> 前々から思っているのですが、ゴーストスイーパー資格試験の内容が、霊波測定と受験者同士の試合だけでいいのでしょうか?
厳密には「研修」も含まれますが(9巻162頁)、確かに作
中の描写では以上の事しか明らかになっていませんね。
> まずそもそも、除霊にはお札を多く使います。しかし人間である受験生同士の試合では、「御札で吸引!」というわけにはいきません。つまり除霊の上での強さと、試合の強さはまったく別ではないでしょうか。
模擬と実戦が必ずしも一致を見ないのは、世の中ではまま有
る事です(苦笑)。
まあそれは半分冗談ですが、やはり「受験者数1852名」(9
巻158頁)用に超巨大な幽霊屋敷を毎年用意するのも大変でしょ
うし……少なくとも『バッド・ガールズ』編の如く式神を相手
にするよりは多角的に候補者の実践的な能力を評価できる方式
である、とも謂えるのではないでしょうか。
何よりこの試験は「本当に優れた能力を持つ人間にしか資格
を与え」(同159頁)ないのが目的の一つであり、上位「32名」
のみの合格枠を設け(同158頁)、かつ二次試験の「成績がそ
の後の仕事に直接関わってくる」(同172頁)のです。これら
を併せて考えても、武闘会方式は資格保有者の社会的信頼を向
上させかつ候補者たちにヒモを付けている師匠つまり同業者同
士の意識向上を促し、業界全体の健全化と活性化をもたらすに
は有効な方法なのではないでしょうか? これが第1の提議。
> また、美神が除霊をするときには、必ずしも力技で強引に悪霊を消滅させるだけではありません。霊魂のこの世に対する「未練」の元を断ってあげることによって、優しく成仏させることもあります。暴力団の親分の隠した詩集を見つける,テニスで勝つ,カーレースで勝つ,銀行強盗を成功させる,あるいはまた、山の神にしてあげる、などなどです。
上例の、特に「テニス」「カーレース」の場合は、作中に明
記されている通り単なるスポーツではなく「霊能力の勝負」で
ある点は看過ごせません。「「未練」の元を断ってあげる」の
はあくまで補助的な「技術」であり、その前提には霊能力の比
べ合いがある、とする考え方が第2の提議です。極端な事を謂
えば、説得のみで除霊ができるのなら、除霊師より交渉人の方
が有用なのでは、と云う訳です。
別の例を挙げましょう。『遊びの時間、ふたたび!!』(27巻)
でのキヌは135打オーバーでコースを廻りました。しかし、ゴ
ルフ初心者かつ運動音痴(同14頁)である彼女の身体能力を見
積もった所で、あの極悪な1番ホールでハンデを使い切ってし
まっても不思議はありません。ここで「このゴルフも普通のス
ポーツ、と見せかけてその本質は令子も本話中で断言するよう
に「霊能力の勝負」なのだ」と認めれば、並の人間以上の霊能
力を持つキヌが相応の働きをするのも納得できます。勿論、基
本的なゴルフの技術や身体能力はそれなりに必要でしょうから、
それがスコアに反映されていると見て可いでしょう。
(余談:『紙の砦!!』編(28巻)では安奈みらの口撃で滅びる
淀川ランブの亡霊が居ましたが……あれは自滅だしなぁ(笑)。
ま、霊的存在との対決は霊力勝負である事が「基本」である、
と覚えて頂ければ……。)
> ゴーストスイーパーが除霊する対象は、必ずしも悪霊ではありません。単に未練が残って成仏できないだけの「善い幽霊」だって多いはずです。
> 悪霊だって、優しく説得して改心させ、成仏させたほうがいいに決まっています。
> それなのに、試合の強さだけで資格を与えていいのでしょうか。
この点については『フォクシー・ガール!!』編(36巻)で美
智恵が「私たちはしょせん人間だから、敵となる妖怪は退治し
なきゃならない。/でも、専門家として異世界の住人との仲立
ちができるのも私たちしかいないのよ。」といみじく言及して
います。また『スタンド・バイ・ミー!!)』編(23巻)では死
