TITLE:ラプラスのダイス(「誰が為に鐘は鳴る!!」より)
DATE, TIME:1996/03/22 21:56:17
Name:井汲 景太

  元ネタは、「ラプラスの悪魔」――というより、ラプラスに代表される「決
定論的世界観」だろう。

  ニュートンが見出した運動の諸法則は、その単純さにも関わらず、驚くべき
威力を備えていた。その法則の正しさは、ありとあらゆる物理現象で検証され、
そのことごとくに勝利した。大は天体の運行から、小は風に舞う木の葉に至る
まで、全てはこの法則によって説明でき、また一方、この法則でしか予言でき
ない現象が、これまた次々と検証されていった。
  こうなってくると、この法則がこの世を統べるもっとも基本的な法則である
と見なすのが自然である。しかし、それは興味深い副産物をもたらす。
  この法則は、大雑把に言って、「ある瞬間の状態さえわかれば、その次の瞬
間の状態が、曖昧さなしに完全に定まる」という性質を持っている。というこ
とは、ある瞬間の状態がわかると、その次の瞬間の状態がわかり、従ってその
また次の瞬間の状態がわかり、さらに次の瞬間の状態がわかり…という連鎖に
よって、結局、「ある瞬間の状態によって、未来永劫全てにわたってその状態
が完全に決している」という結論を導くことができる。すなわち、この世の成
り行きは、任意の一時点での世界の有り様によって一意に定まっており、何ら
かの不確定性が入り込む余地は一切ない、ということになる。
  このような考え方を「決定論的世界観」といい、その信奉者であった18〜
19世紀の数学者・物理学者、ラプラスの名前がよく引き合いに出される。
  もちろん、現実的には、人間の知り得る範囲には限界があるので、人間が未
来を予測しようとしてもそれはやはり限界がある。「ラプラスの悪魔」とは、
この限界に拘束されない仮想的な存在、つまり、ある一時刻でのでの世界の有
り様を完全に知り尽くした存在である。この悪魔は、ニュートンの法則に従っ
て計算を行うことで、森羅万象を余す所なく知り尽くすことができるのである。
悪魔の名にふさわしい存在と言えよう。
  ここまでの説明で、「ラプラスのダイス」に関する「あらゆる霊的干渉をよせ
つけず、運命を示す。このサイコロで決められたことは絶対公平かつ宿命」と
いう厄珍の説明が、決定論的世界観と近いことがわかると思う。

  ちなみに、「ラプラスの悪魔」というのは以前あったよく似た名前のパソコ
ンゲームとは違う(笑)。


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