「零戦黒雲一家」と「さらば宇宙戦艦ヤマト」の比較

いよいよ実写版の公開も差し迫り、関連書籍の発行も活発になってきました。 その中のひとつ、キネマ旬報 2010年11月下旬号のヤマト特集中、“「宇宙戦艦ヤマト」36年の軌跡”(文・山 下慧)にて、以下の興味深い記述がありました。

…「ヤマト」にもまた実写畑の舛田利雄が監督としてクレジットされている (「さらば」は松本零士と共同)。(中略)「さらば」で本格的に共同脚本・監 督を務めたものだった。新規メンバーの空間騎兵隊・斉藤始は舛田の創作であり、 ヤマト特攻前に古代進が部下を説得する台詞は、舛田監督「零戦黒雲一家」 ('62)で石原裕次郎が説く台詞を踏襲したものだ。まこと「さらば」は舛田利 雄による戦争映画であった。

このセリフについては初耳だったので、さっそくレンタルビデオで「零戦黒 雲一家」を借りて来て確かめてみた所、確かに類似の場面がありました。以下引 用します。確かに「踏襲」という表現も頷ける結果です。

「さらば」のこの場面は作中でも一段とオーバーなセリフ回しになっている気 がしますが、それが戦争映画や裕次郎映画で鳴らした舛田利雄の資質に由来する ものだとすれば、その濃厚さもむべなるかな、と腑に落ちる思いがしました。

遅ればせながら検索してみると、 同様の指摘は既に存在しているようですね。

以下の引用では、地の文がそれぞれの主人公のセリフで、他の登場人物のセリ フはカギかっこに入れて示します。個人的に、色濃く類似を感じる部分を赤くし ておきました。

「零戦黒雲一家」谷村雁(石原裕次郎)

いいか!みんなよく聞け。貴様たちはこれから撤退する。潜水艦に乗艦可能な 人数は22名。現在24名だが俺が残る。あとひとりは誰が残るか、それは貴様た ちで決める。

誰だ!!

よし決まった。女は除く。

「(息を呑む)なぜあたしを!」

うんのさん、指揮を執ってください。

「いや、できん。私にはあんたが、息子のような 気がしてたんだ」
「私もいやです!」
「隊長や八雲さんを置いてくなんて!」
「尻尾を巻くとは俺たちの名折れだ」
「死ぬときは、一緒です」

はっは、勘違いしちゃいかん。俺と八雲には零戦がある。貴様たちより早くラ バウルに着く。

みんな時間がないが聞いてくれ!貴様た ちは員数外のクズかもしれんが、俺は貴様たちを殺すのがもったいなくなった。 そこらのへなちょこ野郎と違って筋金入りだからな。これからの日本は、その馬 車馬みたいなガムシャラな力(りき)がいる。だがいいか甘ったれんじゃねえ ぞ!これから先生きることは死ぬより難しいんだ。 軍法会議だって待ってるかもしれん。とにかく元気で行け。貴様たちの やることは山ほどある、わかったな!終わり!

「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」古代進(富山敬)

相原。現在の生存者数は。

相原「はい。島、相原以下…総員18名です!」

よし。総員、直ちに退艦せよ。

島「しかし、古代、お前は」

反問は許さん。退艦しろ!

島「…古代!………いやだ。いやだ!俺も一緒に 残る!」
相原「私も残ります!」
南部「私も!」

これは、艦長命令だ。

島「無茶な命令には、反対する権利がある!」

みんな聞いてくれ。地球は絶対に生き残 らなければならない。そのためにあの巨大戦艦を倒す。それには、ヤマトと俺一 人で十分なんだ。みんなは俺がこれから死にに行くと思っているんだろう。そう じゃない、俺もまた生きるために行くんだよ。

命というのは、たかが何十年の寿命で終わってしまうような、ちっぽけなもの じゃないはずだ。この宇宙一杯に広がって、永遠に続くものじゃないのか。俺 はこれから、そういう命に、自分の命を変えに行くんだ。これは死ではない。

島「…古代!」

しかし、世の中には、現実の世界に生きて、熱い血潮の通う幸せを作り出す者 もいなければならん。君たちは、生き抜いて地球に帰ってくれ。そして俺たち の戦いを永遠に語り継ぎ、明日の素晴らしい地球を作ってくれ。

(乗組員たちの嗚咽)

生き残ることは、時として死を選ぶより辛いこと もある。だが、命ある限り、生きて、生きて、生き抜くこともまた、人 間の道じゃないのか。

島「古代…!」

島…頼む。

島「(頷く)」

※文中敬称略


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井汲 景太 <ikumikeita@home.jcom.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2010年12月29日