椎名作品Q&A 過去ログ

No. 1199 その答えはここにあるのでは

エンキドウ : 04/09/19(Sun) 18:48

『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ!!』の中で、大金持で成金趣味の老人が登場します。
「わしゃ戦前、東京の裕福な家に生まれたんやけど、小さい時、父親が事業に失敗して大阪に夜逃げしたんや。苦労に苦労を重ねてなんとか成り上がって、今では日本中に99のビルを持っとる。人にはゴーツクやなんやと言われとるが、少年時代に無くしてしもたもんを、金であがなおうとジタバタしとるんやさかい、ゴーツクなんもしゃあないと思とる」

 このように、美神令子も「少女時代に何かを喪失した」「喪失したものを金の力で取り戻すために、ジタバタしている」のではないでしょうか。

 では、何を喪失したのか? それは親の愛であり、庇護、ではないでしょうか。
 父親はいるにもかかわらず、ずっと別居中。愛情を与えられた覚えはまったくなし。その代わりに母親からは可愛がられ、大きな愛情を与えられた。妖怪に襲われたりもしたけれども、強い強い母親がずっと護ってくれていた。また、令子ほどガメツクはないにしても母・美智恵もかなりの高額所得者で、金の力で親子ともに護られていた、という面も大きかったでしょう。
 ところが……15歳の時に母親は死亡(偽装ですが)。自分を護ってくれるものが消失した令子は、「強くなる」「金を溜め、金の力で自分を護る」この2つを心に誓ったのでしょう。
 ということは、死んでいたはずの母親が現れ、父親とも和解し、また自分を護ってくれる「横島」という存在に気づき始めている美神は、だんだん金に対する執着はなくなっていくのではないでしょうか。
『賢者の贈り物!!』で、口では「他人に金を出してやる趣味はない」と言いながら実はこっそり借金を肩代わり(借用証書をひのめにプレゼントしている)してあげたりしたのは、その為でしょう(父親との和解よりもは前の話ですが)。


椎名作品Q&A 過去ログ / C-WWW unofficial support page