\(\newcommand{\rnsg}{\mathrel{\vartriangleright}}
\newcommand{\lnsg}{\mathrel{\vartriangleleft}}\)
以下の文章で、「本文書」というのは「ガロア理論入門ノート」のことを指す。
■ 定理17の証明で、「\(A_{n} = N\) であることを示せば \(A_{n}\) が可解群であることに矛盾する」という文はちょっとわかりにくいように思った。その前段で、特に \(N\) を真部分集合と限定していたわけではないので、最初に読んだときは「なんで矛盾なの?」と思ってしまった。前段部の「\(N \lnsg A_{n}\) かつ \(A_{n}/N\) がアーベル群となる部分群 \(N\) がある」が「\(\exists N\)」であると読めるような言い回しをしているためちょっと紛らわしいが、ここでの論法は「そのような \(N\) としては \(N=A_n\) しかありえない」ということを示すというものになっており、「\(\exists N\)」という話はしていなかったのだが、それはよく読まないとわからなかった。それならば確かに可解群でないと言えるが、それなら別にわざわざ背理法という態をとる必要はなく、\(A_{n}\) が可解ということを仮定せずに単に「\(N \lnsg A_{n}\) かつ \(A_{n}/N\) がアーベル群となる部分群 \(N\) は \(N=A_{n}\) に限る」ということを示せば、(\(A_{n}\) が非アーベル群であることとあわせて)\(A_{n}\) が可解でないことが直接言える。この方がシンプルではないだろうか。
■ 定理17 証明補足
「\((12k) \in N\) を示せばよい」というのは、「\(3\) 以上のすべての \(k\) に対してなりたつことを示せばよい」ということ。それが言えれば \(\langle (12k) | 3 \leqq k \leqq n\rangle \subset N\) ということになって、\(A_{n}\subset N\) が言えるので。
「\(i,j \in \{3,4,5\} – \{k\}\)」では、明記されてないが \(i \ne j\) が前提になっているはず。
■ p.17 体の定義の (2) で、「乗法に関してアーベル群」という条件があるが、当然 \(0\) を含んでいては群にならない。「\(0\) を除いた集合が」乗法に関してアーベル群になっている、というのが正しい条件になる。
■ p.17 「複素数全体」に付いてる注で「実数とは」となってるのは、当然「複素数とは」の書き間違い。
■ p.18 環の例 (2) で、\(K\) 係数の多項式環を小文字の \(k\) を使って \(k[X]\) と書いてるのは恐らく書き間違いで、大文字で \(K[X]\) と書くつもりだったのだと思われる。
■ p.18 環の準同型写像の定義の所で「(環)としての準同型写像」とあるのは、恐らくかっこの付け方としては「(環としての)準同型写像」と書きたかったのではあるまいか。
■ p.19 単純なミスプリだが、素体の定義の所で「素体という」の直後に句点が抜けている。また、体の標数を \(0\) としている所の注で「証明するだけななら」と「な」がダブっている。
■ p.19 「\(\mathbb{Q}\bigl[\sqrt{2}\bigr]\)」というのは最初何かと思ったが、多項式環の notation に準じてるということが後からわかった。\(\mathbb{Q}\) 係数多項式に \(\sqrt{2}\) を代入した値全体の集合ということ。
■ p.20 定理18 添字集合を使っているのは、無限次元で可付番より大きい濃度の基底を持つ場合も含めて扱えるようにするためだろうが、結局証明中でさらに小さな副添字 \(i\), \(j\) を導入して \(\sum\) 記法で可付番無限以下の場合の話にしてしまっている上、本文書がターゲットとしている範囲では有限次元の場合のみ扱えれば十分なので、添字集合を持ち出さない方がむしろすっきりするだろう。
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