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ガロア理論 数学

解ける方程式のガロア群

\(\DeclareMathOperator{\Gal}{Gal}
\newcommand{\lnsg}{\mathrel{\vartriangleleft}}
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\newcommand{\Q}{\field{Q}}
\newcommand{\K}{\field{K}}
\newcommand{\tmod}[1]{\text{mod}\; #1}
\newcommand{\zettaiti}[1]{\lvert #1 \rvert}\)
ガロア理論による方程式の可解性について理解できた私にとって、次の目標となったのは、志賀本の p.101 で、ガロアが到達した成果として挙げられていた次の話を理解することだった。

\(f(x)=0\) を有理数体 \(\Q\) 上で既約な素数 \(p\) 次の方程式とする。このとき \(f(x)=0\) が代数的に解かれるための条件は、\(f(x)\) の最小分解体 \(\K\) が、\(f(x)=0\) の解 \(\alpha_{1}, \alpha_{2}, \dots, \alpha_{p}\) の任意の \(2\) つ \(\alpha_{i}, \alpha_{j}\) を \(\Q\) に添加して得られることである: \(\K=\Q(\alpha_{i}, \alpha_{j})\)

これについてはこれまで参照してきた文書中には言及がなく、自力でもどうやったものかさっぱり見当がつかずに困っていた。ようやく割と最近になって、「ガロア論文の古典的証明」がこれに触れていることを知り、がんばって読み始めたのだが、肝心の部分に(私には)理解不能な点や、ギャップが(私にとっては)大きすぎて埋められない箇所が多く、残念ながら解決とは行かなかった(とは言え、後述する「1次式で表される群」がキーポイントになる、ということは見て取れて、それが後で結構大きく効いたので、その点は感謝したい)。

「やはり、ガロアの論文に沿って解説を進めたちゃんとした成書を買って読むしかないか…」と思っていたところ、以前も触れたある方に「体とガロア理論」藤﨑源二郎(岩波基礎数学選書、岩波書店)にその証明があると教えて頂き、先日個人的な伝手によってその本をお借りすることができた(ちょっと紛らわしいが、教えてくれた方と貸してくれた方は別人)。そこには見事な証明が書かれており、ついにその証明も理解することができた!これで一連の個人的動機に基づく学習も一段落させることができた。

【 2017,11/6 追記 】「ガロアの時代 ガロアの数学〈第2部〉数学篇」のカスタマーレビューを見ると、この本にも載っていたみたいですね。

さて、藤﨑本の理解を深めようとその証明をじっくり吟味したり、整理したりしているうちに、部分的には実質的な重複があったり、もうちょっと簡素化できそうな部分もあることがわかってきた。藤﨑本はなるべく依存性の少ない議論を可能にするために(であろう、恐らく)、証明の大半を有限群論の枠内のみで完結させており、そのため有限群論の補題をたくさん用意して証明する、という流れになっている(もちろん、それらの補題は今テーマにしている定理の証明のためだけにあるわけではなく、別の定理の証明でも利用しているようだし、補題それ自身に有限群論の成果として有用性があるので列挙されているという面も大きいのだろう)。しかし、今の我々のように「方程式の可解性をガロア理論を通じて調べる」ということを主題にしている立場からすると、その議論の一部はガロア理論の成果を利用すればすぐに出てくる、という部分もあったりするのだ。

そこで、自分の理解を整理・確認するため、そして何より自己満足のために(笑)、藤﨑本の証明を自分なりに整理・一部再構成したものを以下にまとめておくことにする。