『続・仁義なき戦い』で美神令子の母、美智恵は、キャメロンに苦戦する令子にこんな言葉を投げつけます。
「情けない……!! それでもお前はゴーストスイーパーなの!? これじゃどんな武器もブタに真珠です!!」
これは言い過ぎでは……?
「猫に小判」であれば、小判のような価値のあるものを、価値のわからない愚かなニャンコに与えても無駄だ。ニャーニャー言ってじゃれつくだけ、価値を生かすことができない。
こんな意味になります。ですから、「竜の牙」を使いこなせない美神の状況に対する非難としては、相応しいでしょう。
ところが、「豚に真珠」とは聖書の言葉であり、かなり意味が違います。
聖なるものを犬に与えてはいけません。また豚の前に、真珠を投げてはなりません。それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたを引き裂くでしょうから。(マタイによる福音書 第7章6節)
これは、「真珠のように清らかで聖なるものを、豚のような穢れたものに与えてはならない。聖なるものを踏みにじるばかりか、与えた人間に仇をなす」こういう意味です。
ですから、小竜姫が「竜の牙」を美神令子に与えた時に、
「フンッ、何よこんなもん!」と美神がそれを放り捨てて、「あたし、今日限りアシュタロスの側に寝返るわ。悪く思わないでね。手土産がわりに、小竜姫、あんたの首をもらうッ」
このくらいで始めて、「豚に真珠」と言えるのです。
カトリックの神父である唐巣の弟子であり、イギリスに留学もしていた美神美智恵が、この言葉の正しい用法を知らないはずがありません。
それなのに、どうしてこんな言葉を使ったの?