こちらこそはじめまして、からしさん。
> 所で時空消滅内服液のエピソードは、どう解釈すればよいのでしょう?
「愛に時間を!!」より、薬の効能の主要な点を整理します。
1「この薬にはその縁を断ち切る効果があるのだ!」(2巻84頁)
2「ゆっくり時間を逆行していくことになると思うわ。」(同86頁)
3「元に戻るにはこの世と(中略)縁を強めるしかないわ!」(同87頁)
つまり、それまでの歴史の流れに沿い服用者が段階的に時間
を逆行し、最終的には生まれる前まで戻って消滅してしまう、
と云うのが薬の効能。そして消滅=縁を断ち切る事であり、元
の世界との縁を深めるのがその対処方法となります。過去の全
く同一の存在に「移動」するのが、美神家に伝わる時間跳躍能
力と大きく異なる所です。
しかし何より引っ掛かるのは、以下のもう1点でしょう。
4.逆行前段階の記憶が逆行後段階に保存される
時間を遡ると云うのならば、当然物理的活動の産物である記
憶なるものも前の時間の状態に戻ってしまうはず。これは一体
どうした事でしょう?
以下は、平行宇宙を前提とした一仮説です。
これは無論、単純な時間遡行現象ではありません。記憶は勿
論、薬が過去へ過去へと段階的に作用する事からも解る様に、
時間を遡る方向に新たな「歴史」が作られているのです。当然、
その「歴史」は相対的に元々の<歴史>とごく近い平行宇宙に
ありますが、全く同じではありません。
これを模式的に現すと、以下の通り。「⇒」が時間に沿った
歴史の流れ、「→」が薬の服用者にとっての歴史の流れです。
時間の流れ t ⇒ T
元々の歴史 a ⇒ A
↓<時空消滅内服液>
新しい歴史 a’← ←
過去aと過去a’が、互いに平行宇宙の関係にあります。
「未来Aでの記憶を持ち、且つ少しずつ逆行している」a’の
様な過去が発生する可能性がどれほど存在するのか、と云った
問題は残りますが……時間跳躍能力を持つ家系が存在する確率
とどっこいどっこいでしょうし、深入りは避けましょう(笑)。
そして新しい歴史a’の発生によって、少なくとも服用者に
関わる部分での歴史が変わるのは、「服用者」を「時間跳躍能
力者」に置き換えれば、令子や美智恵の時空干渉の場合と同じ
になるのはお判りですね。
所で、実は他にもう一つ、この事件の時のように「過去の自
身の肉体に未来の精神が時間移動したような現象」がありまし
たが……そう、「ある日どこかで!!」の令子です(16巻59頁)。
内服液の件では令子は元の世界との縁を強める事で忠夫を救
いましたが、中世欧州では逆に元の世界との縁を断ち切り彼を
救った事で、両挿話は構造上は全く好対称を為していますが、
「人と人との時空を越えた繋がり」なる主題では強く結び付い
ていますね。うーん、深読みの為がいがあるなあ。