。\eqref{eq:23-1}の2つの解は、「実数の世界」から見ると完全に「対等」であり、実数と \(i\) だけからなるいかなる関係式においても、\(i\) と\(-i\) を入れ替えた式が無条件で常に成立するようになっているのだ。これは無論、複素共役に関するお馴染みの性質そのものである。\(i\) と \(-i\) は実数の世界から見れば「2乗すると \(-1\) になる」という性質(のみ)で特徴づけられる完全に対等な2数であり、入れ替えに関する完全な対称性を持っている、ということだ。

両者は、「区別」(見分け)はつくので、一度一方を \(i\) と定め、もう一方を \(-i\) と決めた後ならその命名は以後ずっと維持され、途中まで \(i\) だったものが知らないうちに \(-i\) にすり替わってしまうようなことは起きない。このように、一人の人間の用法内で \(i\) と \(-i\) の区別が一貫している限り、別個の人間の間で \(i\) と \(-i\) の定義が入れ替わってしまっていても何も問題は起きない。そう言えるのは、上述の「完全な対称性」があるからだ。

複素共役変換とは、このように「実数から見て対等な数どうしを入れ替える」変換である。ガロア共役変換でも、これと類似の関係が成立している。

ガロア共役変換で、複素共役での \(i\) に当たるものは何だろうか。\(i\) というのは、実数体 \(\R\) には属さないが、実数係数の多項式 \(x^{2}+1\) の根にはなっている、という数だった。ガロア共役の場合は、「ベースとなる体 \(K\) には属さないが、\(K\) 係数の多項式の根にはなっている数 \(\alpha\)」がそれに当たる。

では、\(K\) から見て \(\alpha\) と「対等」な数は何だろうか。単純に考えると「\(\alpha\) がみたす \(K\) 係数の多項式の根」となりそうだが、これではちょっとまずい。\(i\) の場合、「\(i\) がみたす \(\R\) 係数の多項式」というと、\(x^{2}+1\) だけでなく \((x^{2}+1)(x-2)\) なども該当してしまい、これだとその根は \(\pm i\) だけではなくなってしまう。不適な多項式を除外するためには、「最小多項式」を考えればいい。\(i\) の \(\R\) 上の最小多項式は \(x^{2}+1\) だから、「最小多項式の根」と限定すれば \(\pm i\) のみになる。\(\alpha\) の場合も、「\(\alpha\) の \(K\) 上の最小多項式の根」、つまり「\(\alpha\) と \(K\) 上共役な数」が \(\alpha\) と「対等」な数、ということになる。実際、ここでは \(\alpha\) がガロア共役演算でうつる数を「\(\alpha\) と対等」としたいわけだから、こういう定義になるのは当然と言える。

この「対等性」を実感してもらうために、ちょっと高校生に戻ったつもりになって、こんな問題を考えてみよう(現在高校生以下の方は腕試しと思って取り組んでみよう)。

\(\alpha\) は \(\alpha^{7}=1\), \(\alpha \ne 1\) をみたす複素数とする。\(\beta = \alpha + \alpha^{2} + \alpha^{4}\) とおく。
(A) \(\overline{\alpha^{k}} = \alpha^{7-k}\quad (k=1,2,\dots,6)\) を示せ。
(B) \(\beta + \overline{\beta}\), \(\beta \overline{\beta}\) を求めよ。
(C) \(\beta\), \(\overline{\beta}\) を求めよ。