霊使い[ネクロマンサー]の資質として「霊の悲しみを理解して、
心の底から思いやる心がなければならない。/コントロールす
るには愛が必要なのじゃ。」との事です。更に『ネバーセイ・
ネバーアゲイン』編(39巻)では悪霊になった夢を見た忠夫が
「どっちみち、いつかは俺たちも死ぬわけでしょう?/そんと
き金のために力ずくで除霊されんのはやだなぁ。/おキヌちゃ
んみたくやさしく成仏させてほしいですよ。」と令子に洩らし
ます(対して令子の発言「死んだあとのこと心配してちゃ、人
生楽しめないじゃん!!」と云うのがイカニモ)。
しかし、そのキヌの除霊方法にしても、本質が霊能力である
事実は揺るぎません。それは『スタンド〜』に於いて霊団を鎮
められたのはキヌの生身の説得などではなく、ネクロマンサー
の笛を通じて行使された霊能力であった事が端的に象徴してい
ます。そしてついに『賢者の贈り物!!』(36巻)では笛を駆使
した説得にすら失敗し、結局お札を使ってしまいます。
そう、先のイラーク戦争にも見られるように、敵性存在に対
する最終的かつ有効な手段は実力行使、つまり戦闘であるとい
う事実こそが第3の提議です。これは除霊師が常に死と隣り合
わせにある職業である以上は致し方の無い事です。勿論、この
戦闘は霊能力を駆使した戦闘の事であるので、肉体的に心配の
多いキヌが必ずしも資格試験で不利を被る事を意味するのでは
ありません(『バッド〜』『賢者〜』での苦戦は、寧ろ自身を
主体とした実戦の経験が不足していた所が大でしょう)。
以上3つの提議から、武闘会形式による霊能力戦闘重視の試
験形式はそれなりに有効である、と結論します。あと鰻田さん
が挙げられた力技以外の部分ですが、これらはそもそも客観的
評価が難しい事もありますし、除霊師に一番に求められている
素養とは違うのではないか、としました。
> また、プロのゴーストスイーパーになるなら、法律の知識だって必要でしょう。また、悪魔や妖怪の種類,神族の構成,といった知識も必要でしょう。実際、美神は妖怪の名前や弱点をすぐ言い当てますし、これらのことに非常に詳しいようです。だとすれば、少しは筆記試験もやるべきでは?
ぼくも前々から気になっていた所ではありますが……そもそ
も、上の議論が成立する為には「霊(能力)が法により規定さ
れている」「オカルトに関してある程度統一的な見解が形成さ
れている」などの前提が必要になるでしょう。
前者について、ぼくの見解は「否」です。ゴーストスイーパ
ーについて令子は「現代社会の基盤はあくまで科学よ。/幽霊
や妖怪ってのは今の科学じゃ定義するのが難しいわ。/何だか
わからないモノを退治するために何だかわからない能力を持っ
た人間が必要なわけね。」(9巻159頁)と評しています。英
国オックスフォード大学にはオカルト学の講座があるとの事で
すが(15巻96頁)、科学でも定義しきれない実在を法が定義
できているとはどうも考え難いです。『狼たちの死後!!』にて
低級霊団を使った「事故」に対し「法廷でも勝つ自信があるわ
よ!」(1巻88頁)とのたまったのも、その辺りの事情もあっ
たのかも知れません。
(余談:本来捜査権も逮捕権も無い筈のICPO職員こと西条
輝彦がバンバン悪霊退治しているのは、幽霊の類が法的に規定
されていないから、とも謂えるかも。因みにSCDドラマ『美
しき逃亡者』で令子を拘束・資格剥奪しようとした「Gメン」
はGS協会の役人であり「オカルトGメン」とは恐らく別種。)
後者に関しては、前の話とも少し関係しますが、随所に出て
くる令子の蘊蓄などから察するに、ある程度は共通のオカルト
認識はありそうです。よってそれに関する筆記試験は有ったか
もしれない……が、先述の「研修」と同様、ドラマの上からは
あっさり省かれてしまった、と云った所でしょうか。まあぼく
としてはちょぴっとくらいは描いて欲しかった気もしますが。