第1話の主要な見所はもう別ペー ジで書いたが、それくらいじゃまだまだ「プリンセスナイン」の魅力は書き足 りない!!
絶対に書き落とす訳にはいかないのが、甘味処での涼と誠四郎とのやりと りだ。まず「これは凄い!」とうなったのが、誠四郎に進学の意志を訊かれ、 「どこも願書出してないんだ」と言って足を閉じたカット。ちょっと切り出し にくいけど、でも真面目な話を、誠実な幼馴染みに話そうとして、ちょっとし た決意をかき集める無意識の仕草だ。このほんのちょっとした仕草が、涼の微 妙な心情をこの上なく精妙に描き、計り知れない健気さを涼に与えていた。
そしてそれに追いうちをかけたのが、「それにあたし、誠四郎君みたいに 頭良くないし、高校行ってもしょうがないもんね。にゃはは」というセリフだ。 強がってはみても、やはり高校に行って同年代の友人たちと時間を共有するこ とのできないつらさの滲み出た寂しげな顔と、それをふっ切っておどけて見せ た笑顔の対比!これによって、涼というキャラにたまらないいとおしさを与え ることに成功している。
そしてトドメが、「日本一の、おでん屋さん!」ああ、100万ドルの笑 顔。
場面は変わって、涼が「志乃」に帰って来たシーンを見てみよう。部屋に 戻って服を着替えるシーンがあるが、ここに髪を「ふぁさっ」とやる短いカッ トがはさまる。ほんの1秒かそこらの短いカットであるが、このカットにはか なり濃縮された演出意図を感じはしないか。
そのままの流れでサラッと流すことも可能だった所に、流れを一瞬断ち切 るように挿入されていること。作画がやけにしっかりしていた(動きと涼の顔 に限定されるが)こと。そして、このカットによって涼の爽やかなイメージが 非常に効果的に強調されていたことを考えると、このカットは監督(第1話絵 コンテも務めた)の望月氏の指示で特に付け加えられたのではないかという気 がする。これも、先ほどの「足閉じ」のシーンに続いて、何気ないほんのちょっ との動作で著しい効果を挙げた名演出として高く評価したい。………その直後 のシャドウピッチングのフォームが凄くおかしい(最初右投げのフォームだっ たのに、途中から左投げのフォームになってる!)のがミソをつけてるけど (笑)。
それから、「うん、いただきだぁー!」とおどけてみせる涼もいい。この 涼にメロメロになった(笑)ファンもちらほらいるようだけど、確かにここは 涼役の長沢美樹さんの芝居が抜群にうまくて、涼の快活な魅力がいや増して伝 わってきた名シーンだと言えよう。他のアニメ作品も通じて、長沢さんの業績 を「優れたもの」として認識した最初のシーンがここだったように思う。
ついでにコメントすると、木戸が「カッ!」と杯を置くカットの緊張感も 優れていた。先ほど述べたことと合わせて、第1話の後半は短いカットを実に うまく使った名シークエンスが続出した、と評価できるのではないだろうか。
第1話を見てもうひとつ感心したのが、声優陣の豪華さだ。まるきり注目 されていなかったこんな作品に長沢=伊吹マヤ=美樹さんと子安=青葉シゲル =武人さんが出演されていたのにも多少驚いたけど、何と言ってもうならされ たのが島本須美さんと榊原良子さんの出演!
実は理事長の声は最初折笠愛さんかと思って聞いていて、エンディングで 初めて榊原さんと解って「そうか!」と思わされたんだけど、もったいぶった セリフの数々を重々しい威厳を付けて演じてくれて、それを聞くのは実に快感 だった。「うっふふ、とんだ飛び入りだけど、私の目的にはかえって好都合だ わ」なんてセリフ、あんな言い回しで言われたらシビれますよね。
島本さんの方は途中でほぼ見当がついて、いつもと変わらぬ麗しいお声に 聞き惚れていたので、エンディングで理事長が榊原さんと解った時、「おお、 ナウシカとクシャナの夢の競演だったのか!」と感服(←ミーハー)。
その他にも、名バイプレーヤー龍田直樹さんや、子安さんに加えてもう一 人、女性ファンに大人気の三木眞一郎さんを起用するなど、第1話で既にちょっ とびっくりするようなキャスティングが敷かれていて驚いた。
出演者の顔ぶれの凄さはこれだけに留まらないが、今後の話数で話数で登 場するキャラを演じていた方々についてはまた今度。
手放しで褒めちぎってさすがに気が済んだので(笑)、あとは気楽なツッ コミを少し。