椎名作品Q&A 過去ログ

No. 906 Re^2: メドーサはどうして”さすまた”を武器として使うの?

人質3邦人解放 : 04/06/10(Thu) 21:06

 アスタロト大公爵様、Iholi様、どうもです。
 凶悪な魔族・メドーサが、なぜ殺戮の為の武器ではなく、防御・捕縛のための武器である「さすまた」を使うのか?
 私はこう考えます。

 まず、メドーサがライバル視する小竜姫について考えます。
 竜神族の世界は、どうもいまだに民主化がなされておらず、日本の江戸時代のような封建的な社会のようです。
 イギリスなどでは「王族」は存在しても、「君臨すれども統治せず」であって政治的権力は何も持っていません。日本の皇族も同じです。しかし竜王家の場合には、竜神王が地上の竜族と会議のために人間界に来ていることなどから、かなりの「政治的権力」を持っているものと思われます。(小泉首相は外国でサミット等の国際会議によく出席します。しかし天皇や皇太子が外国訪問した時に、「会議」に出席したなどという話は聞きません)
 竜神王がイーム,ヤームの職務怠慢を咎めて追放したのもそうでしょう。天龍童子が、自分一人の判断で横島やイーム,ヤームを家臣にしたのもそうでしょう。竜神王から命令が出さえすれば、人事面も自由になる、ということなのですから。
 さて、そのような竜神王の世継ぎの息子である天龍童子を小竜姫は預かり、世話をし、しかも言うことを聞かなければ「過激なお仕置き」ができるというのですから、小竜姫は正式な「乳母」ではないもののそれに準ずるような立場である、と言えます。
 天龍童子の服装、それに佩いている剣は、小竜姫とそっくりです。ただし天龍童子は小竜姫を「家臣」と言っていますから、小竜姫は王族ではないでしょう。しかし王家と血縁関係にあるような、非常に格の高い名家の「お姫様」なのではないでしょうか。
「音に聞こえた神剣の使い手、小竜姫」と呼ばれていますから、おそらく王族のお傍近くに使えて身辺を警護するような役目の家柄に生まれ、幼少期から武術を教え込まれ、天才少女として誉れが高かったのではないでしょうか。「神剣」というのも、王族の関係者しか使うことが許されない、霊力の高いアイテムなのでしょう。

 メドーサもまた小竜姫クラスの霊格を持ち、本来は竜神族の一員です。
 メドーサは「やるねエリートさん!! だがそんなお上品な剣じゃ、あたしは倒せないよっ!!」と言っています。小竜姫がエリートさんなのだから、メドーサはエリートではない(あるいはなかった)ということになります。
 しかしその一方メドーサは、神剣を構えた美神を「構えも何もなっちゃいない」と評価しています。ということは、メドーサは構えがちゃんとしている ─ 自己流の喧嘩武術ではなく、正式の訓練を受けた正統派武術だということになります。
 ということはおそらくメドーサは、下級ではあるが正式の官吏、たとえば王宮の門番であるとか、あるいは捕り方であるとか、獄吏であるとか、そういう家柄に生まれ、やはり幼少期より父親から厳しく武術を仕込まれて、天才少女と呼ばれていたのではないでしょうか。小竜姫のような殿中でしか使わない「お上品」な武術ではなく、合理的ではあるが実戦的な武術をです。
 門番、捕り方や獄吏とかならば、侵入者や犯罪者,逃亡者を取り押さえるのが役目ですから、殺戮の武器ではなく捕縛の武器、「さすまた」を得意の武器として使用しても当然です。

 やがてメドーサは、霊格(霊力の強さ?)では自分は竜族の中でトップクラスであるにもかかわらず、家柄が低いというだけの理由で下級官吏にしかなれないことに、疑問を持ち始めます。酒場で火酒をあおりながら、メドーサは仲間に愚痴ります。
「フンッ、宮家のお姫様はいいわよねェ。あたしなんか、一生を暗くて臭い番小屋で終るのさッ」
 やがて、職業柄知り合った凶悪な魔族の一人と親しくなり、メドーサはしだいに魔族に取り込まれていきます。
「あなたほどの実力の竜族なら、やがては東アジアの支配者にだってなれますよ。あのお方が魔王になられたあかつきにはね。アシュ様 … いえ、これはまだ申し上げられませんが」
 刑事さんが暴力団に取り込まれるようなものですね。
 魔族の一員になってからも、やはり幼少期から厳しい訓練を受け、技を教え込まれ、得意の武器としてきた「さすまた」を、自分の得物として使い続けているのではないでしょうか。


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