第4話 よろしくね、聖良さん

この話はあんまり語りたくないんだよなあ…。全26話中最低のワースト エピソードじゃないだろうか。作画・演技も大概しょぼいんだが、ストーリー のひどさはちょっと救いようがない。

まず、ストーリーから

聖良をスカウトに向かう所まではいいとして、問題はその後だ。「家にも 帰って来てない」という近所の人のセリフを唯一の手がかりにして、当て もなく夜の繁華街(渋谷のようだ)にくりだし、なぜかいきなり聖良の 居場所を捜し当てる(おいおい)。地方なら遊び好きの若人が集う場所と言っ たら限られていることもあるけれど、渋谷で何の手がかりもなしにそういう場 所を特定できる確率は0に近い。

そして、あの不良連中の襲撃のシーンで、「でっかいガキ」を前面に押し 立てる所といい、聖良のビリヤードボール投げが通じなくてあせる所といい、 「ボクはグレート仮面のキックだって効かないんだな」といい、いい加減さに も程がある。

しかも、具体的に木戸がどう活躍したかの描写が全くなしで逃げ延びた後 のシーンにひとっとびとは!これでは見てる側は聖良が木戸に恩を感じること に関する説得力をまるで感じられない。聖良が何か「きっかけ」を欲していた、 という描写は別にあれでもいいんだけど、あんなにあっさり木戸に身を任せる (違う)くらいなら最初から夜遊びで気を紛らわしたりはせず、問題を自己解 決できてしまったはずだ。聖良は陸上に未練を残しつつも世間に背を向けよう としていたのだから、その状態から引き出すにはそれなりのインパクトのある 体験を彼女に与えなければならない。その部分の描写がおざなりなのが致命的 である。

さらに、画面上の演出も切れ・スピード感を欠き、後半のシークエンスの 寒さたるや筆舌に尽くしがたい。いったい絵コンテは何をしていたのだろうか。 それに、相変わらず投げた球にスピード感が全然感じられない。おまけに、後 半、主人公の涼は最後のシーンまで出番なしである(トホホ…)。

なお、マンガ版ではこの箸にも棒にもかからないヒドいエピソードが、う まく再構成してある。聖良の手下2人に聖良のことを気遣わせる描写を入れて ちゃんと役割を与え、木戸が聖良を救い出す展開をより派手に、かつ木戸がそ こそこ役を果たすようにしたことで、聖良が木戸に身を委ねる(だから違うっ て)ことにした展開がごく自然に感じられるようになっている(木戸の手とゴー ルテープを重ねる小技もよく効いている)。これこそ、プロの仕事っぷりと言 えよう。

……ド下手。

ヒドさに追いうちをかけたのが聖良役の氷上恭子のド下手 っぷりだ。何とか不良っぽさを出そうとふてくされた調子で喋ろう としてるんだけど、それがあからさまにわかってしまい、はっきり言って素人 レベルである。聖良の取り巻き2人を演じていた進藤・川澄の両名も「ふてく され」喋りのヘタさにかけては同レベルだったが、その場限りの一発ゲストで ないレギュラーキャラに、こんな下手な役者を配するのは論外だ。

男にとって都合のいいだけのアニメ・コンピュータゲームで、ちょっと媚 びた芝居をしたというだけで得た表面的な人気を、出演者決定の際に考慮に入 れるなどもっての外。そーいう役者を喜ぶ中身のない「バブル的」声優ファン の欲望を満たしてやっても業界の発展には有害でしかないので、そーいう連中 の意向は徹底的に無視し、叩き潰してやるべきである。

その役者がそーいう程度の低い連中を喜ばすことしかできない間は、そー いう役をあてがっておけばよいのだ。まっとうな役者がまともな作品に出演す る機会を奪ってはならないのである。

いい点を必死で探すと

けなしてばかりでは救いがないので、なんとか褒める点も探してみよう。

やっぱり、一番嬉しい点はヒカルの登場であろうか。「まじでうちら3人 だけかいな。マージャンもできへんで」は good!一度、彼女と打ってみたい ものである(笑)。長沢直美さんの声を聞いたのはこれが初めてだったが、ヒ カルのキャラによくあった声と芝居で、「プリ9」を通じてすっかりあのハス キーボイスに親しみを感じるようになってしまった。ヒカルはお気に入りキャ ラのひとりである。

また、涼の出番は多くないが、前半で結構印象に残るシーンを見せてくれ たのは救いだ。志乃の「あわてて、そこらでつまずかないようにしなさいよ」 に対する「いだーっ!!」は大変元気があってよろしかったし、「ちょおっ とぉー、あたし、がんもって名前じゃないんだから!」のセリフ回しも見事。 この辺りでは作画もまあまともで、後半のことを忘れさえすれば実は第5話は そんなに悪い回でもないのかもしれない。せっかく食事に誘おうとしたのに、 見事に空振りをくらった可哀想な誠四郎も涙を誘うしね(笑)。

次回予告

かなり調子を掴んできた長沢美樹さん。
「荒波を砕くすぅ〜ぱぁ〜スイングに惚れちゃったあ!」
後半出番が少なかったうっぷんを晴らすかのような名調子に、後半の展開で傷 ついた心が僅かでも慰められるなあ(笑)。

桂子の見通し

ところで、この時点で野球部メンバーは涼・ヒカル・ユキの3人だけだっ たのに、なぜ理事長は高校野球協会加盟を始めとする野望にあんなに自信たっ ぷりだったのだろうか?聖良をスカウトする当てはあったのかもしれないが、 その後の展開を見る限り、聖良以外に野球部の人材に心当たりがあったとは思 えない。この辺もシリーズ構成の甘さを感じる点の一つで、「桂子の自信の根 拠」をしっかり設定しておかなかったことが、 その後の展開での桂子の影の薄さにつながったのではないだろうか。


各話感想一覧へ
プリ9トップページへ
全体のトップページへ
井汲 景太 <ikumikeita@jcom.home.ne.jp.NOSPAM.>(迷惑メールお断り)
最終更新日: 2000年4月22日