> 『デッド・ゾーン』の中で、メフィストが飲み込んだ魂結晶がメフィストの魂と癒着し、それが美神に転生して引き継がれた、とヒャクメは判断しました。
> その魂結晶が神族←→魔族抗争の全ての原因であり、やがてはアシュタロスは魂結晶を狙って美神を襲ってくるでしょうし、魂結晶手に入れればとんでもないことが起こる、ということは明らかです。
> だったら、ヒャクメはメフィストに魂結晶を吐き出させ、神界で保管するようにするべきだったのではないでしょうか? どうせメフィストには消化吸収できないんだし、飲み込んでいても何の利益にもならない。トラブルの種でしかない。だったら神界に預けるべきでしょう。
> キーやんやサッちゃんの元で保管されていれば、アシュタロスも簡単には手を出せないでしょうし。
「エネルギー結晶を引き千切ぎられて」の方は収束傾向のようですので、こちらに返答を。
ヒャクメは「時間移動はそれほど大した能力ではない。過去も未来も変えられることしか変えられない」という主旨のことを語っています。これが正しいのかどうかはよくわかりません。横島が氷の弾丸で胸を貫かれた時、美神は過去に時間移動してその未来を変えてしまいました。これが本当に「そのままでも生き返る」状態だったかは疑問です。美神が蜘蛛の妖毒に犯されて死ぬ、という運命が、本当に「変えられる未来」だったかも疑問です。
しかし、ではヒャクメが美神とともに平安京に飛び、その結果
(1)メフィストにアシュタロスのエネルギー結晶を奪わせ、「究極の魔体」計画を妨害することになった。
(2)アシュタロスを4,500年未来に飛ばし、平安京から消し去った。
この2つの事態が発生しました。
(1)は、ヒャクメと美神が平安京に来なくても、結局は起きたことだったかも知れません。
しかし(2)は、ヒャクメと美神が来なければ決して起きないことだったはず。アシュタロスのような超大物悪魔を4,500年だけにせよ「消してしまう」ということが、本当に変えていい過去だったのでしょうか?
ここで考えられるのは、ヒャクメは「美神の魂は何か特殊だ。何かがある」ということを美神は見抜いていたのではないか? ということです。
猿神・斉天大聖老師はすでに、「美神の前世には何かある」と見抜いていました。ヒャクメは神界からそのあたりのところを調査に来た調査員だったのですから、得意の眼力で「美神の魂には、何か異常で巨大なエネルギーが存在する」と感づいていたのではないでしょうか。
つまり、メフィストがエネルギー結晶を飲み込んだこと、ヒャクメがアシュタロスを4,500年未来に飛ばしたことは、すでに起こっている現在(美神の魂に巨大なエネルギーがあること)の直接の原因なのですから、「未来から来て過去を変えた」のではなく、まったく逆で原因を守ったのであり、全ては運命的な必然だったのです。
一方、ヒャクメがメフィストにエネルギー結晶を吐き出させ、神界に持ち帰ったらどうなるか。
美神の魂からエネルギー結晶が消えてしまいます。すると、その時既に予想されていた、近い将来巨大な力を持った何者かが美神を殺しに来て、とんでもないことが起こる、という未来が消えてしまいます。これはとても「過去を変えることで消し去ることのできる未来」とは言えません。
ヒャクメにはそれがわかっていたので、「アシュタロスを未来に飛ばしたのは運命的必然。エネルギー結晶を吐き出させるのは、未来の改変になるので不可能」と判断したのでしょう。