Legendre 多項式で表される確率・その5


前回の考察で、「解決」まであと1歩だった、ということにようやく気づいたので書いておく。

まずは、前回導いた所まで改めて導出を書いておこう。サイコロを n 個振ったとき、6n 通りの目の出方のうち、1 の目が 6 の目より k 個多く出る出方が f(n,k) 通りあるとする(nkn)。元々の話の確率は pn=f(n,0)6n となる。対称性によって f(n,k)=f(n,k) である。

普通に立式すれば
(1)f(n,k)=rn!4n2rkr!(r+k)!(n2rk)!
となる。ここで、(1)右辺は和の式が意味を持つ r の範囲で和をとる。

(1)の両辺に xk をかけて和をとると
(2)k=nnf(n,k)xk=k=nnrn!4n2rkxkr!(r+k)!(n2rk)!
だが、xk=xr+kxr に注意すると(2)の右辺は多項定理による展開形そのもので、よって
(3)k=nnf(n,k)xk=(x+4+1x)n
がなりたつ。ここまでは前回到達していた。ここからあと少しで、ちゃんと Legendre 多項式が出てくる話になる。

(3)の両辺に xn をかけると
k=nnf(n,k)xn+k=(x2+4x+1)n(=g(x) とおく)
で、多項式 g(x)xn+k の係数が f(n,k) である。

よって例えば f(n,0) を求めたければ f(n,0)=g(n)(0)n! である。そこで x2+4x+1=(x+2)23 と平方完成してみると、Legendre 多項式との関連がはっきりしてくる。解析概論にならって u(x)=(x21)n とおくと
u(x3)=(x231)n=(x23)n3ng(x)=((x+2)23)n=3nu(x+23)であるから、g(n)(x)=3n(13)nu(n)(x+23)g(n)(0)=3nu(n)(23)f(n,0)=g(n)(0)n!=3nn!u(n)(23)=3n2nPn(23)(Pn(x)=12nn!u(n)(x))
となる。この両辺を 6n で割れば、初回に導いた
pn=13nPn(23)
が再現される。

  • 他の f(n,k) もまったく同様に Pn(x)(あるいは Legendre 陪関数 Pnk(x))を利用して表せる。
  • この流れだと、
    • なぜ Legendre 多項式が現れるのか?
    • 23 という値は何なのか?

    という疑問に対する必然性が割とはっきりする。前者は、(2次式)nxn の係数を抜き出すために n 回微分するから。また、f(n,k)=f(n,k) という対称性のためにこの 2 次式は相反形になっているわけだが、それを平方完成した形を x21 と結びつけるために係数を調節した結果現れた数が 23 だった、というストーリーになっている。

【2015, 4/15 追記】
(3)を導く別の道筋もあるのか。f(n,k) は定義により
(4)f(n+1,k)=f(n,k1)+4f(n,k)+f(n,k+1)
をみたす(|k|>n のときは f(n,k)=0 と定めておけば、(4)k によらず成立する)。両辺に xk をかけて和を取れば
kf(n+1,k)xk=kf(n,k1)xk+4kf(n,k)xk+kf(n,k+1)xk=kf(n,k)xk+1+4kf(n,k)xk+kf(n,k)xk1=(x+4+1x)kf(n,k)xkkf(n,k)xk=(x+4+1x)nkf(0,k)xk=(x+4+1x)n
となって(3)が出てくる。


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