皆さん、どうもです。
> 横島は、『ある日どこかで』の中でヌルの氷の散弾を胸に喰らいました。どう見ても即死です。巨大な先の尖った氷の塊で、心臓も肺も完全に破壊されています。
「心臓も肺も完全に破壊されてい」ると断定するの、は
まだ早いですよ。それなりに深刻な状態であったのは事実
でしょうが、心臓だの肺だのとは作中のどこにも指摘があ
りません。
今回の問題で最低限検討すべき論点を挙げてみましょう。
a.忠夫の実際の容態〜カオスの診断の正確性
見た目よりも忠夫が軽傷であったとしたら? カオ
スの時代)の医療技術が未熟だったとしたら?
b.時間復元力の理論〜小竜姫の指摘の妥当性
そもそも理論は正しいのか? 小竜姫の指摘は蘇生
問題の本質を捉えているか?
c.令子の能力の実際〜時間移動能力の可能性
令子の時間「遡行」は本質的に如何なる物なのか?
「遡行」と時間の復元力との関係は?
aについて。現代でも死亡判定の後であっても「蘇生」
してしまう場合が、ごく稀にですが有ると謂います。カオ
スが戦っていた吸血鬼にせよ、土葬の習慣のある地域で埋
葬後に蘇生してしまった場合がその伝説に寄与している、
との説もあります。
しかもカオスは曲がりなりにも戦闘の合間に、しかも脈
を取る時でさえ手袋をはめたままで判定しています。天才
魔法科学者である彼の医療技術にしても全くの未知数です。
何より致命傷である患部を観察したコマが無い事からも、
傷そのものが本当に深刻なものであったかどうかを曖昧に
しています。
よって急激な外傷性ショックと出血、或いは魔法的な攻
撃に依る霊体への影響など一時的に仮死状態に陥った忠夫
が(「そのままでも」は勿論「そのまま放っておいても」
の意味ではありませんよ)「蘇生可能だった」可能性は考
えられなくもないでしょう。
bは理論の正しさへの懐疑(と云っても後の物語で否定
されない以上、これを正解と見るべきでしょうが)と、忠
夫が助かった理由を時間の復元力の理論で説明すべきなの
かどうかと云う疑問です。
例えば、令子の時間遡行による一見歴史改変も全て歴史
の流れの中に含まれるとしたら(ちなみにこれならば因果
律の矛盾も見かけ上消滅します)、忠夫の蘇生は歴史の必
然となり、復元力で説明する必然が消失します。まあ、こ
れは飽くまでも極端な例ですが。
cはエンキドウさんが詳しく考察なさっている部分です
ので、こちらでははしょります。
ただ、時間の復元力と共にこの作品世界を形成する法則
の双壁を成す「宇宙意志の干渉」理論に拠るならば、たと
え中世欧州で忠夫が死亡したとしても、彼になり代わって
アシュタロス一味に対抗する者が出現する可能性も充分に
考えられると云う指摘はできるでしょう。
あと、メゾピアノさんの白昼夢説は、時間遡行直後のカ
オスの「ミカミ…!?/おぬし、ひょっとして…/時間を超
えたのか…!?」(コミックス17巻66頁)なる指摘や、『今、
そこにある危機!!』篇での件の小竜姫たちが時間移動を否
定していない所から、少々圧しが弱いように想います。
或いは「予知夢=精神のみの時間先行+未来の肉体&精
神に過去の精神を重ねる能力」としたならば、予知夢も一
種の時間移動能力の応用と見る事ができるでしょうか。
結論。ま、個人的には素直に「蘇生可能である」に一票
です。後にそれを否定する素材が無い以上、そう考えるよ
うにするのが自然ではないかと。
或いは、後の文珠の片鱗となるべき能力で致命傷を免れ
ていた……とか(ぼくは忠夫の霊能力の本質を「運や偶然
を如意とする能力」と解釈していますので。詳細略)。