> 横島はおキヌちゃんは好きではないのか?
> どうなのか?
> 横島は届かない物を追いかけるタイプなのか?
『極楽』にて忠夫が初めて恋愛感情を表明したのは、ルシオラ
に対してだけだと想われます。
令子やキヌは他の女性登場人物の中では比較的そっち方面の話
題に供された事もしばしばありましたが、いずれも「少年誌的ラ
ヴコメ」の枠を大きく逸脱するものではありませんでした(『ワ
ン・フロム・ザ・ハート!!』にしても『デッド・ゾーン!!』にし
てもそれぞれ女性側からの「告白」は認められるものの、忠夫の
方からの意志表明が殆ど見られなかった。アシュタロス編の時と
違って忠夫と読者の視点は遠く、寧ろ女性寄りになっているのに
も注目)。
そしてアシュタロス編が終わると、その後遺症とでも云うべき
「ラヴコメ禁止」状態が暫く続きます。俄かに「横島&キヌ」カッ
プル支持者を活気づかせた『マジカル・ミステリー・ツアー!!』
に於いてさえも、忠夫の反応は健全な青年のそれに過ぎず(しか
も小ネタ扱い)、恋愛に関しては明らかにルシオラに対するそれ
どころか、連載開始当時の段階以下にまで後退しています。
この作品の多くの挿話は、令子よりも感情移入し易い忠夫に近
い視点で描かれる事が多かったのですが、殊に恋愛問題に関して
は物語の主軸となる女性に接近する余り、忠夫自身のそっち方面
の成長が全編通して疎かになってしまったきらいがあります(本
作の構造的な問題点です)。
そういった意味でアシュタロス編は初めて本格的に彼の恋愛観
を掘り下げる物語と謂っても過言ではありませんでしたが……そ
の結末はみなさんもご存じの通り。それ所か令子やキヌにまで消
極的になってしまう始末で、最後は疑似家族形成に終始しました。
したがって本作を読む限りでは、最終的な忠夫のキモチは解ら
ない、ですね。まあそのうち、彼らがアシュ編の呪縛をいくらか
払拭してまたラヴコメってくれる日を願うしかないかも。