> > 著作権とは「創作物を保護する権利」です。この場合の創作物とは、0からつくりあげたということを意味しません。現実の風景を撮影した写真や、他人の作品の模写、車のプラモデルにだって著作権は発生します。当然、建造物を図面化したものにも、著作権は発生します。
> > 従って、復元予想図に著作権があることは当然です。これは、それが現実のものと等しいのか、等しくないかとは全く関係ありません。
>
> 違います。復元予想図に著作権があることはもちろんですが、著作権は「表現」を保護するものであり、復元図を元にしていても、「表現」が異なっていれば著作権を侵害しません。
これを違うといわれると世の法律書が間違ってることになるので困るのですけれども、著作権法では著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(第二条)と定められています。「創作的に表現する」という意味で「創作物」という用語が使われるにすぎません。逆説的にいえば、表現であっても「創作的でない表現」では、著作物たりえないということになります。
> 例を出します。ある寺に鎌倉時代の国宝級の仏像があったとします(仏像Xとします)。ところが、火災のため残念ながら焼失しました。ところが、ある写真家Aが仏像Xの前後左右から数枚の写真を撮っていたことがわかり、世間に発表しました。ある研究者Bが、その写真を元に「仏像Xはこんなものだったに違いない」として精密なレプリカを作成しました。復元方法には(飽くまで“方法”です)には、Bの独創性があったとします。元の写真の画質がよかったので、そのレプリカはほぼ100%正確なものと思われます。
> そのレプリカを見た漫画家Cが、その場でスケッチしそれを資料にして自分の漫画にその仏像を登場させました。
> さて、漫画家Cは、
> ア.鎌倉時代の仏師(彫刻家)の著作権を侵害している
> イ.写真家Aの著作権を侵害している
> ウ.研究者Bの著作権を侵害している
> エ.著作権侵害にはあたらない
> さて正解はどれか? という問題なのですよ。(ア.でないことは言うまでもありませんよね)
これは一般にはエですよ。
仏像の元の姿が100%判明しているとするならば。
既に存在しているものの複製品ですから、その仏像の外形については、写真家の創作性も研究家の創作性も認められないからです。
> しかし、「安土城」は間違いなくかつてこの世に存在したものであり、その姿を「再発見」した、に過ぎないはずです。その発見過程は独創的であっても、最終結果が研究者の「創作物」なんでしょうか? それはおかしいのではないでしょうか。
どうも創作物という言葉に誤解があるようです。
この場合の創作物という言葉は、一般的な「それまでなかったものを初めてつくりだしたもの」という語義ではなく「人の精神的・思想的産物」(三省堂大辞林第二版)という意味です。
正確な形がすでにわからなくなっているものを復元した場合、それが「人の精神的・思想的産物」にあたるということです。