「GS美神‘78」を読んで、美神令子が父親・美神公彦と仲が良くない理由は納得しました。
確かに、子供のころから家におらず、まったく可愛がってもらった記憶がなく、学問一筋で家庭をかえりみない。たまに会うと不気味な仮面をつけた姿。素顔は写真でしか知らない。
こんな父親に愛情を抱け、という方が無理があるでしょう。(なお、「父帰る」で明らかになったように、美神令子が“甘えさせてくれる中年に弱い”という事実は、父親不在の家庭で育ったことに原因があるのでしょう)
が、しかし、だからといって「母からの伝言」の中で、「先生は研究で南米に行ってらして、来月までお帰りになりませんが…」という助手・松井さんの言葉に対して「またか、あのバカ親父…!」と言った美神令子の言葉は許せません。
美神公彦が家族と暮らさない、他人と交わらないのは、テレパスという特殊な(それも自分でコントロール不可能な)能力のためです。一種の障害者であり、実に可哀想な身の上なのですよ。そんなことは、子供の頃はともかく、20歳になった令子に理解できないはずはないでしょう。
元々学者タイプの人間が、突然事故で“他人の思考が全てありありと読めてしまう”などという境遇に落とされたら、どうなるか。他者を避け、学問一筋に打ち込むしかないじゃありませんか。
いえいえ、もし私だったらどうなるでしょうか。自殺か,酒や麻薬におぼれるか,無人島で一人で暮らすか,または能力を利用して悪事に走るか,このどれかでしょう。それなのに公彦は、テレパシー能力を学問の研究に利用し、成果を上げ、大学教授という地位を築き社会に貢献しているのです。立派なお父さんじゃありませんか!
もし令子が公彦のようなテレパスになったら、絶対に能力を悪用して金儲けに走ると思うのですが…。
それに、令子が子供の頃はどうだったかわかりませんが、少なくとも現在は、“父・公彦は娘に会いたがっている”→“娘・令子の方が父親と会いたがらない”という構図のようです。これでは、公彦が娘に「父親らしいことをしてあげよう」と思っても、できないじゃありませんか。
令子が父親との間にわだかまりがあり、仲良くできないのは理解できます。しかし、「バカ親父」呼ばわりは許せません。[]ano
何がバカ親父か! 公彦から見れば、美神令子の方がよっぽどバカ娘だと思うのですが。