順に考えていこう。
(A) 仮定より \(\alpha\) は \(1\) の \(7\) 乗根であり、\(\alpha \ne 1\) なので虚数 \(7\) 乗根になっている。よって、複素数平面上で、\(\alpha\) は次の図の正 \(7\) 角形の黒丸の6個の頂点のどれかである。
complex
図の円は原点中心、半径 \(1\) の円になっている。黒丸の配置は実軸に関して上下対称だから、\(\alpha\) が6個の黒丸のどれであっても、\(\overline{\alpha} = \alpha^{-1}\) である。すると例えば
\begin{align*}
\overline{\alpha^{2}} &= \overline{\alpha}^{2} = (\alpha^{-1})^{2} =
\alpha^{-2} \\
&= \alpha^{7}\alpha^{-2} = \alpha^{7-2} \quad (\because \alpha^{7}=1)
\end{align*}
が成り立ち、同様の計算によって \(\overline{\alpha^{k}} = \alpha^{7-k}\quad (k=1,2,\dots,6)\) である。
(B) まず、\(\alpha^{7}-1=0\) を因数分解して
\[
(\alpha-1)(\alpha^{6}+\alpha^{5}+\alpha^{4}+\alpha^{3}+\alpha^{2}+\alpha+1)
= 0 \]
となるので、\(\alpha-1 \ne 0\) より
\begin{equation}
\label{eq:23-2}
\alpha^{6}+\alpha^{5}+\alpha^{4}+\alpha^{3}+\alpha^{2}+\alpha+1 = 0
\end{equation}
となる。
(A) の結果を利用すると
\[ \overline{\beta} = \overline{\alpha} + \overline{\alpha}^{2} +
\overline{\alpha}^{4} = \alpha^{6} + \alpha^{5} + \alpha^{3} \]
となるので、
\begin{align*}
\beta + \overline{\beta} &= \alpha + \alpha^{2} + \alpha^{4} + \alpha^{6}
+ \alpha^{5} + \alpha^{3} \\
&= \boxed{-1} \quad (\because \eqref{eq:23-2})
\end{align*}
また、
\begin{align*}
\beta \overline{\beta} &= (\alpha + \alpha^{2} + \alpha^{4}) (\alpha^{6}
+ \alpha^{5} + \alpha^{3}) \\
&= \alpha^{7} + \alpha^{6} + \alpha^{4} + \alpha^{8} + \alpha^{7} +
\alpha^{5} + \alpha^{10} + \alpha^{9} + \alpha^{7} \\
&= 1 + \alpha^{6} + \alpha^{4} + \alpha^{1} + 1 + \alpha^{5} + \alpha^{3}
+ \alpha^{2} + 1 \\
&= \boxed{2} \quad (\because \eqref{eq:23-2})
\end{align*}
(C) 今の結果から、\(\beta\), \(\overline{\beta}\) は2次方程式 \(x^{2}+x+2=0\) の2解である(解と係数の関係より)。これを解いて、
\[ \beta, \overline{\beta} = \boxed{\dfrac{-1 \pm \sqrt{-7}}{2}} \]
である。\(\square\)

\(1\) の虚数 \(7\) 乗根は
\[ \zeta_{k} = \cos \biggl( \dfrac{2\pi k}{7} \biggr) + i \sin \biggl(
\dfrac{2\pi k}{7} \biggr) \quad (k=1,2,\dots,6) \]
の6通りあり、与えられた条件では \(\alpha\) が \(\zeta_{1}, \dots, \zeta_{6}\) のうちどれなのかは決まらないが、どれであったとしても上の議論はそのまま成り立つ。つまり、上の議論は \(\zeta_{1}, \dots, \zeta_{6}\) に対する不変性・対称性を持っている。

これは、上の議論で用いている性質が結局すべて\eqref{eq:23-2}だけから導けるからだ。\(\zeta_{1}, \dots, \zeta_{6}\) の \(\Q\) 上の最小多項式は \(x^{6} + x^{5} + x^{4} + x^{3} + x^{2} + x + 1\) であり、その6つの数は体 \(\Q\) から見ればいずれも「\eqref{eq:23-2}をみたす」という性質(のみ)で特徴づけられる完全に対等な数であって、1つについてなりたつ性質は、他のどれに入れ替えてもそのままなりたつようになっている。同じように、体 \(K\) 上の最小多項式の根たちは、\(K\) から見るとその代数的な性質は同一で、対等な数として区別がつかないようになっているわけである。

ガロア共役演算とは、このように「\(K\) にとって対等な数たち」=「\(K\) 上共役な数たち」を互いに入れ替えるような操作であり、そういう点からも複素共役の拡張になっている、というわけだ。


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